なぜ豊岡は世界に注目されるのか

発刊
2023年6月16日
ページ数
272ページ
読了目安
293分
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世界でも注目される特色のある街づくりの事例
絶滅しかかっていたコウノトリの野生復帰に取り組みニュースになったり、「ベスト温泉街」と海外で評される城崎温泉を擁し、豊岡演劇祭などでパフォーマンスアーツの拠点としても注目される兵庫県豊岡市。
世界でも注目されるローカル都市を目指すとして、これまで取り組んできたユニークな街づくりについて書かれた一冊。

これからの地方創生は、その地方の文化や伝統を守りながら、独自性のある街づくりを行って、世界とつながることが大切だ説いています。地方都市の再生の事例として参考になります。

「小さな世界都市」を創ることが地方創生の鍵

兵庫県の北部に位置し、但馬地方にある豊岡は「小さな世界都市(Local & Global City)」を目指している。この「小さな世界都市」は「人口規模は小さくても、世界の人々に尊敬され、尊重されるまち」と定義している。大都市との格差是正に汲々とするのでなく、世界を絶えず意識して、世界に通用する「ローカル」を磨き上げて、世界で輝く戦略である。「小さな世界都市」は、日本の地方で急速に進む人口減少への対応策の旗印となりうる。

 

地方における人口減少の最大の要因は、多くの場合、若者、特に女性の流出にある。「生きる場」として彼ら、彼女らに選ばれていないのである。選ばれているのは大都市、象徴的には東京である。とすると、人口減少対策としての地方創生でやるべきことは、地方に暮らす突き抜けた価値の創造、生きる場としての突き抜けた魅力の創造である。
経済的にも、文化的にも、社会的にも「突き抜けて面白いまち」を本気で創ろうとしていると、それを意気に感じた人々が自らの挑戦をかけてやってくる、帰ってくる。そうすることでまちが蘇る。

 

問題は、その「突き抜け方」である。キーワードは「深さ」と「広がり」。「深さ」は、その地の自然、歴史、伝統、文化に根差すことを意味する。「広がり」は、世界とつながることを意味する。今や小中学生でも自分たちのことを世界に向けて発信し、世界の人々とつながることが可能になっている。

 

小さな世界都市を目指すために豊岡が取り組んでいる4つのこと

「ローカル」のどの部分にどのような光を当て、世界に飛び立つためのエンジンにするのかは、それぞれの地のやり方がある。豊岡の場合は、次の4つをエンジンと位置づけている。

 

①コウノトリの野生復帰

絶滅の前にコウノトリを守ろうという運動が豊岡で起こり、1955年に官民一体の保護団体が発足した。1965年に人口飼育が始まって24年経った1989年ヒナが誕生した。野生復帰を目指す最大の理由は「コウノトリを空に帰そう」を合言葉にして、コウノトリも住めるような環境、即ち豊かな自然と、自然と共生する文化をもう一度取り戻そうということである。

コウノトリも住める環境を実現するために真っ先にやるべきことは、農薬に頼らない水田農法の確立だった。そして、その農法を農家に普及させ、その米を農家の努力に見合う価格で消費者に売る必要があった。コウノトリも住める環境の基盤づくりは着々と進められ、2005年にコウノトリの自然放鳥、2007年に野外でヒナが誕生した。

 

②受け継いできた大切なものを守り、育て、引き継ぐまちづくり

2010年、城崎温泉を訪れる外国人宿泊客が急増していることに気づいた。「ロンリープラネット」という、英語圏でのシェアが25%を誇る英語圏最大の旅行ガイドブックの日本編で、2007年版から日本のベスト温泉12の内の1つに城崎温泉が紹介されていた。しかも、日本の「Best Onsen Town」は城崎温泉だという。

城崎温泉は、比較的小さな木造3階建ての旅館が連なっている。街全体を1つの旅館にたとえて、7つの外湯と70軒を超す旅館のほとんどが半径400m以内の円の中にある。城崎温泉は、1925年の北担大震災で一度ほとんど灰になったが、そこから鉄筋コンクリートではなく、「元に戻す」という復興を選んだ。

世界が急速に同じ顔になりつつある現在、ローカルであること、地域固有であることは世界で輝くチャンスにつながる。地方は大都市のように絶えず新しいものを作り続けることは不可能。受け継いで大切なものを守り、次に引き渡すという戦略を取るしかない。

 

③深さをもった演劇のまちづくり

芸術文化は、街自体に影響を与え、街のあり様に大きな変化をもたらす。深さをもった演劇のまちづくりは、演劇やダンスなどのパフォーミングアーツを活かしたまちづくりを進め、世界に突き抜けていこうという戦略である。

城崎温泉の端に県立の「城崎大会議館」という、収容人数が千人規模の古いホールがあった。この施設を市が引き受けることになったが使い道に困った。そこでタダで劇団に貸してはどうかと思い付いた。2012年度、城崎大会議館を演劇やダンスの滞在制作の場として活用する基本計画を策定することにした。地元有識者で策定委員会を組織し、佐東範一さん、平田オリザさん、吉本光宏さんにアドバイザーをお願いした。そして、2014年に城崎国際アートセンターとして新たなスタートを切った。パフォーミングアーツに特化した日本最大級のアーティスト・イン・レジデンスである。

 

④ジェンダーギャップ解消

豊岡では、男性に比べて女性の方が圧倒的に帰ってくる割合が小さかった。その原因の1つはジェンダーギャップ、即ち社会的・文化的に築き上げられた男女格差にあった。2018年からジェンダーギャップ解消の取り組みは始まった。