求職者の変化
インターネット登場後にミレニアル世代を中心として求職者に起こった変化は次の3つである。
- 検索スキルの向上が仕事探しにも影響を及ぼすようになった
- SNSの活用で情報を引き寄せるようになった
- ライスワークからライフワークへと仕事に対する意識が変わった
ミレニアル世代の多くは、金銭的な報酬のために働くライスワークではなく、より良い人生のためのライフワークを求めて仕事を探し、企業を選ぶ傾向が強くなっている。企業に対しては次の点を重視している。
- その会社に入ってスキルアップ・キャリアアップできるか
- 自分のワークライフバランスを実現できる環境が整っているか
- 自分が働きやすい良好な人間関係が実現できるか
オウンドメディアリクルーティングとは
今後、企業が求める人材を採用するためのポイントは、企業が主体的に情報を発信し、その情報を求職者へ正確に届けることである。それを実現するのが企業のオウンドメディアを活用したリクルーティング活動「オウンドメディアリクルーティング(OMR)」である。
OMRにおける情報発信の軸は次の2つである。
①ジョブディスクリプション(職務記述書)
「仕事の役割」と「必要な能力」を言語化したもの。ジョブディスクリプションは、自社が求める人材に即してより詳しく情報を発信する。具体的には、次のような項目から成り立つ。
- 職務内容
- 職務の目的・意義
- 目標
- 責任
- 権限の範囲
- チーム・関係する部署
- 必要とされる技術・知識
- パーソナリティ
- 資格
- 経験
ジョブディスクリプションを精緻化することで、その募集職種に対して求職者が「自分が適任かそうでないか」を判断しやすくなるため、結果的にマッチング精度の向上も図ることができる。
②シェアードバリューコンテンツ
企業理念や社風、環境や職場の雰囲気など「自社の価値や魅力を求職者との間でシェアするためのコンテンツ。シェアードバリューコンテンツは、企業の理念や文化、社風、環境や職場の雰囲気をオープンにすることで、求職者の興味関心を喚起したり、価値観やカルチャーの点でのミスマッチを軽減したりすることにつながる。
- パーパスコンテンツ:企業理念・企業の社会的な存在意義を発信
パーパスを掲げた経緯や実現に向けてどのような活動を行なっているのか、それが社会にどのような影響を与えているのかなどを、ストーリーとして伝える。 - カルチャーコンテンツ:企業文化・社風・行動様式・行動規範などを発信
自社が公式に開設しているSNSやブログなどを活用して社員の「声」や社内の日常を直接伝えたり、テキストだけでなく写真や動画などのビジュアルで発信したりすることで、リアルな働き方をイメージさせる。
オウンドメディアリクルーティングを導入するための6つのプロセス
①目的の設定
採用後に会社に定着してもらえない、面談時にカルチャーを理解していない人の応募が多いなど、自社が解決したい課題を明確にしてから目的を設定する。
- 自社の採用比率を高める
- 母集団形成(応募数を増やす)
- マッチング精度を高める
- 転職潜在層へアプローチする
- インナーブランディング
②ペルソナを活用し、求める人材を明確化する
「自社にとって活躍してもらえる人材」を理想的な候補者と仮定して、その人材像を文章化していく。ペルソナ作成時の検討項目は、次の5項目にそって記載するといい。
- 経歴:雇用状況/キャリアパス/希望勤務地/特長・性格
- 経験:これまでの職位/スキル/プロジェクト経験
- 目標:キャリア目標/会社に対して関心のある点
- モチベーション:転職への影響要因/大切だと感じること
- 行動:求職者が雇用機会を知る方法(媒体/SNS/デバイスなど)
③自社の魅力となる強みを整理
以下の4つのPの視点で求職者に訴求できる自社の魅力を整理していくとよい。
- Philosophy:理念・目的
- Profession:仕事・事業
- People:人材・風土
- Privilege:待遇・特権
④求職者の検索キーワードを意識したジョブディスクリプションを作成
採用したい人材が仕事探しをする際に入力するであろう検索キーワードを予測し、それにしっかり合致させることが、求職者とのミスマッチをなくすだけでなく、彼らの検索行動に応え、出会いの機会を増やすことにもつながる。
⑤自社の社会的な存在意義や魅力を伝えるシェアードバリューコンテンツの発信
コンテンツ作成時には、次の4つの基本姿勢を意識する。
- 求職者ファーストの視点:企業の伝えたいことよりも求職者が知りたいことを発信する
- ストーリーテリングを取り入れる:ただの情報ではなくストーリーとして伝える
- 透明化:良いことも悪いこともさらけ出す
- 意味報酬:金銭報酬ではなくやりがいや仕事の意義・働きやすさを訴求する
⑥PDCAを回していく
効果測定や分析した結果からOMRの施策を改善する場合、次の3つの視点で見直しを図る。
- ジョブディスクリプションを見直す
- シェアードバリューコンテンツを見直す
- 戦略を見直す