BRAIN WORKOUT 人工知能(AI)と共存するための人間知性(HI)の鍛え方

発刊
2023年6月30日
ページ数
360ページ
読了目安
529分
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脳のパフォーマンスを高めるための鍛え方
脳科学に関する書籍を参照しながら、現在わかっている脳の仕組みを簡潔に紹介し、脳の仕組みに基づいて、脳を鍛えるための方法を紹介している一冊。

脳の働きを活発化させ、パフォーマンスを高めるために「運動」「睡眠」「瞑想」「対話」「読書」「デジタル」という6つの切り口から、それぞれ有効な脳の鍛え方のメニューを提案しています。

脳の仕組み

私たちの脳の働きも、鍛えなければ退化し続け、また間違った鍛え方をすると怪我をする。脳の基本構造、諸機能について科学的に理解し鍛えることで、故障や機能不全を防ぎ、パフォーマンスを向上させることできる。

私たちの脳の仕組みは次の3つに分かれる。これら仕組みの理解は、シンプルで、日々実践可能で、人生を前向きに捉えられるようになる。

 

①生命/身体に関する仕組み

身体は、狩猟採集民族の頃から数万年変化しておらず、恒常性や周期性の性質由来の知能を持っており、それらが様々な情動や感情を引き起こす。意識や知能/知性が身体の生命活動から来るという点が、人間の知能/知性(HI)とAIの最大の違いである。

 

②脳に関する仕組み

脳の知覚、着想、思考という活動は、脳神経細胞が活性化し、シナプスにおいて複雑に繋がることで起き、脳はアップグレードもダウングレードもする。脳の働きは、学習や生活習慣によって、生涯にわたってアップグレードが可能である。

 

③記憶と思考に関する仕組み

人間は本能的情動に仕える「古い脳」と、短期記憶と長期記憶の転送と想起によって深い思考を可能にする「新しい脳」を持っている。脳の配線の働きと数十秒の作業記憶でも深い思考ができるのは、大脳新皮質に格納された過去の学習による膨大な長期記憶を、必要に応じて随時引き出すことができるメカニズムがあるからである。

 

6つの脳の鍛え方

科学的根拠に基づく、脳を鍛えるための様々なトレーニングメニュー「ブレインワークアウト」は、次の6つのモードに分けられる。これらの機能と役割を意識しつつ、メニューをバランス良く実践することが大事である。

 

①運動モード:脳の基本能力を鍛え、着想を得る

近年の研究によって「低強度の運動は、記憶力や発想力を高め、健やかな精神をもたらす」ことが科学的に明らかになってきた。人間の脳は「場所移動」による感覚情報の変化に伴ってニューロンを活発化させ、思考と行動を行う。即ち、外に出て移動し、時に運動し、様々な刺激に出会う時に、脳の働きは最も活性化するように人間の脳は作られている。

  • 週3回以上、30分程度、息が少し上がる程度の運動を習慣づける
  • 距離移動と非日常空間で脳を活発に学習させる

 

②睡眠モード:記憶と感情を整理する

睡眠時間を削ると脳のパフォーマンスは著しく低下する。6時間睡眠を14日間続けると48時間徹夜したのと同程度の認知機能になる。睡眠の目的は、身体を休ませて疲れを取るだけではない。主に前半の深い眠りのノンレム睡眠は、日中の記憶の中で重要な記憶をある種オフライン処理して、短期記憶の海馬から長期記憶の大脳新皮質に移し、定着させ固定化させる役割がある。同時に、海馬の老廃物が流され、短期記憶を司る海馬の記憶容量に空きスペースが確保される。
一方で、後半のレム睡眠には、記憶と感情の統合と整理が行われていると考えられている。この朝のレム睡眠を削り続けると、不安や混乱、抑うつ傾向が強まることが報告されている。

  • 睡眠を徹底してパーソナル化し、睡眠時間をたっぷり取る

 

③瞑想モード:「今、ここ」の自分を観察し、世界と一体化させる

時間に追われ、職場やネット空間で別のキャラクターを演じながら、本当の自分というものを見失い、誰かと繋がっているようで、誰とも繋がっていない孤独に多くの人が苛まれている。じっくりと時間をかけて、本当の自分の心や意識と向き合うことは、現代において今後益々重要になってくる。
心・感情・意識は、脳だけでなく身体感覚全体での動的な相互作用である。これは瞑想や禅における意識と身体性に極めて近い。

  • 観察によって「今、ここ」に意識を集中させ、自己と対話し内省する
  • 自己と世界を一体化させ、最終的に世界と自己の肯定に至る

 

④対話モード:自己の意識を他者と共有し世界認識を広げる

狩猟民族の脳は、仲間がそばにいないとストレスと不安を感じるようにプログラムされている。何かのアルゴリズムや論理的思考によら図、ひたすら声のコミュニケーションを取ることで集団全体の意識とそれぞれの存在と役割を確認する、これは人間ならではである。

  • 人々の意識を変えていく「声の力」を再認識する
  • 同じ目線で傾聴し、目的なく語り合う時間を作る

 

⑤読書モード:人生を豊かにする深く長い思考

数時間集中して、1つのテーマに関することについて自らも思考しながら、静かに本を読み進めることで、1人の著者が多くの時間をかけた思考の真髄を、自らの大脳新皮質の長期記憶にインストールする。静かに黙読することで、自分のペースで、時には行きつ戻りつし、文字から得られる情報を咀嚼してから、長期記憶に移動させることができる。

 

⑥デジタルモード:脳を拡張し、アウトプットの可能性を広げる

デジタルテクノロジーを活用して、生産性を飛躍的に改善する。

  • メモ帳アプリで情報を固定化し、規格単位化する習慣を身につける
  • 情報の一元管理+発酵で自分だけの「知の生態系」を構築する