うまい棒は、なぜうまいのか? 国民的ロングセラーの秘密

発刊
2014年9月30日
ページ数
157ページ
読了目安
151分
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うまい棒はなぜ売れ続けるのか
年間6億本売れるという駄菓子「うまい棒」が売れ続ける理由を紹介している本です。うまい棒の誕生から、現在のうまい棒まで、うまい棒に詳しくなります。

うまい棒の誕生

「うまい棒」は年間6億本も作られている。トータルで数えると100億本を超えている。うまい棒は、たくさんの種類の味があり、地域限定のパッケージなどもあって、全国に広がっている。

 

うまい棒は1979年生まれ。「ウォークマン」や「PC-8001」など、いろいろなものが世に出た年だ。うまい棒は画期的な駄菓子だった。うまい棒が生まれる前にも同じようなお菓子はあった。コーンからつくったサクサクのお菓子「パフスナック」は、1960年代の後半に日本の大手菓子メーカーからも発売されていた。また、うまい棒が誕生した前後には、他社からも棒状のパフスナックが出始めていた。でも、今はうまい棒みたいなお菓子は他になく、棒状のパフスナックの中ではパイオニア的な存在になった。

それは、これまでの駄菓子に見られなかった画期的なアイデアによって、うまい棒は唯一無二の魅力を磨き上げてきたからだ。

 

うまい棒はなぜ生まれたのか

うまい棒の出発点は「10円の駄菓子を生み出したい」「親から渡されたものではなく、自分で選んで自分で買えるものを」と考えた事だ。うまい棒が誕生した1979年は、第2次オイルショックの年。その影響で物価が高騰していて、10円の駄菓子が次々に姿を消していた。そんな状況を見て「何か10円のお菓子を作って、子供達を喜ばせたい」と思っていた。そんな時に出会ったのが「エクストリューダー」という機械。これを使えば、棒状のパフスナックを低コストで大量に生産できる。工夫すれば10円の商品を作れると考えた。

 

うまい棒が売れ続ける理由

うまい棒の大きな魅力の1つは「いろんな種類がある」ということ。現在は18種類あり、毎年1〜2種類の新商品がコンスタントに発売されている。当時も、こんなに多くの種類がある駄菓子はなかった。この「選べる」インパクトは強く、これで火がついた。

 

うまい棒の売れ続ける理由の1つは、とことん味にこだわること。「たこ焼味」は一度タレをつけて焼いた後、粉をかけて、もう一度焼いている。普通は、コストがかけられない10円の駄菓子なんだから「一度仕上げ」でいいと考えても不思議ではない。しかし、あえて「二度仕上げ」をする。駄菓子だからといって、手を抜いたら選んでもらえなくなる。その前提には「子供は大人が思うより、はるかに味がわかっている」という考え方がある。だから、1つ1つの味はいい加減に作れないし、細かいところにもこだわっている。

 

「1本10円」という安さも、うまい棒が子供に支持された大きな理由だ。そもそも、うまい棒が生まれた背景には、原材料の高騰などで減る一方だった10円の駄菓子を新たに生み出そうという思いがあった。とはいえ、30年もあれば状況が大きく変わっている。10円を守り続けている裏側では、工場のオートメーション化などのコスト削減といった人知れない地道なコストダウンがある。

 

うまい棒の魅力は「他で味わえない斬新な味が楽しめる」事にもある。今でこそ定番になっている「めんたい味」や「サラミ味」も当時としては画期的だった。最近では「シュガーラスク味」や「牛タン塩味」「エビマヨネーズ味」と他では食べられない味がたくさん出ている。大手のスナック菓子と真正面から勝負するのではなく、ニッチな風味を開拓したからこそ、うまい棒は生き残れた。

 

大切なのは1本だけ食べてもらうのではなく、1本食べ終わった後に理屈抜きにもう1本食べたいと感じてもらえる味かどうか。しかし、売れる味を見極めるのは難しい。そこで行き着いたのが、1年に1〜2種類の新商品を出して、売れないものは躊躇しないでやめる事だ。うまい棒の新商品が1年以内に製造終了になる事があるが、それは見切りを早くしているから。こうする事で、リスクを最小限に抑えながら、斬新な味を送り出してきた。

 

うまい棒が人気を呼んだ要因は「個包装」にもある。当時は10円のお菓子を包装して売るという発送はなかった。湿気ないために、コストが高くなって利益が減るのを覚悟して袋に包んだ。これで買いやすくなり、支持を得た。