After GAFA 分散化する世界の未来地図

発刊
2020年2月29日
ページ数
316ページ
読了目安
374分
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GAFAの次にくる世界とは
個人情報を集め、マネタイズの道具にしているGAFAを代表するプラットフォーマーへの反発が広がっている。ブロックチェーンの発展によって、今後はGAFAによる中央集権的なインターネットは変貌していくと説き、これからの世界を展望する一冊。

インターネットから信頼が失われている

GAFAを代表格とする、シリコンバレーのプラットフォーマーたちの企業倫理に疑念の目が向けられている。この疑念はそれらの企業が利益を独占しているということだけではない。プラットフォーマーが主導する現在のインターネットから「信頼」が失われているという危惧が、世界中に広がっている。

かつてのインターネットの理念は、誰もがフラットに情報を共有できることだった。しかし検索エンジンやSNSが普及するにつれて、これらのプラットフォームを提供する企業の意図が、情報の流れを規定するようになってきた。検索エンジンなどによる検索結果にしても、サービスを提供するプラットフォーマーのアルゴリズムやアーキテクチャによって、それは左右される。さらにフェイスブックやツイッターでは、爆発的に情報を拡散するための仕組みが実装されているが、情報の正誤が確かめられることなく、誤った情報が世界中に広がっていくなど、検証を担保する仕組みが欠けている。

分散化を実現するブロックチェーン

情報通信技術は、これまでに何度も中央集権化と分散化を繰り返してきた。現在はデバイスの分散化が進む一方で、GAFAに代表される巨大IT企業群による中央集権化が進んでいる。そして、個人情報がタダ同然で吸い上げられてマネタイズの道具にされ、巨大企業の肥やしになっている。

個人が自らの情報を自分自身で管理し、活用し、そこから利得を享受できるようになる。今求められているのは、行き過ぎた中央集権化の仕組みから、個人が自分の権利を取り戻せる分散化の仕組みだろう。これを実現するためのテクノロジーとして有望なのがブロックチェーンだ。その本質は、中央集権的な存在に頼ることなくシステムとしての「信頼」を担保できることにある。

ブロックチェーンの現在

技術的な観点で言えば、ブロックチェーンは驚くべきスピードで進化している。しかし、開発されたものが世間に認知されず、多くのユーザーに採用されていない。未だにブロックチェーンと言えば「仮想通貨」というマスイメージから脱却できないのは、その仕組みや応用について理解が容易でない点にある。

結局のところ、ブロックチェーンの最大の課題は、エンドユーザーにもわかりやすいキラーアプリ、キラーサービスが登場していないことにある。これは1990年代前半、ブラウザが登場していなかった頃のインターネットに似ている。

ブロックチェーンのこれから

ブロックチェーンの大きな問題として「標準化」がある。個々のブロックチェーンがバラバラに存在していては、結局のところブロックチェーン自体が普及しないし、発展もしない。そこで「インターオペラビリティ」、つまり相互運用性の仕組みを標準化しようという動きが出てきた。どのブロックチェーンを利用していても、価値を等価交換できるようにするのが、インターオペラビリティである。

現在のインターオペラビリティをめぐる開発の動きは、まだ混沌としているが、もし実現できれば、ブロックチェーン同士がインターネットのように相互接続され、完全なる分散化ウェブを実現するかもしれない。

こうした世界観は、GAFAが築いた中央集権的なウェブ世界とはパラダイムが異なる。これはすべてが取って代わるか否かという話ではなく、「重ねる(レイヤー)革命」の進行だ。あらゆるネットワークの島宇宙が一元的に1つのプロトコルに回収されてつながるのではなく、そこに新たなレイヤーを重ね、束ねることで、それぞれが分散しながら存在し、それぞれのコミュニティの役割を果たすようになるのかもしれない。誰かに所有されるネットワークもあれば、非所有かつ民主的なネットワークも同時に存在するという世界観である。