ザ・ビジネスモデルイノベーション――成功企業にみる事業革新の流儀

発刊
2017年11月23日
ページ数
256ページ
読了目安
329分
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推薦者

新しいビジネスモデルを構築するためのヒント
異業種の成功モデルから学ぶことが、イノベーションの鍵となる。様々なビジネスモデルの事例を紹介しながら、新しい着想を得るためのヒントを与える一冊。

戦略だけでは勝てない

戦略とは「誰(市場・顧客)に」「何(製品・サービス)を」提供するかを策定することだ。「どのように」は戦略を推進するための戦術であり、従来はトップ・マネジメント(経営者)ではなく、ミドル・マネジメント(中間管理職)の仕事であった。しかし、昔のようにトップが「誰に」「何を」という戦略を策定しているだけでは、異次元競争に勝ち残ることはできない。近年は、戦略に関する知識は容易に入手可能であり、誰もが同じ答え(戦略)に行き着く。そして数少ない有望市場に、様々な地域、業界、業種からクロスボーディングしてくる。

そこで「どのように」が重要となる。戦略が同じなら、どのようにという戦術と、それを完遂する現場の戦闘力が勝敗を決める。つまり、ミドル・マネジメントが担っていた戦術まで包括し、「誰に」「何を」「どのように」提供し、「どのように儲けるのか」まで一貫した仕組みでトップが担う。これが戦略とビジネスモデルの確信的な違いである。「どのように」という部分は、製品やサービスを生み出し、提供するまでの内部プロセスであるため外部から見えない。だから簡単に模倣できず、ブラックボックス化した真の強みとして差別化が可能になる。

ビジネスモデルの構成要素

ビジネスモデルは「誰に」「何を」「どのように」提供するかという仕組みである。この3つのファクターのいずれを変えてもイノベーションにつながる。

ビジネスモデルを構築する上で大切なことは、企業理念・経営理念とのブレがなく、整合していることであり、企業がその使命を果たすためのシステムであるということだ。これを3つのファクターの前提をなす「基礎ファクター」と呼ぶ。

これらを含めたものを統合して「ビジネスモデル・コンポジション」が完成する。コンポジションとは「構成」を意味し、コンポーネント(要素)によって成立している。技術や製品、インターネットや物流、パートナー企業などのコンポーネントの組み合わせによって、ビジネスモデルというコンポジションが成り立っている。各コンポーネントの特徴や強み、それぞれの組み合わせが、ビジネスモデル構築の妙となる。

●ビジネスモデル・コンポジションの構成
基礎ファクター(使命):企業の存在価値。社会的使命と役割
ビジネスモデル    :ミッションを遂行するために構築されるモデル
②「何を」(本質的価値):そのビジネスモデルが提供する本質的価値
③「どのように」(価値創造システム)
・コアコンポーネント:本質的価値を構成する上で必要不可欠の中核要素
・キーコンポーネント:コアを強化またはサブコンポーネントと連結する要素
・サブコンポーネント:一般的に強みとして挙げられる要素
①「誰に」(価値を享受する人):提供価値を享受する組織、特定の顧客

異業種に学べ

ビジネスモデルのイノベーションは「誰に」「何を」「どのように」の1つまたは複数を、既存のビジネスモデルから変革することにある。では、その変革のアイデアはどこから生まれてくるのか。

イノベーションのアイデアは決してゼロからの創造ではない。最初のステップとして調査は欠かせない。経験や様々な資料やデータを分析し、科学的に調査する。市場予測、顧客の嗜好、製品・技術のデザイン、競合企業やベンチマーク企業の動向まで多岐にわたる。特に重要なのが異分野を調べ、そこから学ぶことである。業界動向や競合企業の戦略などは、同業他社も同じように調査しているため、競争優位のビジネスモデルは生まれにくい。

異分野では、自社とは異なる業界・業種を調査するという段階からひらめきを得て、インストールするまでのプロセスにおいて試行錯誤と創意工夫が求められるため、自社が展開する段階では他社からは模倣困難なビジネスモデルとなる。

異分野から学ぶ場合、1つの着眼点として「共通性」がある。その共通性を見る視点として、ビジネスモデル・コンポジションが有効である。