人材ファーストに移行せよ
今日の経営幹部の大半は、人材こそが競争優位を生み出すことを理解しているが、企業が使っている人事制度は1世代前の遺産である。企業は「人材ファースト」を実践する新たなイメージを作り上げ、CEO自らが人材の総責任者とならなければならない。資金配分を行うのと同様に、人材を適切な場所に配置しなければならない。社員のことを知り、社員それぞれが可能な限り最大の価値を生み出せるように権限を与える組織を作らなければならない。
自社に最高の人材を引きつけたいのであれば、社員に発言を許すだけでなく、積極的に発言するよう促さなければならない。つまり人材配置が成功するか否かは、社員個人の興味、野心、イノベーションが常に会社の戦略と未来を描くような環境をつくれるかどうかによって決まってくる。
人材ファーストの組織変革3つのツール
人材ファースト組織に変革するために、CEOは3つのツールを駆使する必要がある。
①G3を構築する
CEO、CFO、CHROから構成されるグループ。CHROの地位を引き上げ、CFOとCHROが強い信頼関係を築くように支援し、主要な課題の解決に取り組む権限を与える。
②クリティカル2%を特定し、育てる
優れたバリュークリエイターを会社全体を徹底的に探して特定し、彼らのことを理解する。これが社内で非常に大きな価値を生み出す人材のリストとなる。
③人事をデジタル化する
データに基づくHRテクノロジーを導入する。有能な人材の発掘、採用、新人研修、トレーニング、リテンション、業績評価、給与などの活用を効率化し効果的に行うためにHRアナリティクスを活用する。
取締役会から最大限の支援を引き出す4つのステップ
CEOは人材こそが価値を生み出す源泉であること、そのために人材に関する問題は最重要な議題であることを取締役会に理解させなければならない。これには根本的な意識の改革が必要である。取締役会の全面的な協力が得られれば、クリティカル2%人材の採用、リテンション、モチベーションの向上が容易になる。
①CHROの役割を再認識してもらう
②報酬委員会の名称を人材・報奨委員会に変更し、人材の戦略的配置を重視する
③取締役会の優先順位を再考し、CEOサクセッション(後任者)、クリティカル2%人材の充足、多様性の議題を毎回検討する
④自社について語る人材ファーストの「ストーリー」を作り上げる取り組みについても取締役会に支援してくれるよう求める
人材ファーストを実践する最先端企業に共通する3つの特徴
人材ファーストを実践する最先端企業には「アジリティ」「プラットフォームとネットワーク」「意義」の3つすべてを取り入れた構造が欠かせない。
①アジリティ(予測のつかないトレンドに素早く適応する能力)を高める組織を設計する
②階層ではなくプラットフォームを考え、固定された縦のヒエラルキーを、人材の配置を決めるマーケットプレイスに置き換える。
④仕事の意義を明確にする
人事部門を競争優位の源泉にする
今なお多くの企業では、経営陣も社員も、人事部門は福利厚生、給与支払、入社オリエンテーションや研修などの事務管理を行う地味な裏方だと考えている。事務管理は必要だが、それが大きな付加価値を生むことはない。
人事部門の再構築はトップから始まる。CEOはビジネスパートナーとして全幅の信頼を置き尊敬するCHROと、手を携えて取り組まなければならない。