ザ・ファーストマイル イノベーションの不確実性をコントロールする

発刊
2014年12月2日
ページ数
280ページ
読了目安
453分
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イノベーションの不確実性をコントロールする手法
アイデアを計画から市場に投入する実行フェーズにおいて、その不確実性をコントロールするための手法が書かれた指南書。

ファーストマイルに潜む問題

イノベーションを起こす時に大切なのは、アイデアそのものではなく、アイデアをビジネスに結び付けるために試行錯誤を繰り返す事だ。優れたアイデアに対して文句をつける人間はいない。問題は、そのアイデアを市場で花咲かせるまでの過程のはじめの一歩「ファーストマイル」で致命的な失敗を犯す事にある。ファーストマイルは、真っ先に問題を解決しなければならない場所あるいは時期を指している。収益ゼロの状態から最初の1ドルを稼ぎ出すのは容易ではない。起業家はファーストマイルでつまづく事が多い。ビジネスモデルに欠陥があるにもかかわらず、ただひたすら突き進んだり、一度に多くの目標を達成しようとして、大切な事を見失ったりするからだ。

 

ファーストマイルでつまづかないためには、戦略上の主要仮説を科学的手法でコントロールする事が必要である。戦略上の主要仮説をコントロールする目的として、ファーストマイルでは次の4つのツールキットを使う。

①アイデアを書き下ろして、気付いていなかった前提を表面化させる
②アイデアをいろいろな角度から評価する
③戦略に影響を与える不確実性に焦点を当てる
④テストを繰り返し、速やかに軌道修正をする

 

アイデアを書き下ろす

イノベーターは十分な調査を行い、できる限り現実を反映した仮説を立てなければならない。そのような仮説によってのみ、意味のある実証実験が可能となる。成功するイノベーションには3つの共通する要件がある。

 

①市場・顧客が求めているものがはっきりと見えている
②その需要に応える方法が明確になっている
③その方法は、価値を創り出すものである

 

つまり、イノベーションによって解決しようとしている問題点と、問題を解決する事によって達成されるべき目標が明確になっていなければならない。アイデアについて書き下ろす時には、次の4つの間違いに注意する。

間違い①:アイデアとビジネスを区別できていない
間違い②:初めか終わりの一方だけに注力する
間違い③:一部の関係者の視点だけで物事を見る
間違い④:理解は得たが、共感を得ていない

 

アイデアをいろいろな角度から評価する

評価の目的は、アイデアを前に進めるか否かの決断を下す事ではなく、アイデアに潜んでいる仮説を明らかにする事である。アイデアを評価する事により、アイデアを実現させる時のリスクを低減させる事ができる。評価のためには3つの作業に取り組む。

 

①パターンに基づく分析
過去に成功したイノベーションのパターンと比較しながら、不確実性を含むイノベーションの戦略を考える。

②財務分析
財務モデルを作る事により、結果的に自分の置かれている状況を確認する。その過程でビジネスモデルを補強する。

③ロールプレイ
アイデアに関わっている関係者のリストを作り、関係者が実際にアイデアとどう関わるのかロールプレイを行う。

 

戦略に影響を与える不確実性に焦点を当てる

ファーストマイルの時期を素早く通り過ぎるために大切な事は、戦略上の主要仮説を明らかにする事だ。主要仮説に含まれる不確実性を重要度に応じて分類し、把握する。このプロセスで最大の成果を得るためには、次の3つの成功への鍵が重要となる。

 

①少数の仮説にフォーカスする
リストに残っている仮説が6個以上残っていてはならない。仮説が数多くあり、状況変化を監視できないと、仮説の複雑さのために全体を見失う。

②できることをやっておく
人間は不確実性が高い場所に置かれると、自分を過信しがちになる傾向がある事を肝に銘じておく。

③部外者の協力を得る
部外者は客観的な見解をチームにもたらしてくれる。

 

テストを繰り返し、速やかに軌道修正をする

テストの計画と実行を成功裏に終わらせるには、次の6つの項目が重要である。

①少人数のチームにする
②テストを慎重に計画する
③市場から学ぶ姿勢を持つ
④高い柔軟性を確保する
⑤予期せぬ結果を生かす
⑥学んだ結果に基づいて行動する