日本人とインド人 世界市場「最後の成長エンジン」の真実

発刊
2020年5月12日
ページ数
194ページ
読了目安
223分
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推薦者

インド経済の入門書
P&GインディアのCEOを務めた著者が、インド経済をざっくり紹介している本。経済成長が進むインドの可能性や課題、日本はどのように関わっていけば良いのかなどが書かれています。

東南アジア全体よりも大きな市場が生まれる

現在、インドの人口は13億5000万人。中国に次いで世界第2位。2027年頃、中国を抜いてインドが世界1位になり、2050年には16億5000万人になると予想されている。労働人口は5億2000万人で中国の8億人に次いで世界2位である。人口の増大に合わせてインドの中流階級は増えていくため、これから彼らが世界の消費の主役になっていく。

2018年、インド経済は名目GDPで世界7位、約3兆ドル(約330兆円)。インドの人口の内、中間層とされる人たちの現在の年収は70〜80万円。物価は日本の1/4であるから、日本の価値に直すと年収280万円ぐらいにあたる。それ以上の収入があるインド人はアッパーミドル。一方、貧しい人たちの1日の収入は1.9ドル以下であり、少なくとも2億人はいるが、今後は中間層が育っていく。過去20年の間、年率5〜7%という持続的な経済成長があったために、中間層は10倍に増えている。今後、2020年から10年間で全国民の50%が中間層になると予測されている。7億人近い人々が中間層になるということは、東南アジア全体よりも豊穣なマーケットが生まれるということである。人口が多いだけでなく、平均年齢が28歳と若く、着実に経済成長しているのがインドである。

 

ITが拡大するインド経済

インドは1991年から大きく変わった。社会主義経済から自由主義経済に変わり、それから毎年7%程度の経済成長を遂げている。インドがこれからも大切にしなくてはならないものは質朴な「インドらしさ」であり、それを残したまま成長するには、年に数%の経済成長でいい。

産業は農業、工業、今伸びているのはITをはじめとするサービス業。米の生産量は中国に次いで世界2位で、食料の輸出国である。インドの南東部では石油が出るため、エネルギー消費の18%は国内産出の石油でまかなっている。鉄鉱石は世界4位の産出量があり、世界一の製鉄会社がある。石油の埋蔵量は世界24位、石炭の埋蔵量は世界5位、天然ガスの埋蔵量は世界23位。インドは天然資源に恵まれている。

インドにおける最も大きな資源問題は、資源を管理していたのが国営企業だったこと。企業活動は非効率であり、まだまだ改革を進めていかなくてはならない。

 

1991年の経済改革の後、特に成長したのがITサービス。アメリカの消費者に対するコールセンター業、ソフトの開発請負業である。インド人の内12%の1億数千万人は英語を不自由なく話すことができる。そのために、コールセンター業やソフト開発が立ち上がった。インドのIT産業が伸びた背景には、役人がIT産業のことがわからず、規制や賄賂の要求がなかったこともある。そして、この産業に入ってきたのが若い人と特権的なカーストに属さない人だった。

経済改革の後、IT産業を中心にニューマネーが登場下が、決め手となったのは規制緩和と2017年以降のデジタル革命だった。本人確認や税務申告では明らかに日本より進んでいる。2009年から、インドはアドハーシステムという国民識別番号制度を整備した。アドハーが導入される前、インドにとって最大の問題は本人確認だった。アドハーが導入された結果、銀行口座の開設件数は4億口座増え、インド人女性金融機関利用率は27%増加、携帯電話利用率も人口の79%に達した。

アドハーによるデジタルプラットフォームを使えば、金融サービスを社会の底辺の人たちにも届けられる。クレジットカードがなくても、アドハーとスマホで与信を提供し、決済できる。政府は、キャッシュレス社会を実現しようとしている。