シェアライフ 新しい社会の新しい生き方

発刊
2019年2月26日
ページ数
208ページ
読了目安
189分
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これからの幸福な生き方とは何か
人との「つながり」にこそ価値がある。大量のモノが溢れる社会において、本当に幸福につながる価値とは何かについて、シェアという観点から考える一冊。

シェアによって変わる価値観

「シェアリングエコノミー」という新たな概念が日本に普及し始めて3年。個人と個人がインターネットを通じて直接つながり、空いている部屋を宿泊場所として提供したり、自分の車や駐車場を貸したり、空いている時間でご近所さんの家事を手伝ったり、旅先に暮らす家にお邪魔して、その日の夕食をご馳走になることもできる。

今日、この「シェア」という考え方そのものが、消費スタイルの変化だけでなく、経済のあり方、社会のあり方、私たちの生き方そのものを変えようとしている。

私的所有や経済的な利益を追求する資本主義社会が限界を迎え、お金の価値や社会的ステータスなど、これまでの豊かさの物差しが揺らぐ時代になってきた中で、「個人と個人が共感や信頼を物差しとして、あらゆるものをシェアしながらつながりを前提に生きていく」という新しい生き方である。

「豊かさ」のパラダイムシフト

戦後、モノをたくさん生産して個人の消費を促してきたことによって、「モノの個別化」が進んだ。大家族が前提だった家庭も、核家族になり、単身世帯が急激に増えた。そして、競争社会の中で、持つ者と持たざる者が明確になっていき、分断が生まれた。
さらにコンビニやインターネットショッピングの発展に代表されるように、モノを入手する手段の効率化・自動化が進んだ。かつてあった物々交換のように、モノを介して人とのつながりを感じたり、人間らしい活動をすることは極めて難しくなった。結果、衣食住において、人とのつながりを感じることは難しくなり、モノの個別化の歴史が、つながりの希薄化、孤独の原因となった。

今日、たくさんのお金とモノを所有することが豊かさだと信じて進んできたのに、実際には「どんなに物質的に豊かでも、なかなか幸せにはなれない」と、多くの人が気づいてしまった。

これまではお金とキャリア、社会的なステータスやブランドが、社会的な価値に換算できる個人の資産と考えられてきた。しかし、お金の価値そのものが揺らぎ始めている今の時代において、「豊かな人」のロールモデルは「内面的にも満足し、他者とのつながりをもって信頼を得ている人」になっていく。

心の充足は、他者との関係性の中からしか生まれない。幸せは、つながりからしか生まれない。究極、人間の幸福とは、目に見えないもの。心で感じる共感や感動、愛する気持ち、そのほとんどは、人とのつながりからもたらされる。

個人主義が当たり前になった世の中だからこそ、他者との共感の接点や、誰かとのつながりを感じることが幸せだと感じる。この「私たち」という価値観こそが、シェアという思想の最も核となる部分である。シェアとは、これからの新しい社会の幸せにつながる定義であり、思想である。

シェアの本質

シェアすることで生まれる最も大きな価値は「つながり」である。つながりが、お金や社会的ステータスのような、これまで個人の資産とされてきた資本と同じ価値を持つ時代が来た。

現代は「安心のパラダイムシフト」とでもいうべき状況が起こっている。そんな先行き不透明な時代において、確かな安心を買える資本こそ、「つながり」である。何かあったら手を差し伸べてくれる人が思い浮かぶこと、そのようなつながりを増やしていくことが、これからの時代を生きる上での重要な資産になる。そして、その「つながりをどれだけ貯められるか」が、これからの新たな豊かさの指標になる。

信頼関係のあるつながりは、助け合いや分かち合い、同じ時間やモノの共有を積み重ねることによって生まれる。「自分がしてもらったら、してあげる」ということをいくつも重ねていくことで、確かな信頼を作り、つながり資本になっていく。