文章で伝えるときいちばん大切なものは、感情である。

発刊
2024年3月28日
ページ数
352ページ
読了目安
420分
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人に読んでもらう文章を書くにはどうすればいいのか
インターネット黎明期の2000年代初頭にWebサイトを開設し、22年にわたり文章を書き続けてきた人気ライターが、「何を書くか」「どう書くか」「どう伝えるか」という3つの観点で文章の書き方を紹介しています。

誰もが文章を発信できる時代だが、ほとんどの人が誰にも読まれない文章を書いている中で、どのようにすれば人に読まれる文章を書けるのかがわかります。
様々なバズった記事を書いてきた著者ならではの視点で、どのような点に気をつけて文章を書いているのかを知ることができ、文章を書く際の参考になります。

読まれるために、何を書くか

いざ何かを書こうとした時に最初に訪れる絶望には「自分には才能がないからなあ」という考えが含まれる。しかし、誰かに何かを伝える場においては「才能」は必要ない。人は、誰かのひたむきさや誠実さ、真摯さに触れた時に心が動く。だから、文章に必要なのは才能ではなく、真摯さ、ひたむきさ、誠実さを文章で表現することである。

 

・伝えたい主張を意識する

人が読みたいと思うものは、その人の主義主張が入った文章だ。文章は事実の羅列だけでは、よほどの希少性などない限り価値はない。そこに伝えたいことを入れることで初めて価値が生じていく。文章の練習をいくらしても、伝わるようにならない。伝える練習をしなければならない。そのためには「何を伝えたいか」を強烈に意識する必要がある。

 

・内輪感が出ないように意識する

他人から見た場合、内輪感のある文章は、書いている人が想像する以上に疎外されたように感じる。身内だけで大流行した言葉を羅列されても意味がわからないし、専門用語を散りばめられたとしたら、自分に向けた文章ではないと判断される。

広く読んで欲しい文章を書く場合は、一番何も知らない立場に立って書く必要がある。それが内輪感の除去につながる。

 

・感情に向き合う

文章によって表現しなくてはならない一番大切な情報は書き手の感情だ。なぜなら、それが唯一無二と言っていいほどの独自性のある情報だからだ。私たちが誰かに伝える情報は、突き詰めていくと自分はどう感じるかに行き着く。どんな事象であっても、それを受けて自分がどう感じたか、私たちはどれしか伝えていない。注意しなくてはならないのが、自分の感情を見過ごさないことである。

 

・新しい知識を提供する

何か読む動機がない限り、人はそれを読まない。誰かの文章を読みに行く動機には次のようなものがある。

  • 書いた本人に興味がある
  • 斬新な切り口の意見がありそう
  • 世間の流行に乗っている
  • 興味がある分野のことが書かれていそう
  • 新しい知識が得られそう
  • とにかくおもしろそう
  • 評判がいい

この中で一般的な書き手が努力でどうにかなる部分は「世間の流行」「興味のある分野」「新しい知識」である。努力によっって達成可能なこれらを含んだ文章を書くべきで、その中でも特に「新しい知識」を強く意識した方がいい。

 

読まれるために、どう書くか

文章とは基本的に読んでもらえないものだ。良いものは必ず評価されるわけではないし、悪いものも評価されない、基本的にはどんなものも評価されない。それくらいの不平等な世界が存在する。書いた文章を届かせるためには、読みやすい文章を書く必要がある。

 

・「離脱」は小さなストレスの蓄積で引き起こされる

インターネットに文章を発表する場合、読み手がストレスを感じない文章を心がける必要がある。WEBの文章と本や雑誌などの紙媒体の文章は、読みに来る人の動機と意識が全く異なる。WEBの場合、読みに来る人は積極的で能動的な行動を伴っていないことがほとんどだ。そんな状況において、冒頭に読みにくい文章が続いたら、ほとんどの人が離脱するだろう。

 

・「文字の板」を出現させない

文章を扱うWEBサイトでは、そのほとんどが3行ほどをひとまとまりにした段落形式になっている。これは俄然、読みやすくなるからだ。この段落化によって、文字の板(塊)としての圧がなくなる。

 

・漢字やひらがなの連続に気をつける

文章において、ひらがなと漢字をどう扱うかは重要なことだ。日本語の文章は、ひらがなと漢字が混在する。そのため、それらの境界には薄い線が入り、そこは必ず読み方が切れる。逆を言えば、漢字が連続している場所は線が入らず、そこで切ることが瞬時にはわからない。そこで一瞬の迷いが生じ、それがストレスとなりうる。

 

・1段落の展開は1事象におさめる

段落を1つのまとまりとしてみた場合、そのまとまりの中で展開がたくさんあっても困る。1段落1意とまではいかないが、それに近い感覚で書く方がいい。1つの情報や場面を1つの段落にまとめることで、段落が変わるということは情報が変わるということだなと、読み手に理解してもらえる。

 

どう伝えるか

「届いた」と「伝わった」の明確な違いは行動や考えが変わるところにある。伝える人は「伝える」までが自分の領域だ。「伝わった」かどうかはわからない。けれども「行動が変わる」ことで、ある程度は「伝わった」と理解できる。

どうやったら伝わるかについては、本当に正解がなく、伝わらないものは何をどうしても伝わらないが、ある程度は伝わりやすくすることはできる。それは心に残るものを書くことだ。

 

基本的に当たり前のことが当たり前のように書かれたものは全く印象に残らない。すべての文章には伝えたいことが必要であり、そこに意外性までもが必要となる。意外性こそが人の心を揺さぶる。