悲しみの力 「悲しみ」と「切なる思い」が私たちを健全な人間にする

発刊
2023年8月25日
ページ数
500ページ
読了目安
731分
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「悲しみ」という感情の効果
ポジティブな感情が奨励される現代において、「悲しみ」というネガティブと捉えられる感情の効力について紹介している一冊。

「悲しみ」という感情が、人と人をつなげる力を持っていることや、創造性につながるということを示す様々な研究やストーリーが書かれています。

ビタースイートの力

古代の人々には次のような考え方があった。

人間の体には4つの体液が含まれていて、その4つそれぞれが4種類の気質「多血質(陽気、楽天的)」「粘液質(冷静)」「胆汁質(攻撃的、積極的)」「憂うつ質/黒胆汁質(悲観的)」を形成する。その頃は、4つの体液の内、どれの割合が多いかで性格が決まると考えられていた。

 

この「憂うつ質」の気質を「ビタースイート」と呼ぶ。「ビタースイート」な人は、「切なる望み」や「心のうずき」「悲しみ」を抱きやすく、時が過ぎゆくのを鋭く感じ取る。そして、世の中の美しいものに接すると、心に妙に突き刺さるような喜びを覚える。
「ビタースイート」な人は、「明」と「暗」、「誕生」と「死」、つまり「ビター」と「スイート」は永久に対をなすことに気づいてもいる。こうした二元性を十分に受け入れることが、二元性を超越する唯一の方法だ。

 

「ビタースイート」であることは「静かな力」であり、「生き方」であり人間としての可能性に溢れている。しかし、そうしたことは見落とされている。「ビタースイート」であることは、「苦痛」を抱えていたら、それを受け入れ、それを何か「癒しになるもの」「新しいこと」に転換することができる。私たちが「人は誰もが喪失や苦しみを知っている、あるいはいずれ知ることになる」とわかっているなら、お互いに向き合うことができる。

 

「悲しみ」を共有することから「思いやり」は生まれる

「思いやりの本能」は、ビタースイートタイプの素晴らしい力の1つである。「コンパッション(思いやり)」という言葉は字義的には「ともに苦しむ」という意味で、それは人間の最高の資質とみなされている。思いやる気持ちは「悲しみ」から生まれるが、「悲しみ」というのは向社会的な感情であり、人と人をつなげる手段、愛情を生み出す手段にもなる。そして、私たちの多くは「悲しみ」には人と人を結びつける力があるということを、だいぶ前からわかっている。

 

私たちは、他人と気持ちを通わせるのが難しい時代、特に自分の「同類」以外の人と気持ちを通わせるのが難しい時代に生きている。研究によれば、「悲しみ」こそが、私たちに欠けている「人と人の結びつき」を生み出す力を持っている。もし私たちが「悲しみ」をもう少し尊重することができたら、人と人がつながる架け橋となるのは「悲しみ」なのだと思えるのではないか。

「悲しみ」を尊重できるようになる重要な第1歩は「謙虚さ」を養うことだという。人は「相手より自分の方が上」という態度でいたら、相手の「悲しみ」に、さらには自分の「悲しみ」にさえ、反応できないことが、様々な研究で判明している。

では「謙虚さ」を身につけるには、どうしたらいいのか。答えの1つは「おじぎをする(頭を下げる)」という簡単な動作だという。私たちはこの動作を「服従」ではなく「献身」とみなすこともできる。

 

「創造力」は「悲しみ」と関係する

研究により「創造力」は「悲しみ」や「切なる思い」と関係していることがわかっている。「創造力」のある人には、「苦痛」を直視する力、そしてそれをもっといいものに変えようと決意する力がある。「苦痛」を「美しいもの」に転換しようとする探究心が、芸術的な表現行為への最大の「きっかけ」になるのではないか。

 

「ビタースイート」レベルの高得点者には、「夢中になりやすい」傾向があることがわかっている。そして別のいくつかの調査で「夢中になりやすい」という資質から「創造力」があると予測できることがわかっている。ポジティブな感情とネガティブな感情を同時に抱える人たちの方が、飛躍的な発想をしたり、一見関係がないように見えるコンセプト間のつながりに気づいたりするのが得意だという。

 

「悲しみ」といったネガティブな感情を否定してはいけない

私たちは、「多血質(楽天的)」タイプや「胆汁質(怒りっぽい)」タイプのように振る舞って、「勝ち組」に属していると示すことが奨励されている。こうした考え方が、私たちの人生の様々な側面に影響を及ぼしている。そして、大抵の場合、私たちはそれに気づいていない。

 

人生はビターもスイートも含めて、はっきりと捉えた方がいいに決まっている。たとえ私たちが「悲しみ」や「切なる思い」といったつらい感情を抱かないよう気をつけても、そうした感情は、ことあるごとに私たちを蝕むことになる。

私たちはよく「自分の弱さではなく、自分の強みに目を向けよう」と教えられる。しかし、ビタースイートな性格や「悲しみ」のようなネガティブな気分と、「弱さ」とを混同してはいけない。実際、自分を非常によく理解しているリーダーたちは、自分の「悲しみ」や「限界」、「性格」に正面から向き合い、そうしたものも含めた「より完全な自分」になることを学んでいる。