伝え方 伝えたいことを、伝えてはいけない。

発刊
2023年6月9日
ページ数
312ページ
読了目安
216分
推薦ポイント 4P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

相手に伝わるメッセージのつくり方
自分の伝えたいことを伝えても、相手には伝わらない。伝えたいことを、相手にとって意味や価値があるメッセージに変換する必要があるという、コミュニケーションの本質を解説している一冊。

相手に伝わるメッセージを見つけるための方法が、わかりやすいフレームワークで紹介されています。相手目線で自分の伝えたいことを考えることを見落としがちな罠を自覚し、自分のコミュニケーションのあり方を考え直すきっかけになります。

「伝えるべきこと」を明確にする

「伝え方」に正解はないが、原則はある。それは「いいメッセージがあるから、いい伝え方ができる」というもの。「伝えるために表現されるもの」には、必ず元となる「伝えるべきメッセージ」がある。そこに魅力があるからこそ、それを表現したものが魅力的になる。
何かを伝えて、納得したり、共感したりしてもらいたいなら、何よりもまず「メッセージ」を納得したり、共感したりできるものにする必要がある。

 

伝わる文章にならない最大の原因は、「伝えるべきことを一言で言えない」ことにある。書き手が「伝えるべきこと」を明確に意識できていると、何を書くべきか、どう書くべきかといった判断がつきやすく、必要な情報を見極めることができるようになる。書き手が「なんとなく」しかわかっていないことは、言葉をつくしても「なんとなく」としか伝わらない。

 

「伝えたいこと」を伝えても、伝わらない

そもそも、私たちは、伝え手の「伝えたいこと」が、受け手にすんなり受け入れられづらい構造の中で、コミュニケーションをしている。伝えるコミュニケーションはすべて、次の2段階のプロセスを経ている。

  1. 伝え手が伝える事柄を表現する
  2. 受け手がそれを見聞きする

この受け手が見聞きするプロセスは、伝え手が強制することはできない。受け手がある程度の時間や労力、注意力などを割いて、見聞きしてくれなければ、納得はおろか理解にもたどり着くことはできない。

 

つまり、受け手が受け入れるのは、伝え手が「伝えたいこと」ではなく、自分が「伝えられたいこと」ということである。「伝わる」ようにしたいなら、一言で言い表す時点で、相手が納得して、共感するような「伝えられたいこと」へと「伝えたいこと」を変換しておく必要がある。

この変換のポイントは、受け手が「自分ごと」と感じられるようにすることにある。この伝え手の「伝えたいこと」を受け手を引きつける魅力へと変換する「一言」を、メッセージと呼ぶ。「伝える」の本質はメッセージにある。

 

受け手にとって価値があるメッセージに変換する

私たちは情報を品定めする際、「自分にとって必要性があると感じるか」というものさしを大切にする。自分にとっての必要性と密接につながっている「メッセージ」に、受け手は魅力を感じる。

この魅力は「よさ + わけ」の組み合わせによって表現される。「よさ」だけでは必要性が見えづらく、人の気持ちを引きつけるところまでたどり着きづらい。「よさ」が実現される「わけ」までを含めてはじめて、必要性を感じることができる。

これを形式として表すと「〇〇だから、〇〇だ」となる。

 

メッセージは一言であることが重要だが、1行でなくても構わない。大切なのは、言葉の物理的な長さではなく、端的に魅力をいい当てることである。

 

魅力を考える上では、「魅力は受け取る人によって異なる」ということを気をつける必要がある。相手が違えば、必要性が違ってくる。ものごとの意味や価値は、何かと関係づけられてはじめて解釈されるものである。ここには「編集」という営みが関係する。ものごとの意味や価値は、コンテクストを操る、編集によって生み出される。

何かを伝える時には、伝える相手との関係性を重視する必要がある。受け手との関係性の中で「伝えたいこと」を価値化して「伝えられたいこと」に変換する。そのためにも「誰に向けて伝えるか」をはっきりさせることが重要になる。

 

伝わるメッセージの見つけ方

①メッセージの「要素メモ」を作成する

  • 伝えたいこと:伝え手が伝えたいと思っていることやもの
  • 伝える相手:伝え手が伝えないことを伝えたい相手
  • 困りごと:わけで解決される課題や悩み
  • よさ:伝えたいことを伝える相手の目線で解釈した意味やメリット
  • わけ:よさが提供される道筋や道理

 

メッセージを考案する前に、まず5つの要素を整理する。

 

②「思考の型」に沿ってメッセージを導き出す

  1. 伝える相手が、日常で持っている困りごとを、本人の目線で生活をイメージしながら探す
  2. 困りごとを見つけたら、それが伝えたいことによって解決されないかと考えてみる
  3. もし解決されそうであれば、解決されてどうなるのかという結果=よさを突き詰める
  4. なぜそうなるのかという、わけを考える
  5. 導き出したメッセージが「そうかも!」と言えるものか吟味する

 

この5つのプロセスを何度もたどりながら、これだという者が見つかるまで粘り強く考える。