覚悟 未来に立ち向かう言葉

発刊
2023年6月1日
ページ数
320ページ
読了目安
177分
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会社を再建するために1番大切なこと
鹿児島県のスーパーマーケット「タイヨー」の経営再建を実施し、多額の借入金を返済した経営者が、リーダーに必要なこととは何か、経営再建を実現させるためには何が必要かについて語った一冊。

経営の基本とは何かについて書かれており、社内組織を改革し、逆境を越えるために大切なことがわかります。低迷する日本経済にあって、中小企業こそが覚悟を持って意思決定を行い、立ち上がるべきだというメッセージが込められています。

会社再建で一番大切なこと

株式会社タイヨーは、鹿児島県を中心に93店舗のスーパーマーケットを運営している。創業は1960年、年商約1100億円、約4000人の従業員が働いている。タイヨーは、1993年に東証二部に上場していたが、経営が悪化し、株価は低迷。買収を仕掛けようと外資から狙われ、国内企業大手2社からも狙われていた。

2013年、東京の会計士にMBOについて相談すると、そのために多くの借り入れをするなんて、今の会社経営で返済できるはずがないと会社の売却を勧められた。しかし、絶対やり遂げるという覚悟と根拠のない自信のもと、個人の現預金、不動産、会社の不動産すべてを担保に入れて、454億円の借り入れをし、この資金を使ってMBOを断行した。失敗したら、一文なしになる覚悟で実行した。

 

会社がうまくいかなくなる1番の原因は、自社におごりがあること。鹿児島の中では上場している企業も少なく、他社が潰れても、我が社は上場企業だ、タイヨーは潰れないという空気感があった。非常に傲慢な空気が流れていた。
しかも、会社の数値をしっかりと長期的に見ている人がいなかったことも大きかった。時代はどんどん進んでいるのに、常に学び、時代に対応していくという社風がなかった。

 

会社の再建で何が一番必要であり、大切であったか。1番は、危機を乗り越える覚悟。2番目は、めげない精神力。成功の秘訣は、本気で諦めずにやるかである。おかげで10年間で454億円すべてを返済することができた。

 

当たり前のことを覚悟をもって愚直にやる

成果を出して生き残っていくリーダーになるためには「覚悟」が必要である。はっきり言って、経営コンサルにお願いするだけでは無理である。タイヨーも上場廃止前、有名なコンサルティング会社、数社に高いお金を払い、経営改善の指導をお願いしたが、数字が落ちていく状態を止めることはできなかった。会社を改革して立て直すなど無理だった。

 

会社の再建は、多くの場合、組織のトップである社長にその覚悟があるのかにかかっている。覚悟とは、その会社に命を懸けられる思いがあるかどうか。本当に腹をくくる気持ち=覚悟があれば何があっても何とかなる。自分を信じ、正しい心を持って努力すれば、八方ふさがりでも天井は開く。

 

タイヨーは経営の数字だけではなく、会社や店舗もぐちゃぐちゃだった。クモの巣が張っている店もあったくらいである。そこで最初に手をつけたのが掃除だった。

銀行や弁護士には笑われていた。「この程度の改革案で本当にできるのか」という批判はあちこちから聞こえてきた。しかし、ビジネスの基本は、どの会社も一緒である。大したことのないように見えること、みんなが既に知っていることを愚直にやったかやらないかである。当たり前のことを愚直にやる、しかも覚悟をもってやる。それが一番大事なことである。

 

MBO以前は、ほとんどの社員が売上と粗利以外、数字がよくわかっていなかった。そのため、会社がどのような状態なのか、本業が赤字ギリギリにあったなど、社員たちは知らなかった。そこで、社員の意識改革から始めた。

数字で会社の事実を伝えた。並行してトイレ掃除、次が引き出しの中、各棚、机の整理整頓を実施。トイレをきれいにしたりすると、不思議と滞っていた会社の空気感に流れが生じて、会社の雰囲気が好転する。

 

会社の本部は当初、官僚が居座っているような雰囲気があり、ほとんどの社員は経営改革に対する抵抗勢力だった。少しずつ理解者を増やしていった。理解者を増やすのに最も効果的だったのは、秘書を3、4ヶ月ごとに替えて、指導した後に各ポジションに送り込み、じわじわとマインドを浸透させていったこと。数字の勉強をしてもらったことで、社員はずいぶん数字に明るくなった。

 

リーダーに求められること

リーダーには覚悟を決める以外にも必要なことがある。リーダーは、夢(ビジョン)を語らなければならない。もしかしたら、あの人だったらやるかもしれないという夢を語らなければ、トップにはなれないのである。そして言った以上に、夢に向かって努力する覚悟が必要である。

 

経営の本には、使命やミッションを持ちましょうと書いてある。しかし、使命はそんなに簡単には見つけられない。文字通り、命を使う、命を削るぐらいの思いであったり、死を覚悟するくらいの経験をして初めて気づけることである。人は、真に苦しいことに直面した時に使命に気づくことができる。1つの仕事をそのくらい徹底的に突き詰め、もうこれ以上どうしようもできないところまで深掘りする人が初めて使命を見つけられる。

使命に気づき、努力して、その試験を乗り越えた時には、奇跡が起こってくる。