変化の激しい時代には多動力が求められる
多動的な人は既成の枠にとらわれない斬新な発想力、素早い決断力、ダイナミックな行動力、極端な集中力が特徴的にみられる。この思考特性、行動特性が、すべてのビジネスパーソンに必要だと盛んに言われている。
先が見えず、頻繁にインパクトのある脅威に見舞われ、確かな答えも存在しない。そんなビジネス環境下では、これまで重視されてきた「論理的思考」だけで競争に勝つことは難しい。必要なのは「変化や多様性に対する柔軟な対応力」「直観、感性を重視した右脳的思考」「膨大な情報の中に埋もれない、斬新な発想力」「スピード」だ。
多動力は生まれつきの特性だが、小さな習慣を日常に取り入れることで、誰でも身につけることができる。
すぐにやる習慣を身につける
現在は世の中の変化のスピードが凄まじい。新しい技術は続々と開発され、人々のライフスタイルは目まぐるしく変化し、志向は多様化しているので、顧客のニーズやウォンツを把握することさえ難しい。
そんな先が見えない状況で、指をくわえて市場を見守るほどナンセンスなことはない。今は前例も正解もない「やってみなければわからない時代」だ。とにかく動き出すことが重要になる。慎重なプランは必要ない。一歩踏み出すことを不安に思って躊躇したり、面倒くさがっている場合でもない。
「今、やろう」「まず、やってみよう」を口癖にして、まずは日常のあらゆる行動について、速やかにスタートする習慣を身につけるといい。スタートするハードルを下げるには、好きなこと、ラクなことから始めるようにするのも効果的である。
一見、無駄なことが後に実を結ぶ
多動な人は活動量が多く、その中には一見、無駄に思えるようなこともたくさんある。しかし、無駄なことはないし、無駄と思っているのは、その価値に自分が気づいていないだけだ。そういった無駄なこと同士がつながって、新たな気づきや発想をもたらしてくれることは多い。小さな情報や知識がつながって、一瞬で新しい仕組みを着想することもある。
この能力は「直観」と呼ばれている。「直観」は、無意識の領域にある知識や経験を裏付けにした、瞬間的な理解力だ。この能力を豊かにすれば、リーダーに必要な意思決定力と発想力を格段に高めることができる。この現象を「コネクティング・ドット(点と点をつなぐ)」という言葉で表したのが、スティーブ・ジョブズだ。彼は「今の選択や判断が正しいかどうかはわからない。後になって振り返った時に、点と点がつながっていることがわかる」と語っている。
点は行動の結果であり、行動しない限り生まれない。だから無駄に思えることにどんどん手を出し、たくさんの「ドット」を収集すること。
とりあえずやってみる
「すぐやる」を意識して行動し始めるタイミングを早くしたら、行動そのものもスピーディに行うことが大切だ。VUCAの時代に合わせて新たに提唱されているのがPDCAの進化版「OODAループ思考」だ。これはPDCAより、さらに意志決定と行動のプロセスを迅速にする。4つのステップは次の通り。
O(観察)→O(状況把握)→D(意思決定)→A(行動)、そしてプロセス全体を振り返る「ループ」を行う。OODAループは「状況を見て、とりあえずやってみる」というスタイルになっている。このやり方をとる以上、失敗はつきものだ。しかし、取り返しがつかない失敗などそうそうあるものではない。失敗して学んで、また走り出すことが大切である。
リスクをできる限り回避・低減した完璧なプランを立てて実行するのではなく、失敗することを前提にして、最小実行計画を策定する。それを次々と実行していくことで失敗から学び、改善していく。知識・技術・ノウハウが多く得られるし、結果的に早くゴールに到達することができる。
不安な時こそ、行動する
人は誰しも不安なことを避けたいものだ。不安な環境下でビジネスを行わなくてはならない時や、新しい挑戦の機会をつかんだ時に、つい「やらない理由探し」をしてしまう。トップやリーダーにそういう傾向があると、組織の成長をストップさせてしまう。
「やらない理由」「やらない言い訳」を探すのではなく、「動く理由」「動ける方法」を考えることに頭を使う。これをどんなに厳しい環境に陥っても貫く。