スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術

発刊
2015年6月24日
ページ数
320ページ
読了目安
467分
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チームの生産性を高める管理手法
納期遅れ・予算オーバーが当たり前だったソフトウェア開発の現場で、絶大な支持を集めるプロジェクト管理法「スクラム」の提唱者が、チームの仕事をいかに成功に導くかを紹介しています。

プロジェクトを進めながら修正していくシステム

昔から経営陣がプロジェクトに求めるものは2つ、管理と予測可能性だ。その結果、膨大な数の文書とグラフとチャートが生まれる。ミスなく、予算を超過せず、スケジュール通りに成果を収めるために。だが現実には、どんなプロジェクトも変化に柔軟に対応せず、チャートやグラフに書いた計画表の中にとどめようとすると、失敗するのが必然だ。

物事を進めるには2つのやり方がある。多額の予算を費やしながら何も生まない、従来のウォーターフォール型と、少ない人員と短い期間で、より質の高いものを低コストで多く提供できる「スクラム」だ。スクラムは創造性と不確実性を前提にする。スクラムの組み立ては学習プロセスを軸にしていて、自分達が何を生み出したか、それをどう生み出したかをチーム自らが評価する仕組みになっている。

スクラムの基本的な考え方は、プロジェクトを立ち上げたら、時々、自分達は正しい方向へ向かっているのか、顧客の要望に合っているのか、定期的に確認してみようというものだ。さらに、今している事をもっと改善する方法がないかを検証する。

 

スクラムの実践方法

①プロダクトオーナーを決める
これから何をするか、達成するかのビジョンを明確にするプロダクトオーナーを決める。

 

②チームを作る
チームはプロダクトオーナーのビジョンを理解し、それを実際に形にするために必要なスキルをすべて備えていなくてはならない。チームは少人数で、基本的に3〜9人とする。

 

③スクラムマスターを決める
スクラムマスターは、スクラムのフレームワークを通じてチームのメンバーを導き、仕事を滞らせる原因になるものを取り除く手助けをする。

 

④プロダクトバックログを作成し、優先順位を決める
先のビジョンを実現するために必要な作業や作るべきものをリストにする。プロダクトバックログは常に「チームが実行する可能性のある全タスクを優先順に並べたもの」を表す唯一のリストになる。プロダクトオーナーはプロジェクトに関わるステークホルダーとチームの両者と話し合い、顧客の希望と何が実現可能かの双方を考慮して、優先順位を決定する。

 

⑤プロダクトバックログを整理し見積もる
プロダクトバックログにあるタスクを実際に行う人がそれぞれの仕事量を見積もる。見積もる際には、他と比較した相対的なサイズで見積もるのが良い。

 

⑥スプリント計画を立てる
スプリントの長さは必ず一定の期間に決め、最長1ヶ月とする。バックログの項目から、スプリントでどれだけ完了できるかを予測して遂行する。

 

⑦デイリースタンドアップ
毎日決まった時間に15分以内で、チームとスクラムマスターが集まり、メンバーに3つの質問をしていく。「昨日何をしたか」「今日何をするか」「チームの妨げになっている事は何か」。

 

⑧スプリントレビュー
スプリントの間に達成した成果を見せる。

竹内 弘高

⑨スプリントレトロスペクティブ
前のスプリントで達成した事を発表したら、うまくいった点、次のスプリントで改善できる点は何かをチームで話し合う。

 

期間ごとに仕事を見積もる

スクラムでは、決められた期間の中で達成するべき目標を期間ごとに立てていく。各サイクルの最後には完成した機能を備えた成果物を出す。この進め方では、開発チームは仕事の成果に対してすぐにフィードバックを得られる。仕事の方向性は合っているかなどを検討できる。このサイクルを「スプリント」と呼ぶ。各サイクルの最初にはスプリントの計画を立てるミーティングを行う。2週間なら2週間でどれだけの仕事ができるかをチームで話し合う。プロジェクトに必要なタスクを優先順位で並べたリストから、この中からどれだけ完成させるかを決めていく。

 

スプリントの長さは常に一定にする。仕事のリズムを確立して、一定の期間の中でどれだけのタスクをこなせるかを把握する。個々のスプリントで大切な原則は、いったん何を達成するかを決めて合意したらタスクの変更はしない事だ。スプリントの最後にはチームが集まり、期間中に完成した仕事を共有し、進捗を把握する。そして、自分達がどの程度のスピードでこなせるかという基準(速さ)を知る。

 

チーム内の情報共有で問題解決を早期に図る

スクラムでは毎日15分以内のミーティングを、チーム全員で行い、次の3点を問いかける。

①昨日何をしたか
②今日何をするか
③チームの妨げになっている事は何か

目的は今のスプリントの現状をチーム全員が把握する事にある。メンバーが共有している情報が多いほど、チームのスピードは上がる。問題があった時に自分達で解決に導くきっかけになるからだ。1人のメンバーに問題があれば、皆が一緒に考え、助け合って速やかに解決するように努める。

 

ストーリーでチームの仕事が速くなる

やるべき仕事をリストアップする時、各項目をただ羅列してしまいがちだ。しかし、全体から部分をばらばらに抜き出し、背景情報を無視して検討しようとすると問題が生じる。人間は背景があってこそ理解できる。タスクの詳細を詰めていく時に、まず考えるべきは「このタスクは誰のための仕事か」という点だ。次に「このタスクで何を達成したいのか」を考える。最後に「なぜこれを必要としているのか」を考える。ストーリーを書く時に大切なのが次の2つの問いかけである。

 

①ストーリーが準備できているか
よく書けているストーリーは「単独で実行可能である」「変更の余地がある」「価値がある」「規模を把握できる」「小さい」「テスト可能である」の6つを満たす。

 

②完了したかどうかをどう判断するか
何の条件を満たしどのテストをクリアすれば完了とみなすのか。

ストーリーが真に準備できていればチームの仕事の速さは倍になる。さらにストーリーを完了できていると、そこからさらに2倍速くなる。スクラムでは、こうしたプランニングをスプリントごとに必ず行う。