スタンフォードの自分を変える教室

発刊
2012年10月20日
ページ数
344ページ
読了目安
495分
推薦ポイント 26P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

意志の力を強化する方法
行動心理学や神経科学などの知見に基づきながら、人間がなぜ誘惑に負けるのか、思ったことを続けられないのかといった仕組みを解説しています。

意志をしっかり持ち、自己コントロールするためには、どうすれば良いのか。
スタンフォード大学で、人気の授業が、その方法を教えてくれます。

2つの自己

人類の脳は、原始的な衝動と本能のシステムが存在するところへ、自己コントロールのシステムが付け加えられた。つまり、かつて役に立っていた本能は、人類が進化した今もそのまま残っている。

例えば、かつて食料が乏しく、体脂肪を蓄えることが命の保証となった時代には、甘い物に目がないおかげで生き延びるチャンスが増えた。しかし、現代では太っていることは命の保証どころか健康上のリスクとなる。なのに現代人の脳には、脂肪と糖分を求めてやまない、太古からの本能が未だに備わっている。

私たちは幸運にも後からできた自己コントロールのシステムを利用して、欲望を抑え、お菓子に手を伸ばさないようにすることができる。衝動自体はなくならないとしても、衝動を抑制する機能が備わっている。つまり、私たちの心の中には2つの自己が存在する。

意志力の問題とは、2つの自己のせめぎ合いから生じる。意志力を強化するためには、人間らしい本能を逆手にとって利用する必要がある。

「選択した瞬間」を振り返る

人間には自己認識(自分のしていることを認識すると共に、それを行う理由を理解する能力)が備わっている。自己認識なくしては、自己コントロールのシステムは使い物にならない。しかし、私たちはほとんどの選択を無意識に行っており、なぜそうするのかという理由などろくに認識していなければ、どういう結果を招くかなど考えもしない。

自己コントロールを強化するには、まず自己認識力を高める必要がある。一日の終わりに「自分がいつ目標を達成するための選択、あるいは妨げる選択をしたのか」を分析してみよう。自分の選択を振り返って意識することで、意志力は確実にアップする。

瞑想で脳の力を最大限に引き出す

脳を鍛えることで自己コントロールを強化することができる、という科学的な証拠が増えている。簡単な方法が瞑想。瞑想を行うようになると、脳が瞑想に慣れるだけでなく、注意力、集中力、ストレス管理、衝動の抑制、自己認識といったスキルが向上する。

呼吸に意識を集中することは、簡単で効果的な瞑想テクニックであり、脳を鍛え、意志力を強化するのに役立つ。動かずじっと座り、呼吸に意識を集中。呼吸している時の感覚をつかみ、気が散り始めたら意識する。自己コントロールとは、目標から離れかけている自分に気づき、再び目標へ向かって軌道修正するプロセスである。

ストレスを解消する

意志力とは進化によって得た能力であり、脳と体で起きている現象を対応させる能力である。しかし、ストレスを抱えていたり、憂鬱だったりすると、脳と体がうまく連携できない。ストレス状態になると、人は目先の短期的な結果しか目に入らなくなってしまう。

ストレス解消に効果的なのは、エクササイズ、睡眠、リラクゼーション。ストレスをうまく付き合う方法を学ぶことは、意志力を向上させるために重要である。

心を動かすものの正体を見抜く

脳の原始的なモチベーションのシステムに、現代のテクノロジーほど強烈な依存症の効果をもたらしたものはない。例えば、テレビゲームのデザイナーたちは、脳の報酬システムを意図的に利用してプレイヤーをとりこにする。

脳の報酬システムが刺激され、ドーパミンが急増すると目先の快楽がやたらと魅力的に見え、長期的にどのような影響が表れるかなど考えられなくなってしまう。私たちが買い物をする環境も、あらゆる面で、常にさらに多く欲しくなるように仕組まれている。食品メーカーは糖分と塩分と脂肪を絶妙に配合し、ドーパミン神経細胞を狂わせる。宝くじのコマーシャルを見れば、100万ドル当たったらどうしようと夢想しないでいられない。

しかし、こうしたトリックは、少し注意を払うだけで見抜けるようになる。欲望によって自分がどこへ向かおうとしているのか、見極めることが大切である。

参考文献・紹介書籍