High Conflict よい対立 悪い対立 世界を二極化させないために

発刊
2024年6月21日
ページ数
400ページ
読了目安
584分
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世の中の対立はどのようにして起こるのか
政治やビジネス、人間関係まで、人間はあらゆる場面で、意見や価値観の違いから対立をする。こうした対立の中には健全なものもあるが、不健全な対立あり、その問題点やどのように回避すべきなのかを解き明かしている一冊。

不健全な対立がどのようにして起こるのか、なぜ対立は加速するのか、なぜ世の中から対立はなくならないのかなど、「対立」というテーマを通じて、社会の構造の一端を理解することができます。

不健全な対立

対立には「よい(健全な)対立」と「不健全な対立」がある。よい対立は、私たちがより良い人間となれるよう背中を押してくれる。ストレスが溜まったり、激しくやり合ったりすることはあっても、私たちの人としての尊厳が損なわれることはない。社会のあり方を大幅に変えたり、地殻変動をもたらしたりする可能性がある。自らを守り、互いを理解し合い、向上していくために欠かせないもの、それが健全な対立だ。

 

対して、「善と悪」「私たちと彼ら」といった、相反する関係が明確になった時に起こるのが不健全な対立だ。そこには真っ当なルールなどない。リアルであってもなくても、両者は敵対し、どんどん感情的になっていく。自分の方が優位に立っているという思い込みが激しくなり、相手のことはますますわからなくなっていく。対立が自身の生存に対する脅威のように思えてくる。

こうした負の感情は相対する両者が同じように抱くことがよくある。それでいて、互いに話し合うことはない。それぞれが対立を終わらせようとして起こす行動は大抵裏目に出る。

 

不健全な対立は、非常に火がつきやすい。暴力に発展しやすく、反対勢力はさらなる暴力で応戦し、悪意の連鎖がエスカレートしていく。状況の改善に最も力を尽くせそうな人々は早々にその場から逃げ出し、あとは過激派が支配する。不健全な対立は、違いを受け入れない。世の中を善悪で二分する文化は、当然ながら窮屈で限定的だ。そういう文化では、困難な問題に取り組むために大勢で力を合わせることが許されない。

 

現代社会で成功するには、不健全な対立がいかにして起こるかを理解しなければならない。不健全な対立から一歩引いて、その輪郭を知り、畏れを感じなければならない。そうすれば、それがどれほど私たちの視野を歪めているかがわかる。そして、別の生き方を思い描くことができるようになる。

 

対立の罠

問題解決を前にした人間には、2つの本質的な立場がある。

  1. 敵対主義:対峙している人々が、互いに相容れない利己的な利益を追求する
  2. 本能的な連帯感:「私たち」の定義を拡大し、違いを超えて対立に対処していく

私たち人間が種として進化してこられたのは敵対主義よりも連帯感によるところが大きい。しかし、現代に生きる私たちは、政治からビジネス、法律にまで、敵対主義の側に偏りすぎている。あらゆるものを勝ち負けの争いとして見ている。

 

対立に陥ると、何がその背景になっているのかがわからなくなる。偽の旗に目がいってしまい、身動きが取れなくなる。不健全な対立は催眠状態のようなもので、目を逸らすのは難しい。だからこそ、当事者に質問をし、その話に耳を傾ける必要がある。対立を乗り越える唯一の方法は、対立としっかり向き合うことだ。

 

二項対立の力

カテゴリー分類することは、時間もエネルギーも節約させてくれる。大勢の個人にも一様に対処できるからだ。その結果、細かいところにまで目を配ったり、じっくり考えたりする必要もなくなる。そのため、誰しも日常生活において、誰かを何らかのカテゴリーに分類する。

しかし、カテゴリーは肝心な細部を曖昧にする。相対する存在が明らかになるや否や、私たちは変わる。カテゴリーの影響下にあると、自分たちと違う集団とは協力する可能性が低くなり、反感を抱きやすくなる。自分の考え方や行動を巧みに調整して、さらに自分のカテゴリーに合わせていく。この傾向は本能的なもので、無作為に分けられた時にすら見られる。

 

私たちは、自分たちの社会においてはどのカテゴリーが重要かを、ありとあらゆる、静かで陰湿なやり方で学ぶ。だからこそ、意図的に二者択一を設けるのは危険である。二元的な思考は、細部や矛盾を曖昧にするので、善と悪、正と邪の間に境界線を引いてしまう。だがそれは錯覚である。こうした二項対立の力を減らすには、人々に3つ以上の選択肢を提示することが有効である。

 

対立の火種

対立の火種となりうるものは、次の4つの要因がある。

  1. 集団としてのアイデンティティ
  2. 対立の扇動者
  3. 屈辱
  4. 不正行為

 

これらは、対立を一気に加速させる。対立にさらなる意味をもたらし、以前にもまして重要なものであるかのように思わせる。そのため、あらゆる対立がますます断ち難くなる。

 

だが対立を断つのは不可能ではない。結局のところ、ほとんどの対立は善をもたらす力だ。対立のおかげで、私たちは自分を守りつつ、率直に自分の意見が言えるようになる。そして、相手を尊重できるようになる。そのためには、意図的に対立の火種の力を失わせるか、徐々に弱めていくか、他のものと換えなければならない。それには時間を巻き戻す必要がある。どうやって暴力的な対立に巻き込まれたか「根本の原因」を理解しなければ、そこから抜け出す術を理解することはできない。