世界の賢人と語る「資本主義の先」

発刊
2024年3月21日
ページ数
208ページ
読了目安
245分
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推薦者

資本主義に関わる諸問題
格差拡大と環境破壊をもたらす資本主義に限界が来ている。これまで唯一の経済システムとして機能してきた資本主義の限界や諸問題を取り上げながら、資本主義の先にはどのようなシステムが考え得るのかを考察している一冊。

未だに解決策を見出せていない資本主義の問題に対して、様々な角度から、問題を提起し、今後の経済のあり方を考えさせます。

資本主義の限界

格差拡大と気候危機という2つの根本的な問題を突きつけられ、資本主義はかつてほど絶対的な正統性を持たなくなった。社会主義という競争相手がいなくなり、無敵状態になった資本主義は、イデオロギー上の対抗勢力からではなく、むしろそうした対抗勢力不在がもたらした過度な格差と気候危機という現実の現象から、かつてない挑戦にさらされている。

 

問題は、対案や解決策を探ろうとすると、現実からあまりにかけ離れた遠い理想の話になってしまうか、諦めてしまうか、「資本主義を超える制度は資本主義でしかあり得ない」と開き直るか、そのくらいしか選択肢がないことだ。
資本主義に対して、参照すべき対立モデルは明らかに破綻したものを除けば現実には存在しないため、人々は代替策を探し求めることに及び腰になる。下手にシステムを変えて大惨事を招くリスクを冒すくらいなら、最善ではないかもしれないが最も害が少なそうなものとして、資本主義という制度の根幹には手を付けない方が賢明ではないかと多くの人が考えている。

 

しかし、気候危機を考えると、やはりこれまでの資本主義=拡大再生産とは本質的に異なる経済モデルを構築しないと手遅れになるぎりぎりのところまで人類は来ている。「資本主義の先」とは、国内総生産(GDP)という一面的な成長の指標から卒業し、広がる経済格差と気候変動を直視した社会である。

 

何のための成長か

資本主義と経済成長は切っても切り離せない関係である。人類の歴史上、16世紀頃まではGDPの世界全体の合計はずっとゼロ成長の定常社会だったとされる。ところが、産業革命以後、20世紀に入ってからは世界経済は爆発的な成長曲線を描いていく。それをもたらしたのは資本主義の普及である。そして、経済とは成長しなければならないものだという強迫観念の下に生きるようになった。

永遠に続く資本の自己増殖、その結果としての経済成長というのが、資本主義そのものだとすれば、地球という有限な空間に暮らし、有限な資源を消費して生きる私たちの経済は、壁に突き当たることは明白だろう。

 

「脱成長」の考え方は、何も新しいものではないが、こうした考え方が主流になることはこれまで一度もなかった。経済成長を至上の目標として追わなくなってしまったら、儲ける機会が大幅に減ってしまうからである。

 

新しい豊かさの尺度探しは緒についたばかりであり、GDPが一国の経済的パフォーマンスのほぼ唯一の指標として参照され続ける状況に当面変わりはないだろう。より現実的には、GDPが何か別の指標に置き換えられるというよりは、人々が「豊かさ=GDP」という価値観を改め、政治にも優先順位の変更を求めた時初めて、GDPはだんだんと必要性を失い、別の指標がより重視されるようになっていく。

 

「第三の道」の可能性

格差を広げ、環境破壊をやめられない資本主義を修正する様々な試みは、抜本的な変化をもたらすには至っていない。全く別の経済システムなど考えること自体が非現実的だと多くの人が考える最大の理由が、資本主義に代わる経済社会システムとして考察された社会主義の失敗である。

全体主義がもたらした人権抑圧や計画経済の非効率さは、多くの人々にとって唯一の受け入れ可能な経済体制として資本主義を不動のものにした。だが、資本主義でも社会主義でもない「第三の道」はテクノロジーによって可能になるかもしれない。

 

・お金には測れないものを測る「地域通貨」

鎌倉市に本社を置くカヤックが、2019年に「まちのコイン」事業として実証実験を始めた電子マネーは、単なる地域限定の商品券ではなく、お金では測れないものを測る「別の価値の尺度」を提供することを目標に掲げる。例えば、海岸のゴミ拾いに参加するとコインがもらえ、それを使って市内で収穫された規格外の野菜を買える。目指すのは、流通量が増えるほど地域の人間関係が豊になっていくような新しい「お金」だ。

 

・AIとベーシックインカム

ChatGPTを世に出したオープンAIのCEO、サム・アルトマンは、AIの開発と並行して、すべての人に現金を給付するユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)の実験を行っている。AIは様々な職種で雇用条件の悪化や失業を生み出しており、その勢いは今後ますます加速する。その際の一種の生活保障としてUBIが構想されている。

2021年に入り、構想はさらにSF的になる。UBIで配る「お金」を、法定通貨ではなく、アルトマンらが立ち上げた暗号通貨「ワールドコイン」とする計画が発表された。

 

1つの支配的な経済システムが完全に死んで別のものに置き換わるには、人の一生よりも長い時間がかかるのかもしれない。また、資本主義の先に来るものがより良いものになるという保証はない。