優秀なエンジニアを集める
ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンはグーグルをいくつかのシンプルな原則に基づいて経営していたが、そのうち最も重要なのが「ユーザーを中心に考えること」だった。最高のサービスを生み出せば、お金は後からついてくると信じていたのだ。そのための戦略も、同じようにシンプルなものだった。優秀なエンジニアをできるだけたくさん採用し、自由を与えるのだ。グーグルが成功し、壮大な野望を遂げるためには、とびきり優秀なエンジニアを惹き付け、引っ張っていくしかないと感じていたからだ。実際、エンジニア以外には興味もなかった。今でも従業員の半分以上はエンジニアでなければならない、というのが大原則である。
経営方針も同じようにシンプルだった。従業員には大きな自由を与え、コミュニケーションを通じて全員がおおよそ同じ方向に進むようにしたのだ。二人はインターネットの重要性と検索の力に対する強烈な信念があり、それを社内のあちこちに巣食う小規模なエンジニアチームとのインフォーマルなミーティングや、何でも議題にしていい全社集会の場で伝えた。
プロダクトを最優先する
グーグルが最も重視していたのは、どのようにユーザー中心主義を貫き、最高のプラットフォームとプロダクトを構築するかだ。グーグルが成功した最大の理由の1つは、2003年に取締役会に提出した「事業計画」が、全く計画らしくなかった事にある。財務予想や収入源に関する議論は一切なかった。ユーザー、広告主、あるいはパートナー企業が何を望んでいるか、それが市場セグメントにどのように当てはまるかといった市場調査も行わなかった。何をいつまでにつくるかを詳細に記した製品ロードマップもなかった。予算もなし。取締役会や経営陣が進捗状況を確認するための目標やマイルストーンといったものもない。当時、経営戦術についてはっきりしていたのは、私達が20世紀に学んだ事のほとんどは間違っており、それを根本から見直すべき時期が来ているという事だけだった。
最高の人材を惹き付ける方法
今や企業の成功に最も重要な要素はプロダクトの優位性になった。成功している企業の際立った特色は、最高のプロダクトを生み出し続ける能力だ。それを手にする唯一の道は、スマート・クリエイティブ(実行力に優れ、コンセプトを考えるだけでなく、プロダクトをつくる人間)を惹き付け、彼らがとてつもない偉業を成し遂げられるような環境をつくり出す事だ。最高のスマート・クリエイティブを惹き付ける方法は次のステップを踏む。
①企業文化
成功する会社とそうでない会社の違いは、従業員が企業理念を信じているかどうかにある。企業を立ち上げる時には。最初にどんな文化を作りたいか考え、明確にしておく方が賢明だ。一番いい方法は、会社の信条を理解し、強い思い入れを持っている社員に聞く事だ。
組織はフラットに保つべきだ。スマート・クリエイティブがフラットな組織を望むのは、トップの近くにいたいためではなく、仕事をやり遂げたいためで、それには意思決定者と直接折衝する必要があるためだ。グーグルではマネジャーは最低7人の直属の部下を持つ事とされていた。直属の部下が多いと、マネジャーによる監督は抑えられ、従業員は大きな自由を手に入れる。
②戦略
スマート・クリエイティブは「やっているうちにわかるだろう」という考え方を好む。彼らはすべての答えが揃っていると称する計画は信頼せず、答えが揃っていなくても、正しい基礎に基づく計画に飛びつく。グーグルでは創設以来、戦略を文書化しようとした者はいなかった。基礎さえ示せば、後はグーグラー自身が何をすべきか見出すだろうと考えた。
③採用
採用候補者には、情熱、知力、学習し続けるマインドセットが欠かせない。常にずば抜けて優秀な人材が集まってくる文化を醸成する第一歩は、候補者を発掘するのは全社員の仕事であると会社に浸透させる事である。