「問い」を立てる力 世の中の最適解を共に考える

発刊
2023年8月25日
ページ数
256ページ
読了目安
294分
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正解のない時代に活かせるPRの考え方
SDGsやESGなど、ビジネスにも社会課題の解決が求められる現在にあって、社会課題の発見の仕方、課題に対する最適解の出し方を、PRの考え方をもとに紹介している一冊。

ステークホルダーと良好な関係を構築するというPRの考え方こそ、現在の正解がない時代には求められるとし、そのフレームワークが書かれています。PRという枠を超えて、ビジネスをどのようにしていくべきかを考えるために使えます。

PRの考え方

PRとは「パブリック・リレーションズ」の略であり、社会との関係づくりを意味する言葉である。自分の組織とステークホルダーとの間で良好な関係を築くにはどうすればよいのか、という考え方こそが、パブリック・リレーションズの本質である。

 

現在は、あらゆる課題を解決しようとする時、過去の正解が通用しない世の中になってきている。正解がない時代に社会課題解決に取り組んでいくためには、自社、クライアント、社会が共に新しい価値を生み出す「共創力」が必要となる。様々なステークホルダーと双方向で良好な関係性を構築しながら答えを創り出す訳だから、まさにPRの考え方が重要になる。

では、ステークホルダー全員が納得する状態と、その状態を創り出す「最適解」をどのように導き出せばよいのか。変化し続ける社会の中で起こる問題から本質的な問いを見い出し、多くの人たちと共通のゴールを持ち、最適解をデザインする。これを「社会デザイン発想」と名づける。

 

社会デザイン発想の原則

企業が目指すべき新しい「最適解」には、次の2つの価値が必要になっている。

  • 経済的価値:自社やブランドの価値をどのように上げ、売上につなげるか
  • 社会的価値:ブランドの価値はより良い社会や暮らしの実現に寄与するのか

 

この社会的価値を考える上で重要になるのが、次の2つの視点である。

  1. 組織視点:自社が持っているものにどのような社会性があるか
  2. 社会的視点:社会的に議論を呼んでいるトピックスと、企業側が提供するブランドとの間にどのような相関があるか

 

経済的価値と社会的価値が重なる部分、すなわち新しい「あたりまえ」を探し出し、社会に浸透させていくための仕組みである「最適解」を打ち出していくことが、社会デザイン発想の原則となる。

 

社会デザイン発想

社会デザイン発想では、次の4つの要素をベースにして考える。

 

①問い

「問い」とは、社会潮流を把握し、当事者一人ひとりの声にも耳を傾けて、裏に取り組むべき課題や、課題に連動するような世の中の兆しを発見して、新しい問いを仕立てていく。

問いの要素を分解すると次の5つになる。

  1. 社会変化の兆し発見:データや複数の事象の抽象化から兆しを掴む
  2. n1インサイト発掘:一人の生活者に注目して、どういうインサイトがあるかインタビュー調査などを通じて探究する
  3. 企業の意思・能力:クライアント自身がどういう未来を目指したいかをヒアリングする
  4. 未来洞察・想定:社会、個人、企業の過去や現在を踏まえた上で、今後の未来を想定する
  5. 新しい「問い」化:上記4つの要素を行ったり来たりしながら調べて、問いの質を上げる

 

②提唱

問いに対して、答え=新しい「あたりまえ」を掲げ、世の中に浸透させるためのプロセスを組み立てる。

まず、新しい「あたりまえ」とは何かを考える。経済的価値と社会的価値が重なる部分をベースに、「社会がこういう風に変わっていくといいのではないか」を考えて書き出していく。この工程では、「何を提唱するか」と合わせて、「誰に」「何を」「誰と/どこで」「なぜ」伝えるかを考えることがポイントになる。

特に重要なのは、「誰と」と「なぜ」。「誰と」は、次の要素「巻込」にも大きく影響してくる。そして「なぜ」は、新しい「あたりまえ」っていいよねと感じてもらい、足並みを揃えるの大義として必要になる。

 

③巻込

「巻込」は、「提唱」で考えた最適解や大義に共感してくださる方、面白いと思ってくださる方を、世の中に向けて問いかける仲間として見つけて巻き込む段階である。賛同の輪を次々と広げていく仕掛けも考える。

まず、巻き込んでいきたい人たちを想定する。彼らは「新しいあたりまえを世の中に向けて伝えていく人たち」(当事者、支援者)と「関わりしろのある人たち」(隣人、越境協力者)の2つの役割に分けることができる。それぞれの要素において、どのような人が想定できるか、できる限り詳しく書き出していく。

巻き込んでいきたい人たちが想定できたら、自走するための仕組み「サステナブルアクション」を考える。この取り組みに関わる人たちの熱量を維持し、たとえ関与する人たちが減っても継続していく仕組みをつくる。

 

④喚起

最後に「どのように伝えていくか」を考える。喚起は、人々が情報を一方的に受け取るのではなく、情報を受け取った時に自分の内側から何らかの感情が湧き上がってくる状態である。喚起は大きく2つのフェーズに分けることができる。

  1. どのように認識を変えていきたいか
  2. 需要・行動・習慣をどう変えていきたいか

 

喚起の状態に到達するまでには、3つの段階がある。

  1. 興味や関心を喚起する:意外な事実を取り上げたり、課題を小分け・具体化する
  2. 共感や議論を喚起する:課題を凝縮して可視化したシンボリックアクションを実施し、気づきを与える
  3. 需要・行動を喚起する:人が思わず欲しくなる・ついやってみたくなる仕掛けを織り交ぜる