世界のフラット化
世界のフラット化は、グローバリゼーションの質的な変化として捉えることができる。コロンブスが世界周航に乗り出し、「国のグローバル化」がもたらされた1492年〜1800年頃までを第一段階と捉えるならば、「多国籍企業のグローバル化」が顕著にみられる1800年〜2000年頃までが第二段階に該当する。
第一・第二段階ともに、世界経済の牽引力は欧米の個人やビジネスであった。そして21世紀初頭からの動きは、「個人のグローバル化」であり第三段階に入ったと言うことができる。
第三段階において最も重要な事は、「競技場が均された」ことであり、この現象を「フラット化」と表現する。競技場が均されたことの象徴として、インド・中国への末端作業のアウトソーシングが代表的な事例である。
フラット化の要因
世界にフラット化をもたらした要因は、以下の3点が収束した結果として説明することができる。
第一の要因は、パソコン・光ファイバー・ワークフロー╱ソフトウエアの発達という3点のプラットフォームが発達し、新たな競技場が誕生したことである。これらIT技術の飛躍的な発達は、フラット化におけるステロイド的役割を果たしている。
第二の要因として、これらプラットフォームを水平に利用する環境が整ったことが挙げられる。インターネットの普及により場所を問わず共同作業ができるIT技術が発展した。
それに加え、アウトソーシング・オフショアリング・インソーシングなどと呼ばれる経営資源の地理的分散により、企業のビジネスモデルが一新された。我々が眠っている間に、組織は水平な共同作業に適した構造へと変革している。
ベルリンの壁が崩壊する以前は、北米・ヨーロッパ西部・日本と東アジアが3大通商圏であり、閉鎖的経済であった中国・インド・ロシア・東ヨーロッパ・ラテンアメリカ・中央アジアに散りばめられる大多数の人々が、垂直なヒエラルキー色の強い政治・経済構造の中で暮らしていた。世界が冷戦の終結と創造性の新時代に向かったことにより、それまで競技場から締め出されていた大多数の個人が等しく参入することが可能となった。これが第三の要因である。
新たな競技場に、新たな人が収束し、水平な共同作業のためのプロセスと慣わしを開発する。この「3重の収束」が世界のフラット化を加速させ続けている。
しかしながら、このような変化は危機感を抱かせるものでもある。フラットな世界では資本の全体最適がもたらされる反面、必ずしもアメリカの労働者が利益を得ることはできないだろう。
次世代のイノベーションが世界各地から創出する状況下では、ホワイトカラーの仕事までもがデジタル化され、地理的分散の対象となるためである。