THE POWER OF REGRET 振り返るからこそ、前に進める

発刊
2023年12月6日
ページ数
336ページ
読了目安
411分
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後悔しないことが正しい生き方ではない
人間が持つネガティブな感情「後悔」は、将来の意思決定の質やパフォーマンスを改善させるために有効な、人間の認知上の仕組みである。
一見、ネガティブに捉えられる「後悔」というものを肯定的に捉え、その有効性を説いている一冊。多くの場面で「後悔しない人生」というメッセージが唱えられているが、後悔は人間にとって必要不可欠のものであると説いています。
落ち込んだ時に、物事を俯瞰して、前向きな思考に転換するのに役立ちます。

後悔は人間に不可欠である

「物事を後悔することは愚かである」という考え方は、世界のあらゆる文化圏で声高に唱えられている。この考え方は、無批判に信奉されている場合が多い。しかし、この考え方は決定的に間違っている。アンチ後悔主義者が勧める行動を実践しても、よい人生を生きることはできない。

 

後悔することは、幸福への道からはずれるわけではない。それは極めて健全で、誰もが経験し、人間にとって欠かせない感情だ。それに、この感情は有益でもある。物事が明確になるし、今後に役立つ教訓も引き出せる。

 

後悔は人間を人間たらしめる

人が後悔を感じるプロセスは、次の2種類の能力が絡み合うことで生まれる。

  1. 脳内で過去と未来を訪ねる能力
  2. 実際に起きていないことをストーリーとして語る能力

 

人間は、この2つの能力があることで「反実仮想」を実践できる。事実に反することを想像できるのだ。反実仮想には、2つのパターンがある。

  1. 下方の反実仮想(せめてもの幸いは〜):実際よりもっと酷い結果になっていた可能性を思い描く。
  2. 上方の反実仮想(もし〜していれば):実際よりもっと良い結果になっていた可能性を思い描く。

 

人々が抱く反実仮想の80%は「もし〜していれば」というタイプのものだ。多くの人がこのような傾向を示すのは、人間には生き延びるために行動する性質が備わっているからだ。

「せめてもの幸いは〜」思考を実践すると、その時点で気分が沈むことは避けられるが、将来の意思決定や行動の質が改善されることは考えづらい。逆に「もし〜していれば」思考を実践すると、その時の気分は沈むが、後の人生をよりよいものにできる可能性がある。

 

後悔は人間をよりよい人間にする

後悔の感情に適切に対処すれば、3つの大きな恩恵が得られる。

 

①意思決定の質が改善する

後悔の感情を深く抱くと、意思決定のプロセスが改善される。マイナスの感情がもたらす痛みにより、意思決定のペースが減速するからだ。それまでよりたくさんの情報を集めたり、幅広い選択肢を検討したりするようになり、結論を導き出すまでにじっくり時間をかけるようになる。その結果、確証バイアスなどの認知上の落とし穴にはまりにくくなる。

 

②課題に対するパフォーマンスが向上する

後悔の感情は粘り強さを引き出す場合があり、パフォーマンスが向上する。後悔が常にパフォーマンスを向上させるわけではないが、ほとんどの場合「もし〜していれば」と少し考えるだけでも、その後のパフォーマンスが改善する。

 

③人生の充実感が高まる

反実仮想を行うと、人生における大きな経験とこれまでの人間関係がより大きな意味を持つように思えてくる。後悔はとりわけ、人生の充実感を高め、充実した人生に向けて生きるよう人々を後押しする効果が大きい。例えば、過去の行動を後悔することを軸に「人生の振り返り」を実践すると、人生の目標を修正し、新鮮な気持ちで生きられるようになる場合がある。

 

後悔とどのように向き合うか

私たちはどのように後悔を生かして、よりよい人間になり、より満足した人生を送ればいいのか。出発点は、行動したことへの後悔と行動しなかったことへの後悔の違いを認識することだ。行動したことへの後悔に関してまず目指すべきなのは、目の前の状況を改善することだ。それが可能なケースばかりではないが、そのための方法は2つある。

 

①過去の行動を取り消す

行動したことへの後悔は、現在の状況を修正できる余地がまだある。取り消しの1つの方法は謝罪することだ。

 

②「せめてもの幸い」思考を実践する

過去の行動を修正するのではなく、過去の行動に対する見方を変える。「もし〜していれば」という発想を「せめてもの幸いは」という発想に転換すれば、痛みが和らぐ。

 

行動したことへの後悔にせよ、行動しなかったことへの後悔にせよ、後悔した後に取れる最善の行動は、未来の行動を改善することだ。前に進みたいという明確な意図をもって過去を振り返れば、後悔を前進の推進力に転換できる。

具体的には、次の3段階のプロセスを通じて、まず自分が後悔を抱いているという事実を認め、続いてその経験に対する見方と自分に対する見方を改め、最後にそこから教訓を引き出して、将来の意思決定を改善することを目指せばいい。

 

①セルフ・ディスクロージャー

自分の思考や感情、行動を他の人に話したり、文章に書くなどして開示する。後悔を開示することにより、心の重荷が軽くなり、自分の後悔について理解を深めることが可能になる。

 

②セルフ・コンパッション

厳しい批判の代わりに、基本的にはやさしい態度で自分に接する。「人は誰でも完璧ではなく、人生で失敗し、困難にぶつかるものだ」と考える。ネガティブな経験を当たり前のことと位置づけることにより、その影響を無力化する。

 

③セルフ・ディスタンシング

感情と距離を置き、第三者の視点で自分の状況を見る。恥や恨みの感情抜きに、状況を冷静に検討し、将来の行動の指針となるような教訓を引き出す。