謙虚に聞く力

発刊
2023年6月14日
ページ数
208ページ
読了目安
161分
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推薦者

リーダーに必要な姿勢とは
病院の理事長、院長をはじめ、多くの組織のトップを務めてきた著者が、リーダーにとって最も大切にすべきことを書いた一冊。

まずは周囲の話を謙虚に聞いて、相手を尊重するところから始まるとし、リーダーのあるべき姿勢について説いています。組織の中で地位が高い人ほど、改めて自身の姿勢を見直すために必要なことが書かれています。

リーダーには謙虚に聞く力が必要

リーダーは孤独なものだが、裸の王様になってはいけない。人の意見に耳を傾けなければ、優秀なリーダーもいつしか裸の王様になってしまう。リーダーは、謙虚に聞くことで、正しい決断ができ、それをもって自分自身の心の安寧も得られる。

 

謙虚は、そもそもは日本人の美徳だが、忘れ去られてきている。謙虚でない人間が横行したことの弊害が、世界にはたくさんある。例えば「サイコパス」なリーダーが数多く生まれてしまった。サイコパスとは「良心のない人物」のこと。だから反省もせず、自分の思ったことを躊躇なくそのまま口にし、実行する。誰かに反対されても聞く耳がなく、常に自分の意見を通す。サイコパスが組織や国家のリーダーになると危険である。

 

謙虚にしていては、横暴な者に勝てない。出世もできないと言う人もいる。これに対して「謙虚力」という言葉を主張している。この力は「謙虚」とは少し違う。周りの意見を聞き、それを理解するように努力する。ぐいぐい前に出ることはせず、控えめに周囲を観察する。しかし、主張すべきは主張する。そして組織を良い方向に向かわせる。

「謙虚力」とは、相手を尊重して立てながら、しなやかに自己主張し、ひいては組織を活性化する力なのである。そうすることで、自身の意向と共に、働くメンバーの主体性を両立させ、組織のパフォーマンスを最大化することができる。

 

まずは聞く。譲れないものは主張する

謙虚力の源泉は、傾聴の姿勢である。周りの意見を聞き、積極的に必要な場所に出かけ、見聞を広め、学ぶ。そうやって、大局観を養う。俯瞰して物事、周囲を見る目を育てる。そして冷静にどうすべきかを判断する。主張が大事であっても、相手の意見も聞かず、いわば力ずくで納得させようとしても、決して良い結果には至れない。

 

謙虚力の黄金律は7対3である。自身の意向と利害関係者の主体性を両立させる。そのためには「傾聴する」と「主張する」が7対3のバランスであることが大切である。

他人の意見に真剣に耳を傾けられる人間には発展性がある。それをしない人間は自分の意見に縛られる。発展性がないだけでなく、歪み、間違える可能性が高い。決して、自分の経験や考えだけに頼って、他人のこと、部下のこと、今の組織の状況をわかった気になってはいけない。見えないことは多いものである。だからこそ、耳を傾けることが大切である。

 

リーダーになれば、周囲に加え、部下をよく観察し、聞く耳を持つ。聞くだけでなく、今度は語る。但し、まずは聞く。最初から自分の考えを押し付けてはいけない。

 

謙虚力を持った人は、下からあえて好かれようなどとは思わない。そんなところに労力は掛けない。好かれるかどうかではなく、孤高に、自分を高めることに力を費やすべきである。結果として、周りから好かれる、部下から尊敬されるリーダーになることが重要である。組織のため、自分のためを思い、精進する。その結果、部下もついてくる。

 

私利私欲を捨てる

謙虚力とは「相手を尊重し、立てながら、しなやかに自己主張する力」を意味する。この力を手に入れるためには、失敗しないように小さく小さく生きるのではなく、間違ってもいいからチャレンジしなければならない。

 

しかし、そこに出世欲は関係ない。謙虚力を持った生き方ができれば、何者にならなくてもいい。自分らしく生きられればいいのである。組織において上に立つことだけが人生の成功ではない。自分に恥じない生き方をして、一流の人間になることが最も大切である。

 

謙虚に聞く上で「滅私」は重要なキーワードである。滅私とは、私利私欲を捨て去ること。私利私欲を脇に置いて、状況を俯瞰し、素直な目で見て、公平な考えでどうすれば全体のために良い結果になりそうかを考える。そうすれば、自ずと大切なことがわかり、進むべき道も見えてくる。そこで見えた結果をもとに果敢に決断できるのが良いリーダーであり、一流の人間である。