リバース・イノベーション2.0 世界を牽引する中国企業の「創造力」

発刊
2014年11月27日
ページ数
256ページ
読了目安
329分
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中国発のイノベーションの実態とは
小米、BYD、テンセント、ファーウェイなど、中国発の企業が、グローバルに活躍する時代がやってきている。中国発のイノベーションの特徴を紹介しながら、リバース・イノベーション2.0とも言うべき流れを紹介する一冊。

リバース・イノベーションとは

「リバース・イノベーション」は、先進国のグローバル企業が開発した製品を、現地ニーズに合わせてコストダウンや不要な機能の削除を行って販売するのではなく、新興国の現地ニーズに合った製品開発を行うという戦略だ。つまり、現地でもイノベーションを取り入れ、最適な製品設計を行うという考え方である。

 

「世界の工場」であった中国は、今や「世界の市場」とも言われているが、それだけではない。1990年代以降、グローバル企業が中国に設立したR&D拠点も年々増えつつある。その分野は電子製品やソフトウェアから、環境、エネルギー、医療へと広がり、範囲の広さや規模の大きさから「世界のR&D拠点」とも呼ばれるようになった。実際、R&D拠点の中国シフトは加速している。「フォーチュン・グローバル500」に入るグローバル企業の内400社以上が、中国でR&D拠点を設立している。

 

イノベーションの原動力は、技術の進歩とユーザーのニーズにある。新興国ではその経済成長に伴い、新興国ならではのニーズが出現し、それを満たすためにイノベーションが起きている。

 

リバース・イノベーション2.0の特徴

一般的に先進国のグローバル企業は、先進国で製品開発をし、それを新興国向けにマイナーチェンジしてグローバル販売するという戦略を取っている。これがグローカリゼーション戦略である。リバース・イノベーション戦略は、その逆の戦略となる。

グローカリゼーションからリバース・イノベーションへという発展の流れは、当初、グローバル企業が新興国で生み出した商品を先進国へ展開する事が中心となっていた。その後、単純な商品の枠を超え、今では広義のリバース・イノベーションとして、ビジネスモデルや経営管理などにも対象を広げている。同時に、新興国の企業から始まったイノベーションが、先進国にも展開されるようになった。こうしてリバース・イノベーションは「リバース・イノベーション2.0」というべき新たな段階に入った。

 

「リバース・イノベーション2.0」すなわち「中国発のイノベーション」と、いわゆるリバース・イノベーションの最大の違いは、前者の主体は新興国(中国)の企業、後者は先進国のグローバル企業であるという点だ。リバース・イノベーション2.0では、中国企業が自国の市場に合わせて開発した商品やサービスが先進国で応用され、中国で生まれた新しいビジネス手法が先進国のグローバル企業に採用されている。

 

リバース・イノベーション2.0には中国ならではの特徴がある。

①最先端ではなく「最適な」技術
最先端ではなく、ユーザー目線で最適な技術を提供するという事は、中国企業が成功を収める上で重要なポイントの1つである。先端技術で自己満足するのではなく、いかにユーザーを満足させられるかが重要である。

 

②社会ネットワークによる大衆のイノベーション
中国では、個々の企業が主導するイノベーションとは異なり、企業、経営者、消費者、行政の密な連携による巨大な社会ネットワークが、試行錯誤によってゼロから1つの産業を創り出す事が稀でない。それを支えるのは膨大なマス市場の可能性と、部品を提供する部品メーカーの存在だ。

 

③独自ではなく、グローバルリソースからの価値創造
コア技術を持たずとも、他国の企業の技術を有効利用する事で、イノベーションを起こせる。

 

④技術と社会の両輪のイノベーション
国家、社会、政治、文化などの分野において、経済や技術の発展の障害となる体制や規制を改革する事も、一種のイノベーションといえる。「中国発のイノベーション」を担う企業の多くは、市場経済が先に導入された「特区」の環境を活用し、零細企業からスタートしている。

 

イノベーションの実験場

海外からもたらされた技術と中国の巨大な市場が融合すれば、基礎技術や基幹技術がなくとも、イノベーションを起こす事が可能になった。

 

イノベーションを起こすには、個人や組織の創造力に加え、市場、資金、技術など、様々な条件が必要だ。「世界のR&D拠点」といわれる現在の中国は、アメリカに次ぐ最大の「モノ、カネ、ヒトの集積地」となった。優秀な人材が集まり、先進国からの技術とノウハウの移転が加速している。