アートシンキング 未知の領域が生まれるビジネス思考術

発刊
2020年2月20日
ページ数
384ページ
読了目安
533分
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アート思考をビジネスに取り入れるための考え方
ゼロから新しいものを生み出すアート思考をビジネスに取り入れるための方法を紹介している一冊。

アート思考とデザイン思考

デザインシンキングは「モノやサービスを作る時にクリエイティブな考え方と手法で問題を解決するフレームワーク」である。アートシンキングは、デザインシンキングと共通する部分もある。特にコンセプチュアルデザインや思索的デザインが脚光を浴びる分野では、違いがわかりにくい。

しかし、デザインシンキングとアートシンキングには、根本的に異なる点がある。デザインシンキングは「外部からの依頼に対処するための問い」から始まるのに対して、アートシンキングは「個人の内部から発せられた問い」から始まるという点だ。一方は「これを実行するために最善の方法は何か?」という問いから始まり、他方は「これはそもそも可能なのか?」という問いから始まる。

デザインシンキングは、ユーザーへの共感やプロトタイプの製作を重視しながら、より良い飛行機を作るためのフレームワーク。アートシンキングは、何度失敗しても、飛行は可能だと信じるライト兄弟と共にある。

アートとは探求のプロセス

アートとは、作品そのものではなく、「探求のプロセス」のことだと言える。アートシンキングの利点は「どれほど努力しても結果はコントロールできないし、失敗するかもしれない」という考え方にある。この考え方は何かに挑戦する時の「失敗許可証」となる。この許可証があれば、本当に重要な問いに取り組む自由を得られる。

ズームアウトして全体像を見る

1つのパーツから全体に視点を移すことを、美術用語では「図と地」について考えるという。「図」とは対象物のこと。「地」とは対象物の周りにあるスペース、つまり背景のこと。全体の構図は「図と地」の両方から生み出される。人生において「図と地」を区別する利点は2つある。1つは幅広い視野から見た展望と優先順位を決めて集中すべき現実的な問題とのバランスが取りやすくなること。もう1つは、人生の構図の中に、余白を確保できることだ。

人生の中にある「余白」のスペースをつくる習慣をつけ、その時間を自分のための創造的活動に当てる。1日5分でもいいし、隔週で2時間でもいい。秘訣は「パーツは単体よりも、組み合わせた方がずっと素晴らしいものになる」と認識することである。すぐに効果が表れなくても、いずれパーツは全体に貢献するようになる。アートは、目標を達成しようという単独の努力よりも、人生のあらゆる分野の合計値から生まれるものだ。

結果ではなくプロセスに注目する

草むらの中でもがくかのような創造的活動には、常に心許なさが付きまとう。草むらの中で快適に過ごしながら、最終的に作品を完成させるためには「結果ではなく、プロセスに焦点を絞った視点」を持たなければならない。そのために有用な思考ツールは以下3つ。

①評価ではなく把握する
批評家の視点で良し悪しを「判断」するのではなく、制作者の視点で作品の状態を「把握」する。優劣を断定することを意識的に先送りにして、「どこがうまくいっていて、どうすればもっとうまくいくのか」を自問自答する。

②自分の評価の物差しを疑う
③今、この瞬間に注意を向ける

草むらでの探求が結果的に失敗に終わっても、良い気づきを得て受容することは、未来のためになる。積極的に新しいものに挑戦し、柔軟に対応する能力が備われば、やがてブレイクスルーを起こせるようになる。

前進させる問いを持つ

アートシンキングは、その本質として「問い」を起点とする。なぜならアートの核心はプロセスにあるからだ。ビジネスは最適化し、アートは問いかける。ビジネスはゴールを達成し、アートはゴールが存在する世界を生み出す。

前進するには、自分を可能性に向かって引っ張り、エネルギーを与えてくれる「問い」を見つける必要がある。