時間資本主義の到来 あなたの時間価値はどこまで高められるか?

発刊
2014年11月20日
ページ数
256ページ
読了目安
280分
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時間の価値をいかに高めるか
スマホの登場によって、すきま時間が価値を持つことになった現代。より稀少になった時間の価値をいかに高めるかについて、マーケティング、働き方の観点から解説している一冊。

時間のロングテール

一昔前は、通勤電車に乗っても、新聞や雑誌を読む人がいたり、ぼーっと車窓を眺める人がいたりした。しかし、最近ではほぼ全員がせわしなく親指や人差し指を動かし、メールをしたり、SNSをしたり、ソーシャルゲームに興じたり、検索エンジンで調べ物をしたりしている。常に消費者は外部情報と接する事で時間をポジティブに消費しようとし、一見無価値に見えるぼーっとする時間は喪失の危機に陥っている。

 

今、企業や消費者は「時間価値」という古くて新しい考え方に影響を受けて行動パターンを変えている。理由は2つ。

 

①時間のロングテール価値が高まっている
スマホなどの携帯可能な情報通信端末の急速な発展とSNSや位置情報を利用した様々なサービスの開発によって、数分〜10分という細切れの時間でできる生産的な行動が増え、細切れの時間の価値が上昇した。

 

②高齢化と都市化
高齢化に伴い国民全体で平均余命が少なくなり、時間の希少性が高まっている。都市化による付加価値型サービスの拡大により、労働時間が長時間化する事で、業務の効率化などの時間価値への意識が高まっている。

 

すきま時間の価値

ITの発達によって、短い時間でできる事が増えている。数分という「すきま時間」の価値が急激に上昇してきている。この十数年で生じているITの発達や社会の変化は、時間感覚を大きく変化させ、新たな時間価値の概念を提供している。

 

スマホなどの携帯情報端末の登場以前では、短い時間にはあまり注意が払われてこなかった。私達はある程度の「かたまり時間」を想定して、時間管理を行ってきた。しかし、「かたまり時間」が価値を持ち「すきま時間」が無価値であるという従来のパラダイムが大きく変わってきている。私達は、電車の待ち時間や、トイレ休憩などの数分間や数秒間で、スマホを使って友人や家族とコミュニケーションをしたり、来月の旅行の予約をしたり、仕事の取引先に挨拶メールを送ったり、様々な事が可能となった。

 

「かたまり時間」と「すきま時間」の価値格差の急激な縮小は、私達の日々の行動だけでなく、経済活動や企業活動にも大きな変化を与え始めている。産業構造が変わり、付加価値型のサービス業(クリエイティブ産業)が拡大し、生産性が上がる事によって、仕事の上で「かたまり時間」が必ずしも大きな価値を生むわけではなくなった。アイデアやデザインなどのクリエイティブな生産は時間に比例しないのだ。現在のビジネスパーソンにとって、考えるベきは「その時間が付加価値を生むのかどうか」という事である。

 

時間資本主義の到来

希少価値が高まっている時間を資本ととらえる時間資本主義の世界では、人々は「時間価値」という観点から、商品やサービスを選ぶようになる。私達は商品やサービスを購入する際、従来は当該商品やサービスの価格というシグナルを目安に購買行動を行ってきた。しかし、今後は、価格と需要・供給が決定される際に「時間価値」という新しいパラメーターが入ってくる事が予想される。価格とその物・サービスから得られる満足度が見合っているだけでなく、時間制約から抜け出せる付加価値を提供する物・サービスほど需要が高まり、価格は上がっていく。今後は、以下の2つの時間価値が商品選択に関わってくる。

 

①時間の効率化
その物やサービスを使う事によって時間が短縮でき、有意義な時間が生み出される節約時間価値。

②時間の快適化
その物やサービスを利用する事によって、有意義な時間が生み出される創造時間価値。

 

家事の時短グッズやニュースアプリ、コンビニなどは①の時間価値にあたる。スターバックスなどは②にあたる。様々な物・サービスに対し「これはどれだけの時間価値があるのか」と考えて選択するようになるのが、時間資本主義の特徴である。