買いたがる脳 なぜ、「それ」を選んでしまうのか?

発刊
2014年9月26日
ページ数
313ページ
読了目安
363分
推薦ポイント 8P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

ショッピングする脳と体のしくみ
脳と消費行動の関係を研究している著者が、様々な事例を紹介しながら、神経科学を利用したマーケティングの手法を解説している一冊。

ウォンツニーズを作り出す

買い物に「行く」のは大いに楽しいにもかかわらず、買い物を「する」のは面倒という人が多い。特に男性の場合、できるだけ手短に片づけてしまいたい。

買い物を「する」のは必要性を満たすため、買い物に「行く」のは要望をかなえるためである。2つのモチベーションは別物に思えるが、実際はそうではない。

 

現代のショッピングシーンにおいて「欲しい」という思いが脳から離れなくなると、他の事に集中できなくなり、「欲しいし必要」という思いに変容する。「ウォンツニーズ」は、強烈な欲望になり、どれだけ費用がかかっても満たされなければ気がすまなくなる。

理解しておかなければならないのは「ウォンツニーズは作られるもの」という事実である。その役割は、広告やマーケティングだけでなく、テレビ、ブログ、ソーシャルメディアも果たしている。そして、無意識の反応を分析すれば、ウォンツニーズが最高レベルになる商品を特定できる。

 

ウォンツやニーズが低くても、マーケティングや広告戦略によってウォンツニーズへの移行は可能である。

①買い物客に「作業」を与える
②希少性を作り出す
③「それだけではありません」によって買う気にさせる
④楽しさを演出する
⑤気分転換に「必要なもの」にする
⑥「問題がある」と感じさせる

 

脳と体は連動している

消費者の考えや感情は、程度の違いはあっても、周囲のあらゆるものに左右される。そうなるとわずかな環境変化によって、消費者の考え方や感じ方がいかようにも変化し、意識的あるいは無意識にブランドイメージや購買意欲に影響を与える可能性がある。

 

私達の脳は1つではなく2つある。第一の脳が頭の中にあるのに対して、第二の脳は消化管にあり、いずれも考え方や感じ方を大きく左右する。消化管の腸管神経系は、猫の脳とほぼ同数の約1億のニューロンで構成されている。大脳皮質に比べれば数千分の1に過ぎないが、第二の脳と呼ばれる理由がある。

 

人間の2つの脳は、広範に連動して消化をコントロールし、必要なエネルギーを作り出しているので、「消化管」の脳に影響するものは「頭」の脳にも影響があり、逆に頭への影響は消化管にも及ぶ。従って商品やサービスの販売では、消費者の2つの脳への働きかけが有効だと考えられる。

脳と体は分離できず一体化している現実は、ひどく歯が痛むのに集中しなければならない時や、頭が割れそうに痛いにもかかわらず判断しなければならない時、痛感する。

 

肉体的動きが無意識に影響する

私達の2つの脳、体は、立ち方、座り方、動き方、行動の仕方に影響しているため、わずかな肉体的な動きによって考え方や感じ方が大きく変わる可能性がある。しかも「身体化された脳」に配慮したセールス戦略によって、巧妙かつ無意識に影響を受ける数々の手法も存在する。

・うなずくだけで商品への好感度は上がる
・腕を曲げる行為で購入意欲が高まる
・無意識に利き手側にプラスイメージを持ち、逆側にマイナスイメージを持つ

 

脳の思考プロセス

脳は常にエネルギーを最大限効率的に利用しようとする。当然ながら、必要な時間や労力や思考が少ない活動の方がエネルギー投入量は少なく、簡単に取り組める。効率的に処理を行う人間の脳では、思考プロセスが主に3種類に自動化されており、それらは買い物の仕方にもあてはまる。

 

①無意識の購入判断
理性的な買い物の判断は主に「大脳皮質」で行われている。一方、衝動買いの判断は大脳皮質と脳幹の間にある「大脳辺縁系」という脳の深部で行われる。瞬時の無意識の思考「自動処理」は、迅速でエネルギー効率がよく、常に起動しているが、単純で間違いやすいという特性もある。

 

②カテゴリー化
私達の脳は、パターン認識能力が極めて高い。物、言葉、出来事、画像パターン、多彩なアイデアそれぞれを結び付けられる強みがある。その結果、新たな経験や人物、商品の位置づけができ、全体像を理解しやすくなるが、外部からの影響にさらされる危険も生じる。脳がパターンを求め、パターンの整合性を探ろうとする特性が、出来事と出来事の間の存在しない因果関係を見つけようとする傾向につながってしまう。

 

③経験則に基づく判断
脳はエネルギーを消費しないために、無意識に経験則も活用する。経験則は広く行き渡り、常識のようになっているが、間違いにつながる危険もある。経験則を頼りにしがちなのは、検討すべき情報が多く、不確実性が高く、時間が限られている場合である。そのため現在のように変化の激しい社会では、経験則が消費者の選択を大きく左右する。

・暖かければ安全:寒い部屋より暖かい部屋の方が好感を持ちやすい
・習慣による買い物:ディスプレイの変更や売り場の移動を好まない
・猿まね:他人から受け入れられ、標準的だと評価されたい行動で不安を軽減する
・アンカリング:提示された特定の数値や情報が基準点となり、判断に影響する
・利用可能性:購入判断は、消費者が商品やその情報を入手しやすいかで決まる
・費やした努力:臨時収入は自由に日常のショッピングで使おうとする