組織開発とは
個人のスキルを向上させる「人材開発」とは別に、組織そのものに着目して「良い組織」を目指して実施するのが組織開発である。言語化できない、複雑なチーム・組織の悩みに向き合い、解決に近づけることが、組織開発の得意分野である。組織開発では、「目に見えにくいこと」をテーブルの上に載せ、みんなで話し合って問題解決を図る。
組織開発とは、現場にいる人たちが自ら、人と人との関係性を通して組織内の違和感のあるプロセスを見直し、より良い組織をつくる活動と言える。自分たちが感じるモヤモヤを、自分たちのために修正する。そんな良い組織をつくる行動を通して関係性も豊かになり、組織の健全性も高まると言われている。
「良い組織」という状態には、次の3つの観点がある。
①効果性:目標達成ができる
②健全性:明るくイキイキ元気がある
③継続性:良い状態を自分達で継続できる
この3つの条件を満たし、「良い組織」であり続けるために、組織開発は効果を発揮する。
組織開発の考えでは、まずメンバー間の「関係の質」を高めることが有効である。「関係の質」が高くなると、自然と考え方も前向きになり、目的意識が高まって「思考の質」が上がる。それがメンバーの積極性や主体性といった「行動の質」を高め、その結果として成果が生まれて「結果の質」につながる。すると、ますます関係の質が高くなる。
つまり、組織開発の出発点は、関係の質を高めることである。何より必要なのは、話し合いの機会を意識的に設けること。それによって、お互いが「どういう人であるのか」をわかり合うことである。それが、信頼関係を築く第一歩となる。
話し合いによってモヤモヤの本質を明らかにする。さらに、みんなで意見を出し合って解決法を考える。これが、組織開発の基本である。モヤモヤを明らかにするための話し合いは、そのまま関係の質を高めるプロセスでもある。メンバーそれぞれの仕事に対する思い、価値観、話し合いによってパーソナルな部分を知ることが、そのまま解決の糸口になることもある。
組織開発のはじめ方
組織に起こっている事象は、氷山のごく一部で、その大部分は海中に隠れて見えない。組織開発では、水面上に現れている事象をコンテント、隠れて見えない事象をプロセスと呼ぶ。プロセスには以下の2つがある。
・タスク・プロセス:業務に直結あるいは比較的近いもの
- 意思決定のされ方
- 目標の共有
- 役割分担
- 手順や仕事の段取り
・メンテナンス・プロセス:さらに深く見えないもの
- 職場の雰囲気や組織風土
- メンバーのモチベーション
- メンバー同士の関係性
組織開発は、このタスク・プロセスとメンテナンス・プロセスの両方に目を向けて見直していく。表に出てこない水面下にあるものをテーブルの上に載せる。そして、それをめぐってみんなで話し合って問題解決を図り、良い組織にする。
組織開発の始まりの多くは、「対話」による関係づくりからスタートする。タスク・プロセスとメンテナンス・プロセスに目を向けて対話を行うことで、メンバーは自分たちのどのようなプロセスからモヤモヤが起こっているのかに気づくことができる。自分達でモヤモヤの要因に気づくという体験は、自ら現状を変える意志を生み、どのように関係を変えていけば良いかを話し合う一歩にもなる。
組織開発は、始まりからゴールまで、すべての過程が「対話」によって進められる。そこでまずは、安心安全に対話ができる環境を整える必要がある。環境づくりのポイントは次の2点。
- 場所に関する配慮:リラックスして話せる環境が大事である
- 原則となるルールづくり:「人の発言を否定しない」など、心理的安全性を確保するグランドルールを決める
次に、対話には必ずテーマを設定する。例えば、モヤモヤをそのままテーマにする場合は「良いチームって何だろう?」という問いかけが効果的かもしれない。組織開発は、チームや組織の状態が「なんだかおかしい」と誰かが感じたところから始まるので、簡単に結論を出せるほどテーマが単純ではないのが特徴である。
テーマに関する事実や考え方・アイデア、それぞれに対する1人1人の気持ちなどにも注目して、丁寧に時間をかけて掘り下げていく。異なる意見を聞いて初めて、自分とは違う考え方に気づく。相手の言葉に耳を傾けながら自分も意見を伝えていく。このような双方向のやりとりによる深い話し合いの中で、関係の質が良い方向に変化したり、参加者自身も驚くような新しい発想が引き出されたりする。
組織開発の過程で、停滞を感じたり、うまくいかないと感じたりした際には、次の5つの価値観に立ち返る。
- タスク・プロセスとメンテナンス・プロセスに目を向ける
- すべてのメンバーを大切に尊重する
- 小さな声を大事にする
- 様々な視点からアプローチしてみる
- 協働の精神を大切にする