もうひとつの脳 ニューロンを支配する陰の主役「グリア細胞」

発刊
2018年4月18日
ページ数
544ページ
読了目安
795分
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これまでの常識を覆す脳の仕組み
脳細胞の8割以上を占めるグリア細胞は、これまでニューロンの隙間を埋める梱包材と見なされ軽視されてきた。しかし、近年の研究で、グリア細胞は、ニューロンの活動を感知し、その動きを制御できることがわかってきた。これまでの常識を覆す、脳の仕組みの最前線を紹介している一冊。

見過ごされていたグリア細胞

私たちの脳内には、1000億個の神経細胞(ニューロン)が存在する。これまで情報はニューロンを介して電気によって伝えられると想定されていた。実のところ、ニューロンは脳内の全細胞の15%でしかない。残りのグリアと呼ばれる脳細胞は、電気活動を行うニューロンの間を埋める梱包材に過ぎないと、これまで見過ごされてきた。しかし、このグリアが互いに交信していることが発見され、科学者たちは、今、衝撃を受けている。この細胞が、神経回路を流れる電気活動を感知できるだけでなく、その活動を制御さえできることが判明し、脳に関する科学者の理解は根底から揺らいでいる。

アインシュタインの脳にあるニューロンの数は、平均すると非凡な創造力で知られている訳ではない人たちと変わりなかった。しかし、アインシュタインの脳のサンプルには、人並み以上のグリアがあった。当時、グリアが精神機能に関与しているかもしれないという推察は、大部分の神経学者の概念的枠組みから大きく外れていた。

グリア細胞がニューロンを制御している

グリア細胞はこれまで、導線に巻かれたプラスチック被膜のように軸索を絶縁しているものの、軸索を流れるインパルス活動は感知できないと推定されてきた。しかし、グリア細胞は、神経軸索のインパルス発火を何らかの方法で感知し、それに反応して細胞体内のカルシウム濃度を上昇させた。グリアは長年、脳を取り巻く梱包材に過ぎないと見なされてきたが、ニューロン間でやり取りされる情報に関係していた。

現在のところ、神経組織にはニューロンに加えて、大きく4種類に分類されるグリアが存在することがわかっている。

①シュワン細胞
神経の中で特に傷つき安い細い軸索を保護する。

②オリゴデンドロサイト
軸索の周囲にミエリンという絶縁体を形成する。この絶縁体を持たない無脊椎動物は、漏電を起こす遅い通信回線でやっていかなくてはならない。電気的インパルスが減衰して消失する前に到達できる距離に限りがある。

③アストロサイト
ニューロンにエネルギーを供給し、その老廃物(カリウムイオン)を排出したり、脳の損傷に対して瘢痕を形成して対処する。

④ミクログリア
脳を損傷や病気から保護し、脳や脊髄が損傷から回復する上で中心的役割を担う。

あらゆる種類のグリアがニューロンの電気活動を感知して、それに応答している可能性を示す手がかりが見つかっている。脳内の電気活動は、知覚や経験、思考、そして気分を伝える。グリア細胞は神経系で多様な機能を実行しているので、もしグリアが神経インパルスの活動を感知できるなら、広範囲にわたる脳機能がグリアの影響を受けている可能性がある。感染に対する免疫系の反応から、軸索の絶縁、脳の配線の敷設・組み換え、病気や損傷からの脳の回復に至るあらゆる機能が、グリアを介して作用するインパルスの影響を受けているかもしれない。

もう1つの脳

グリア回路の情報処理は非電気的であるため、「もう1つの脳」は、電光石火の速さで反応できないという制約を受ける。グリアは緩やかに動作して、脳の広い領域に影響を与える。ゆっくりと発現する認知機能を調節しているに違いない。多分、グリアは、速さで優先されない、ニューロンとは全く別の側面で、心に関与しているだろう。

「もう1つの脳」は、ニューロンの集団を強調させ、神経ネットワークの興奮性を調節し、神経伝達物質を放出あるいは吸収してシナプス強度を増大あるいは減弱させ、細胞触手で脳組織を探り回って、シナプスを剥ぎ取ったり、新しいシナプスを形成できるスペースを空けたりしている。神経ネットワークの機能を変える上で中心的な役割を担うのは、これまでニューロンだと想定されていたが、今ではグリアが最有力だと考えられている。