ベーシックインカム×MMT(現代貨幣理論)でお金を配ろう

発刊
2023年3月8日
ページ数
106ページ
読了目安
115分
推薦ポイント 2P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

推薦者

MMTに基づいたベーシックインカムの導入論
財源や税金についての見方を変える「MMT(現代貨幣理論)」の考え方を解説し、MMTに基づいて増税せずに通貨を発行してベーシックインカムを導入することこそが、より良い未来であると説いています。

インフレの管理や不平等の解消、社会的な動機付けを目的と、実際の資源に注目した上で、通貨供給量をコントロールするMMTの概念がわかりやすく紹介されています。

財政支出に課税や借り入れは必要ない

2020年3月27日、米国政府は「コロナウイルス援助・救済・経済安全保障法」を成立させ、誰からも税金を取ったり借り入れをしたりせずに、何もないところからお金を生み出して2兆ドル(270兆円)以上もの財政支出をした。さらにその後、「統合歳出法」「アメリカ救済計画法」によって、追加の財政支出がなされた。政府は財源を調達した訳ではなく、ただ支出しただけである。アメリカ政府は何もないところからお金を作り出したのである。

アメリカ政府は税金で支えられているわけではない。政府は通貨を無から創り出す。支出によってお金を生み出すのである。税金は、お金の価値を維持するために、世の中に出回っているお金(マネーストック)から、その一部を取り除くものである。

 

作り出せるお金の量には限界はない。しかし、どの時点においても、お金と交換できるモノやサービスの量には限界がある。その限界は現実のもので、常に変化するものである。それは、その時点における需要に応じた供給を行うための、利用可能な天然資源や人間の労働、機械の働き、知識、時間、エネルギーなどの量によって決まる。

本当に重要なのは、お金ではなく、お金で測られるモノの方である。お金は、交換されるモノを大まかに測るための、人間の拵え物に過ぎない。課税は重要だが、通貨を発行する政府にとって、財政支出ができるようにすることは、課税が必要な理由には含まれない。これが現代貨幣論(MMT)の核心である。

 

従来の考え方では、政府が財政支出を行おうとすれば、まず税金や借り入れでお金を手に入れる必要があるとされてきた。それに対してMMTでは、政府はまずお金を支出し、その後で循環しているお金を取り除くために、課税や借り入れを行うとされている。

 

税金の役割

政府は自国通貨を創出するので、その不換紙幣の価値はいかなる物にも固定されていないので、政府支出はすべてお金の創造だと言える。逆に徴税は通貨供給量の削減となる。納税者は、インフレの抑制に貢献しているだけである。税金とは、物価上昇や不平等、動機付けに関するものであり、何かのための「財源」ではないのである。

 

課税の制約はないということを、誰もが理解することは、大きな可能性をもたらす一方で、大きな危険につながる。もし、すべての政治家が、政府支出に制約はなく、本当の制約は資源であり、それを最大限に活用する能力だと知れば、突然にして、政府支出案件がたくさん実行可能になる。この時、効果のない、あるいは全く逆効果の支出や課税を避けるために、証拠に基づく政策立案を行う必要がある。

 

MMTは資源(リソース)に着目する。私たちは金額だけでなく、利用可能なリソースで実際に何を達成しようとしているのかを考えなければならない。財政支出は優先順位と達成能力の問題になる。そして課税は物価を管理する道具の1つになる。

さらに税金を最小限に抑え、最善の結果を得るために、適切な税や適切な政策を最善の方法で活用することに、注意を注ぐ道が開かれる。「ピグー税」はその手段である。これは、外部化された費用を認識し、それを価格に含めることによって、市場参加者のより良い意思決定を促すものである。

 

ベーシックインカムが必要

すべての人々に毎月お金を届けるために、赤字財政によって現金を「印刷」すれば、物価上昇につながると心配される。物価上昇が恐れられているのは、お金の価値が下がるからではなく、お金の価値が下がる結果として、モノを買う力(購買力)が落ちるからである。しかし、購買力が物価よりも早く上昇し、物価上昇率が安定している限りは、物価が上がっても人々の暮らし向きは良くなるのである。

インフレが起こると同時に、お金持ちを含むすべての人々に、新しく創造されたお金が同じ金額ずつ配られるならば、損をするのはお金持ちである。物価上昇による購買力の低下が、BIによって受け取る金額以上に「見えない税金」として影響するからである。

つまり、通貨供給量が増えれば、必ず物価上昇率が上がるというわけではなく、ある程度物価が上がる時にBIがきちんと与えられるならば、BIによって貧困層や中間層の暮らし向きは必ず改善する。

 

十分な金額のBIは貧困をなくす。その上で、あらゆる種類の雇用は、雇われた人々が消費者として、生存のために必要なものではなく、楽しみのために好きなものを買えるようにする。BIは、雇用保証(JG)の仕事に限らず、すべての仕事に対して重要な働きをする。MMTの要点は、リソースの確保と有効活用であるから、MMTにとってはJGよりも、BIの方が必要である。BIがあれば、JGはその上乗せとして、さらにキャパシティを高める働きができる。

 

参考文献・紹介書籍