アナログの逆襲 「ポストデジタル経済」へ、ビジネスや発想はこう変わる

発刊
2018年12月10日
ページ数
400ページ
読了目安
612分
推薦ポイント 10P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

アナログなものが見直される時代
レコード、紙のノート、フィルム写真など、今アナログなものが見直されている。デジタル・テクノロジーが進歩するに伴って、アナログが重要になると様々な事例を紹介する一冊。

アナログの逆襲

デジタル化がますます進む近年、「時代遅れ」と揶揄されていた技術やプロセスが、唐突に息を吹き返している。凸版印刷のカードや招待状、フィルム写真、ハンドメイドの革製品や時計、雑誌の創刊号、万年筆、レコード。デジタルが浸透した時代に、デジタルではない製品、サービス、アイデアの価値が再び上がり、見直されている。

アナログの逆襲は、デジタル・テクノロジーが並外れて進歩した結果に他ならない。デジタル・テクノロジーの真の利点と欠点をより公正に判断できるようになるからだ。多くの場合、古いアナログのツールや手法を使う方がうまくいくと判明する。その結果、人はアナログ特有の効率の悪さを強く求めるようになる。アナログの欠点が新たな強みに変わる。

デジタルに囲まれる現代生活で、私たちはもっとモノに触れる経験、人間が主体となる経験を渇望している。商品やサービスに直に触れたいと望み、多くの人がそのためなら余分な出費も厭わない。たとえ同じことをデジタルでするよりも、手間がかかって高額でも。

アナログにも利点がある

アナログは、現実世界の喜びとデジタルでは得られない恩恵をもたらす貴重な経験だが、単純にソリューションとしてデジタルより優れている場合もある。例えばペンは、今もキーボードやタッチスクリーンよりアイデアを広げやすいツールだ。

重要なのは、デジタルかアナログのどちらかを選ぶことではない。私たちはデジタルの使用を通して、このように物事を極度に単純化する考え方に慣れてしまった。現実世界は、黒か白ではなく、グレーですらない。色とりどりで、触れた時の感覚に同じものは1つもない。そこに豊かな感情が幾重にも折り重なっている。アナログの逆襲はこのごちゃ混ぜの現実のなせる業だ。

なぜアナログを選ぶのか

コンピューターの外のアナログ世界を、テクノロジーのスラングで「IRL(インリアルライフ)」という。これは、デジタルは現実ではないという、頭字語好きのハッカーたちも認める暗黙の事実であり、これまでもこれからも変わらない。スクリーンの外にある、思い通りにいかない、苦難に満ちた雨交じりの世界こそ、人間が生き生きと輝き、私たちの精神と肉体が形作られ、成長し、変化を遂げる場所なのだ。

デジタル・テクノロジーがもたらす恩恵(スピード、広範な接続性、強力な処理能力)に一つ浴するたびに、アナログ的な何か(静けさ、個人的なつながり、黙想にふける時間)が失われている。私たちは起きている時間の大半を、スクリーンを見つめ、キーボードを打ち、タップしたりスワイプしながら過ごしている。

デジタルが生活を支配し、長期にわたって存在するようになったほぼすべての場所で、アナログはますます意識しないと選択できないものになり、デフォルトであるデジタルよりも物質的にも、時間的にも、精神的にも負担が大きい。それでも、アナログを選ぶ人が増えている。なぜなのか?

1つは、喜びだ。フィジカルなモノと経験が消えつつある現代で、アナログは実在する形のあるモノを作り、所有する喜びをもたらす。もう1つは利益だ。アナログの逆襲は、ポストデジタル経済が成長しつつあることを示している。ビジネスの世界でデジタル重視が強まるにつれて、新しい斬新な方法でアナログを活用できる企業や個人がますます突出し、成功を収めるだろう。手間をかけることがこれまで以上に重んじられ、アナログなツールと慣習(ホワイトボードを使ったメモ取りから、デジタル経験の現実世界への転換まで)を導入した主要企業が頭角を現すことになる。

デジタルがもたらすことができるのは、実生活とリアルの世界での豊かさの複製だけだ。そのコピーは絶えず進歩しているが、結局のところ、シュミレーションであることに変わりない。