なぜアマゾンは「今日中」にモノが届くのか

発刊
2017年12月25日
ページ数
208ページ
読了目安
224分
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Amazonの物流戦略とは
Amazonの物流戦略とその仕組みを解説している一冊。注文した商品が翌日届く裏に隠された、様々な物流効率化の仕組みが紹介されています。

唯一の顧客との接点を大切にする

アマゾンの企業理念は「地球上で最も豊富な品揃え」「地球上で最もお客様を大切にできる企業であること」の2つである。この内「地球上で最もお客様を大切にできる企業であること」を追求するための手段が、物流へのこだわりである。

ネット通販事業者が、リアルの店舗における接客というサービス手段が取れない状況で、リアルの店舗に匹敵するサービスを提供するにはどうしたらいいか。アマゾンにとって、その答えは、唯一の顧客との物理的な接点である「顧客の手元へ商品を届ける」ところのサービスレベルを最大限まで上げる、ということである。これにより、顧客満足度を上げ、次の購入につなげることができる。

この商品の引き渡しというタイミングで顧客満足度に大きく影響するのは、主に「配送スピード」と「品質」。期待した時間に、注文したものが間違いなく、傷のない状態で届くことで顧客満足度が上がる。

販売と物流を一体にする

小売業では、一般的に販売は販売、物流は物流とはっきり分かれていることが多い。そして、販売と物流は別会社または、物流は社内にあるが、物流はコストセンターと捉えられている。一方、アマゾンは、販売と物流が一体となっている。そのため、情報連携がスムーズであると共に、物流の改善活動が販売も巻き込んで、一体として行われる。アマゾンにおいて、物流を改善することは、販売を改善することであり、直接、顧客満足度や将来の売上に響いてくることなのである。

具体的な仕組みとして、S&OPと呼ばれる販売側とオペレーション側の調整のプロセスがアマゾンには導入されている。販売側とオペレーション側が、販売数の予測と出荷のオペレーション人員を擦り合わせ、販売と物流を連携させている。

上流から下流までシステム連携させる

さらに、アマゾンでは社内で販売と物流が一体となっているだけでなく、上流のサプライヤーから、顧客の手元に商品を届ける下流の配送業者まで、全てシステムで連携している。EDI(電子データ交換)を導入することで、受注、発注、出荷、請求、支払といった取引データを、異なる企業間で電子的にやり取りすることで、スムーズで迅速な配送を可能にしている。

アマゾンが、上流から下流までをつなげて効率的にシステム情報連携することが可能なのは、自前でシステム開発ができるからである。

納期遵守を意識させる

アマゾンの物流において特徴的なのは「納期」の捉え方である。一般的な通販事業者は、お届け日を「目安」と考えている。しかしアマゾンでは、これを「納期」と捉えている。従って、決められた納期を守るために、あらゆる作業者が、この納期から逆算して割り出された期限内に各作業を完了するように徹底されている。

この「納期」は、システム上で下流の配送業者にまで共有される。その納期までに顧客の手元に届けるには、何日の何時までに作業を行えばいいのかが、どのレイヤーでもわかるようになっている。

アマゾンの物流戦略の特徴

①購買管理
どのような商品が、どの地域で、どれぐらい注文されそうかを過去の販売実績からシステムにより予測している。この需要予測をもとに、商品を仕入先に発注して調達する。

②注文管理
顧客から注文が入った場合、その注文を納品するために考えられ得る全ての納品経路を算出し、お届日とコストを考慮した上で、最適な納品経路を決定するシステムを実装している。

③在庫管理
日々の注文数から需要予測を行い、適切な在庫数を割り出して、不足分をサプライヤーに発注する独自のEDIシステムを構築している。

④倉庫運営
入庫→入荷検品→棚入れ→保管→出荷指示→ピッキング→出荷検品→梱包→出庫の流れを数値管理して、効率よく正確に倉庫運営を行う。