マネーセンス 人生で一番大切なことを教えてくれる、「富」へ導くお金のカルテ11

発刊
2023年7月21日
ページ数
264ページ
読了目安
376分
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推薦者

お金の問題を抱える人たちの原因
お金の問題を抱える人たちの心理的な原因を解説し、それを克服するためにはどのようにすればいいのかを紹介している一冊。
金銭トラブルや多額の借金、過度なケチなど、お金に関する問題を抱える人は、子供時代のトラウマによって、無意識の内に問題を抱えるとし、その典型的な事例やパターンをもとに、これらの原因を解説し、それに対する対処方法が書かれています。

子供の頃の体験がお金に対する考え方を決めてしまう

お金に関わる慢性的で自己破壊的な困った行動は、すべて無意識の心理的な力によって起こる。当人にそのつもりはなくても、お金に関するシナリオや行動は、世代から世代へ受け継がれる。

「マネーの火種」とは、成人後まで消えない強烈な印象を与えた、お金に関する子供の頃の体験である。私たちは何もわからない子供時代の解釈をもとに「マネーのシナリオ」をつくりあげ、成人後はそのシナリオに沿って、お金について考え、お金と付き合う。解釈が正しくて合理的かどうかは、あまり関係がない。マネーのシナリオが持つパワーの源は、その時その場の子供にとって「それで納得できた」という事実にある。

 

マネーのシナリオは成立した時には役立ったとしても、生涯そのシナリオのままに行動していると、破壊的な影響が出る恐れがある。マネーのシナリオは無意識の中に隠れて作用することが多いので、私たちは知らないうちに振り回されてしまう。そのシナリオから解放されるためには、まずどんなシナリオがあって、その元は何なのかを見定め、シナリオができた時から引きずってきた「未解決の問題」を片付けなくてはならない。その上で、お金についての新しい考え方や行動の仕方、扱い方を学ぶ必要がある。そうして初めて、目の前の課題に適切に対応できるようになるのだ。

 

マネー感覚不完全症候群

マネーのシナリオ(未解決の問題)から生まれる不健全な行動を「マネー感覚不完全症候群(マネー・ディスオーダー)」という。パターン化した自己破壊的な経済活動がしつこくついてまわり、それがストレスや不安、悩みの大きな原因となって人生を損なっている場合、それはマネー・ディスオーダーである。マネー・ディスオーダーは家族的な機能不全、感情的な混乱、対応戦略の失敗、非常につらい子供時代の体験などの要素が重なり合って起こる。症状としては、次のようなことが挙げられる。

  • 自分の経済的な状況に対する心配、不安、あるいは絶望
  • 貯蓄ができない
  • 多すぎる借金
  • 破産や債務返済不能、あるいはこの両方
  • 家族や友達、同僚とのお金のトラブル
  • 経済的な行動を改善しようとしても長続きしない

 

特に気をつけなければならないのは、マネーのシナリオと同じで重複することだ。様々な状況、時期に様々な度合いで複数の兆候が現れる。そしてマネー・ディスオーダーはしつこくつきまとうが、いつも同じではない。

よく見られるマネー・ディスオーダーは次の3つのグループに分けられる。

 

①マネー忌避症候群

お金あるいはお金の扱いを総体的に忌避する。お金は悪いものだという信念。この中には、経済的否認、経済的拒否、過剰なリスク回避、過少支出(ケチ)がある。

 

②マネー崇拝症候群

お金を使うことやお金やモノを持つことに過剰に取りつかれる。お金を安全や自尊心、それに幸福と同一視するマネーのシナリオから生じる。この中には、強迫的な溜め込み、ワーカホリック、不合理なリスク・テイク(病的な賭博など)、浪費がある。

 

③人間関係マネー不全症候群

人間関係に混乱が生じる。問題のある行動で自分だけでなく他の人々にも感情的、経済的な被害を及ぼす。この中には、経済的な裏切り、経済的な近親相姦、経済的なイネイブラー(依存助長)、経済的な依存がある。

 

マネーのトラウマを克服する

未解決の問題があると、自分自身や他者とのつながりを築く能力が限定され、不安、うつ、対人問題を引き起こす。マネー・ディスオーダーはお金に関わる過去のつらい体験や人間関係をめぐる未解決の問題から生じる。マネー・ディスオーダーに苦しんでいるなら、トラウマや体験した出来事に関わる未処理の問題の解決を含め、永続的な変化を起こす必要がある。

 

問題と正面から向き合い、表出されていない感情を処理するまで、過去の記憶の影響からは逃れられない。視界、マネー感覚の火種となった記憶は変えられる。記憶を消してしまうのではなく、その意味や人生に及ぼす感情的な影響を根底から変えることができる。

最初の感情の洪水をやり過ごして、大人の視点や知識からその体験を考えてみれば、もっと現実的な、それどころか自分のためになる解釈が生まれることもあり得る。1つの方法は、役割を逆転させることだ。相手、あるいは別の関係者の視点からその出来事を考えてみる。今ならわかるその人の背景や、その頃その人たちがどんな問題を抱えていたかを考えれば、何がその人たちを動かしていたのか理解できる。

 

ここで肝心なのは、誰かの行動を赦すとか、正当化する、大目に見ることでもなく、別の誰かに責任を転嫁することでもない。目的は、記憶から生まれる不安を軽減して自分が楽になることであり、それには関係者全員の動機を充分に理解することが役に立つ。そのためには無力な犠牲者という役割から脱して、自分には何かができるという感覚を取り戻さなくてはならない。