あらゆるサービスがコモディティ化している
これまでは、企業が顧客ニーズに合った商品やサービスを開発し、しっかりとリサーチして、適切な情報発信をすれば、ファンが自然に集まった。そしてファンは、そのブランドの提供する価値に一度満足すれば、その後も長い間購入を繰り返してくれた。しかし、現代はコスパやタイパなど「極度の合理性」が支配する世界になったため、あらゆる業態で、ファンだった顧客があっさりと競合他社へ流れていく現象が確認されている。
技術革新、オンライン化、サブスク化の融合によって、あらゆるサービスが急速にコモディティ化し、企業がこれまで築き上げてきた技術や品質へのこだわりが、顧客にとっては当たり前のものとなり、選択の決め手になりにくくなっているのである。この選ばれる基準のシフトによって、マーケティングでは商品やサービスにハマってくれる熱狂的な「沼るファン」獲得の必要性が高まっている。
沼るファンをつくる公式
ただの顧客がいきなり「沼るファン」にはならない。まずは好きになり、信頼するというステップがあり、最後に強い愛着を持つようになる。沼るファンの前に、まずは通常の顧客をただのファンに引き上げるには、最低限以下の3項目に取り組む必要がある。
A:商品・サービスを磨き込む
メインの価値が低ければ、どれほど接客や衛生面、居心地の良さが素晴らしくてもリピートされない。
B:接触頻度を高める
ザイオンス効果を活用する。メルマガ、SNS、DM、イベントなど多種多様な手段を用いて、顧客の目に触れる機会を増やす。
C:ストーリーの明確さ
理念、創業ストーリー、作り手の思想など、商品・サービスの背景にある物語で顧客を引きつける。
ただのファンを沼るファン層へ踏み込ませるためには、合理性を超えた感情による結びつきが必要になる。
沼化 = A ×(B+C)× (D+E)×仕組み
D:こだわり(ゲスト側の2%)
98%は気づかないレベルの「狂気を感じるこだわり(哲学)」
E:気づく力(スタッフ側の2%)
「こんなところまで見てくれているの?」という「予期せぬ承認(愛)」
D(こだわり)とE(気づく力)の積み重ねが「好感→信頼→安心→愛着→沼」というステップに誘導し、ただのファンを離れられない存在へと進化させる。そして、「仕組み」という継続的で再現性のある取り組みによって、沼るファンを生む。
徹底したこだわりが人を沼へと誘う
ウォルト・ディズニーは、サービスのレベルを「気づかれやすさ」という基準で分類した。
- 一流のサービスとは「簡単に気づかれない」サービスである
- 二流のサービスとは「簡単に気づかれる」サービスである
簡単に気づかれるサービスは当たり前で、それだけでは沼るファンは獲得できない。ウォルト・ディズニーは「簡単に気づかれない」とは98%のゲストが気づかれないぐらいのレベル、つまり2%のゲストが気づくぐらいの小さなこだわりと定義した。
98%のゲストが気づかないことと、100%のゲストが気づかないことの間には、口コミがあるかないかというビジネス上の決定的な違いがある。2%のゲストが気づき、感動して、口コミを発信してくれることで、新しいファンを連れてくる。
2%のゲストだけが気づくなどは、狙ってできるものではない。だからこそ、たくさんの沼の種を蒔く。そうすることで気づいてもらう確率してを最大化することが必要である。たくさんある沼の種のどれかに気づいてもらえればいいのである。
この沼の種は、メイン価値ではなくサブ価値に置く。メイン価値は当たり前になっているので、それだけでは勝負では勝てない。沼るファンになってもらうには、期待通りでは駄目で、期待を大きく上回ってもらう必要がある。メイン価値とサブ価値では、消費者の期待値が違う。サブ価値である人・接客・雰囲気・空気感・周辺要素などは、メイン価値ほど重要視されていないため期待値が低いのである。メイン価値が期待通りで、サブ価値が想定外に高いという期待値のギャップを利用することで、沼るファンを生み出せる。
気づきという最速の期待超えで人を熱狂させる
ホスピタリティーはサービスの上位概念である。一流のサービスで強固な土台をつくり、ホスピタリティー(気づきと行動)でさらに沼らせる。このホスピタリティーを発揮するためには、ゲストを見ただけではわからない「今日は何を楽しみに来たのか」といった人それぞれの情報を引き出す必要がある。
ゲストから情報や要望を引き出して提案するだけでは、沼るファンづくりには不十分である。沼るファンを生むためには「この人は私だけに関心がある」と勘違いさせるぐらいのレベルの2%の気づきが必要になる。2%しか違わない微差に気づくのは容易ではない。だからこそゲストは「こんなところまで見てくれているんだ」と感じ入る。