「働き手不足1100万人」の衝撃

発刊
2024年1月30日
ページ数
272ページ
読了目安
349分
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2040年に人手不足はどのような影響を及ぼすのか
リクルートワークス研究所が2023年に発表した未来の労働需給シュミレーションの結果がまとめられた一冊。
今後、高齢化が進むとともに、労働力不足がますます進み、生活インフラを支えるサービスの縮小や消滅が起こると警鐘を鳴らしています。

2040年という近い将来に起きる予測を人口動態という確率が高い統計から予測し、今後の労働力不足に対し、どのように課題解決していくべきかが考察されています。

2040年に日本では、1100万人の働き手が足りなくなる

これまでの人手不足問題は、後継者不足や技能承継難、デジタル人材の不足といった産業・企業視点から語られてきたが、これから訪れる人手不足は「生活を維持するために必要な労働力を日本社会は供給できなくなるのではないか」という、生活者の問題として我々の前に現れる。

 

「労働供給制約」というのは、社会を維持するために必要な働き手の数を供給できなくなる、構造的な人手不足のことだ。日本社会の高齢化は著しい労働の需給ギャップ、需要過剰をもたらし、慢性的な労働供給不足に直面する。これを「労働供給制約社会」と呼ぶ。

 

2040年には2020年と比べて、総人口が1523万人減る中で、生産年齢人口は1428万人減る。これから日本社会が直面する人口減は即ち、現役世代人口の減少によるものである。結果として、日本社会の年齢構成は大きく変わる。生産年齢人口比率は、2020年58.7%から2040年には53.9%まで低下。65歳以上人口比率は、2020年28.7%から2040年には35.3%となる。

そして、2040年までの労働需要はほぼ横ばい、微増の状況に対し、労働供給は大きく減少する。労働供給は、今後数年は踊り場状態にあり、2027年頃から急激に減少する局面に入る。その結果、労働供給の不足は2030年に341万人余、2040年に1100万人余となっていく。

 

生活維持サービスの縮小と消滅

労働供給制約社会においては全業種が平均的に人手不足になるのではなく、人手不足感が特に高い業種が現れてくると考えられる。この際に最も懸念されるのは「生活維持サービス」の低下、消滅である。物流や建設・土木、介護・福祉、接客などの職種は既に需給ギャップが顕在化しており、著しい人手不足に陥っている。こうした職種の供給不足を放置しておくと、私たちの生活に深刻な影響を与える。

 

2040年の職種別の労働供給不足率とその影響は以下の通りである。

・輸送・機械運転・運搬:24.1%

ドライバーがいないために、荷物が届けられない地域が発生。日本の1/4の地域は事実上、荷物の発送も受け取りもできず、居住不可能になる。

 

・介護:25.2%

介護現場で介護スタッフ不足が深刻化し、欠員が常態化。週5日訪問介護を受けていたが、毎週のように週1〜2日は急な連絡で介護スタッフが来られない。高齢者自身や家族だけで対応せざるを得ず、家族全員の生活を圧迫。

 

・建設:22.0%

建設作業に従事する施工管理者・オペレーターが慢性的に不足。メンテナンスが必要な道路の内78%しか修繕できず、地方部の生活道路は穴だらけに。橋梁の崩壊など事故も相次ぐ。結果、渋滞が増えるなど移動にかかる時間が増加。

 

・保険医療:17.5%

医療スタッフが必要数に対して不足。病院設備はあるが医師・看護師をはじめとする医療スタッフがいない状態に。開いている病院も診察まで長蛇の列となり、診療を受けることが1日がかりのタスクとなる。緊急搬送先も確保できず、救急車の立ち往生が常態化。

 

既存の人手不足対策の限界

日本の人手不足の議論においては、次の3つの解決策が必ず出てくる。

 

①女性

日本の15〜64歳の生産年齢人口における女性の就業率は70.6%。これはOECD加盟諸国38カ国中13番目の高さであり、既に国際的水準に迫っている。

 

②シニア

シニア就業率は、60〜64歳で男女合計71.5%、65〜69歳では男女合計50.3%となっている。国際比較すれば、65歳以上の就業率は25.1%であり、日本は主要国中で断トツに高い。

 

③外国人労働者

世界全体の高齢化率の上昇、また日本の経済的地位の相対的低下を考えれば、廉価な労働力としての外国人受け入れを中長期的に有効な施策として軽々に組み入れることは難しい。海外との外国人労働者獲得競争に日本は容易に勝てない。

 

働き手不足を解消する4つの打ち手

労働供給制約の課題解決へ向けたアプローチは「需要を減らす」か「供給を増やす」かのどちらかだ。打開策は次の4つ。

 

①機械化・自動化

AIやロボットが働きやすい仕組みをつくり、その上で人間が人間にしかできない仕事をする発想が重要になる。

 

②ワーキッシュアクト

ワーキッシュアクトとは、コミュニティ活動や趣味、娯楽といった本業の仕事以外の活動の内「誰かの何かを助けているかもしれない活動」を指す。労働供給制約社会においては、こうした活動の価値を前向きに受け止め、社会全体でインセンティブを提供すべきかもしれない。

 

③シニアの小さな活動

現役時代のような給与を稼げるが負荷の高い仕事というよりも、収入水準はそこまで高くなくても負荷の低い「小さな仕事」の観点がより大事になっている。

 

④仕事におけるムダ改革

企業内のムダな業務に費やしている時間を個人が取り戻せば、ワーキッシュアクトに参加できる人も増える。

 

参考文献・紹介書籍