世界の伸びている中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?

発刊
2014年6月3日
ページ数
272ページ
読了目安
293分
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これから企業が生き残るには何が大切なのか
日本ではあまり知られていない海外の中小・ベンチャー企業に「企業が伸びるための要素」をインタビューしてまとめたもの。どのようにして、中小企業はこれから生き残ればいいのか、経営にとって大切なものは何かヒントを示唆する一冊。

狭く・高く売ることが重要

日本では企業の規模に目がいきやすく、中小・ベンチャー企業は「大」に対する「中小・ベンチャー」として、ネガティブに捉えられる事もある。しかし、特にヨーロッパにおいては中小・ベンチャー企業であっても、大企業と対等な意識を持ってビジネスをしている例が多い。この違いは、元々「お客様は神さま」という考え方をしないという理由もあるが、「狭く、高く売る」ノウハウに関して、ヨーロッパの企業は一歩先んじている事が挙げられる。中小・ベンチャー企業は大企業に連なる「下請け」ではなく、確固たる地位を築いているところが少なくない。

国際分業が進んだ今日の市場において、中小・ベンチャー企業にとっては「狭く・高く売る」ビジネスモデルがより重要になる。

 

時代を先取りする中小・ベンチャー企業から得たヒント

①人の当たり前の姿や社会的に正しい事を意識する
「公私混同」はあらゆる分野で浸透しつつある。なるべく普通の生活に近い感覚を維持できている企業が、いつのまにかビジネスの先端を走っていたという日がくる。

 

②中小・ベンチャー企業は時代の先端を感じるセンサーである
すべては小さなところからはじまる。

 

③世の中に流布している声に押しつぶされない
グレーゾーンは、その字義の通り、明示的ではなく受け手の解釈次第である。グレーはお行儀の悪い人たちの特権であるというのも先入観である。グレーゾーンにこそイノベーションのネタが眠っている。

 

④情報や記号を読み取るトレーニングをする
同じ社会に住んでいて、大企業の1人が中小・ベンチャー企業の人間と比べものにならないくらい多くの情報を持っている事はない。社会のあらゆるところにある情報に敏感になる事である。

 

⑤異なる文化と付き合う事のコスト概算をとる
異なる文化とビジネスをするにあたり、異なる文化と仕事をするとどの程度の追加コストがかかるのか概算できる事が第一歩。それは社外で生じるコストだけでなく社内で同じ感覚を共有するためのコストも含む必要がある。

 

⑥さほどお金をかけないでもビジョンは浸透できる
ビジョンをどれだけ噛み砕いて現場に浸透させるかが勝負である。

 

⑦ソーシャルメディアには早く慣れるのが良い
情報や勘所に敏感にならない事には先が見えにくい。現代の特徴は、状況が混沌として変化のスピードが早い事だ。

 

⑧聞き飽きた言葉にこそ至上のエッセンスがある
流行している言葉には限界がある。普遍性が低く長期的な視点が欠ける。「敬意」「尊厳」「正義」「真理」という言葉をもう一度、自分たちの生活に馴染みのあるところまで翻訳しなおして、実践にあたっての指標としていくとよい。

 

これからの時代を企業が生き抜くための4つのポイント

これからの時代を企業が生き抜くために鍵となるポイントは、企業のサイズを問わずほぼ共通している。「ビジョン」「人材」「コンピタンス」といったキーワードが重要であるのは説明不要だろう。注目すべきは「デザイン」「ルールメイキング」「オープン」「ローカル」の4つである。

 

①デザイン
「デザイン」は、製品の色やカタチだけではなく、組織や社会のコンセプトやその実現方法、それらをメッセージとして他者に伝えるところまで全てを含んでいる。「プロセスをデザインする」「ユーザーの経験をデザインする」「サービスをデザインする」などというように、デザインという言葉の持つ意味は「色やカタチ」から広くなりつつある。デザインは美的な観点から価値の世界に広がってきた。

こうした、社会、事業、組織のようなものの形以上のものを含むデザインをビッグデザインと呼ぶ。強いブランドにはビックデザインが必要である。なぜならブランドとは「理念を深く考えた痕跡」であるためである。
ヨーロッパのビジネスパーソンは美術館や博物館をリサーチ対象とするのは、ハイカルチャーがトレンドのコンセプト作りの一角を占めるからである。ハイカルチャーあるいは教養は日常生活の中で生きている。この教養がビッグデザインを考える際の「背骨」になり「底力」になる。

 

②ルールメイキング
ルールと市場は密接な関係にあり、ルールメイキングに参加していく事は非常に強い力を得る事につながっていく。今までにない新製品を売るためには、それを受け入れてくれるルールが必要である。中小・企業がこのルールに参加できる余地は沢山ある。その1つの方法がエコノミック・ガーデニングである。中小企業が既に持つ資産を生かしつつ、経営力を総合的に高めるために、幅広いメンバーが知恵を持ち寄り、長期的に成長する中小・ベンチャー企業が複数存在するようなエコシステムの整備を目指すのである。

 

③オープン
オープンプラットフォームやチームでの取り組みは、スピード感あるビジネスに欠かせないものとなっている。今や新しいアイデアを獲得するために、異なる文化や分野の人たちとの協業が役に立つ事は広く認められている。
共創とは、誰か突出した才能の人に頼るのではなく、多くの人が知恵を集めて1つのコンセプトやプロジェクトを創り上げていく事を指す。

 

④ローカル
国や民族あるいは性別や年齢でカテゴライズすれば、それで済むという時代ではない。市場の地図はまだら模様であり、ビジネスの仕掛けには、ローカルの文化傾向を考慮する事が欠かせない。中小・ベンチャー企業はローカルの経済活動を強みとする場合が多いので、これからの時代には活躍の場がさらに大きく広がりつつある。