成功の要諦

発刊
2014年11月25日
ページ数
264ページ
読了目安
222分
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人生の目的とは何か
稲盛和夫氏が、55歳から81歳までに行った6回の講演内容が書かれた本です。経営者に向けて、哲学の必要性を説き、仏教の教えから、人格を高める方法を説いています。

人生の意味

人生とは何だろう、人間とは何だろうという事を絶えず考えてきた。安岡正篤先生の本には、その答えが簡潔明瞭に書かれている。人生は運命として決まっている。しかしそれは天命であり、宿命ではない。その人の思いと行いによって運命は変えられるという事を、先生は明確に仰っている。そして、運命とはその人の行いによって変わるものであり、同時に禍福とは自分が思い、求める事によって得られるものであると、仰っている。

 

仏教には「思念は業をつくる」という言葉があるが、それも同じこと。業はカルマとも言うが、物事を思ったり念じたりすると、仏教でいう因果応報の「因」(原因)をつくる。業は原因ができると、必ず現象として現れる。これが因果応報である。

私達一人ひとりが生まれてきた人生の目的は、世のため人のために尽くす事である。仏教では一燈照隅と言うが、どんな人でも何がしかの素晴らしい役割を持って生まれてきた。その役割を通じて、世のため人のために尽くす事が大事である。そうして自分の運命を変える事ができる。

 

人生の目的

我々はこの世に生をうけ、運命と因果応報の2つの法則によって波瀾万丈の人生を生きている。人生の目的とは「心を高める」事である。「心を純化する」「心を浄化する」「人間性を高める」「人格を高める」。これらが人生の目的である。

 

これをもっと具体的に言い換えると、世のため人のために尽くすという事になる。人間ができていなければ、心が高まっていなければ、世のため人のために尽くす事などできるものではない。

 

六波羅蜜

いかに「善きこと」に努めるかという事が大切である。お釈迦様が説かれた「六波羅蜜」が、そのための方法を示している。お釈迦様が、魂を磨き、心を高め、悟りの境地に到達するための修行として説いておられる事が、善き事に努める事と同じである。

 

①布施
自分が今ある事に感謝し、他に善かれかしと願い、他人様に何かしてあげること。思いやりの心、優しい心をもって、世のため人のために尽くすこと。

②持戒
人間としてしてはならない事を定めた戒めをひたすら守っていくこと。人間として何が正しいのかと問い、その正しい事を貫き、してはならない事はしないということ。

③精進
ただ一所懸命に、誰にも負けない努力で働くこと。

④忍辱
苦しいこと、辛いことを耐え忍ぶこと。

⑤禅定
心を静かにすること。

⑥智慧
上記5つの事に、日々懸命に努めていく事で、悟りの境地、つまり偉大な仏の智慧に至る事ができる。

 

因果応報の法則

人生にはもって生まれた運命がある。まずこの事を納得しなければならない。近代的教育の場では、運命というものを一笑に付し、まともに取り扱ってこなかった。確かに、近代科学では運命の存在は証明されていないが、運命があるという事は理性で肯定すべきである。運命を肯定する事によってはるかに人生を理解しやすくなるし、人生を間違いなく生きる術を会得する事ができる。

 

人生を構築する要素としてまず運命がある。これが人生を貫く縦軸として存在し、人生は運命という縦軸に沿って流れている。同時に、人生には「因果応報の法則」という横軸の要素がある。因果応報の法則とは、善い事をすれば良い結果が生じ、悪い事をすれば悪い結果が生まれる。善因は善果を生み、悪因は悪果を生む法則のこと。善因悪因の「因」とは、自分が生きている間に思った事、行った事である。自分自身が思い、考え、実行すること、それらが原因となる。そして、原因は必ず「結果」を生む。原因が原因のままで残り続ける事はない。思いと行い、つまり思念、行為は業(カルマ)をつくる。これが因果応報の法則である。

 

ところが、因果応報の法則は、必ずしもその通りの結果が出ているようには見えない。いい事をしてきた人が病気で苦しんでいる、悪い事をしている人が幸せそうに暮らしている例はいくらでもある。因果応報の法則は、結果が出るまでには時間がかかる事がある。原因に対して、多くの場合は結果がすぐに出てこないが、20、30年の長いスパンで見ると、必ず因果応報の法則通りの結果になっている。

運命と因果応報の法則という2つの要素の内、因果応報の法則の方が、少し力が強いので、元々定まっていた運命が変わる事がある。そのため、人生は必ずしも運命の通りにはならない。

 

感謝を理性にインプットせよ

我々一人ひとりにとって、運命と因果応報の法則によって現れる現象に、日々どのように対処していくかを考える事は生きていく上で大事な事である。この答えは、善い事に遭おうと、悪い事に遭おうと、どんな現象に遭っても、その現象に感謝する事、これに尽きる。何事に対しても感謝するというのは、至難の業である。だからこそ、理性にインプットしておかなければならない。

 

災難や苦難に遭ったら、嘆かず、腐らず、恨まず、愚痴をこぼさず、ひたすら前向きに明るく努力を続けていく。これから将来、良い事が起きるためにこの苦難があるのだと耐え、与えられた苦難に感謝する。良い事が起きれば、驕らず、偉ぶらず、謙虚さを失わず、自分がこんな良い機会に恵まれていいのだろうか、自分にはもったいない事だと感謝する。これが素晴らしい人生を生きるための絶対条件である。

参考文献・紹介書籍