ミシュラン 三つ星と世界戦略

発刊
2011年10月1日
ページ数
314ページ
読了目安
437分
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ミシュランに詳しくなる
「グルメのバイブル」として圧倒的な影響力を誇ってきたミシュランガイドの権威が、「食の国際化」の中で揺らぎ始めている。近年、アメリカや日本、香港とガイドを世界で発刊しているのはなぜか?ミシュランの世界戦略について考察している。
覆面調査員の実態など、ミシュランについて詳しく学べる1冊。

ミシュランの役割

料理人にとって、ミシュランの星は仕事の指標である。ミシュランはフランス全土をくまなく調査し、レストランを最高三つの星で格付けする。どの店が今評価されているか、料理人が学ぶべき店はどこか、読み取ることができる。

星は、店に利益をもたらす存在でもある。星を獲得すると来店客は大きく増える。

ミシュランは地方や田舎で有能な人材を発掘し、その仕事に正当な評価を与えることを、大きな目的に据えてきた。料理人の側はそれを励みとし、より一層高いレベルに達しようと努力した。料理人とミシュランは手を携え、フランス料理の発展に寄与してきた。

 

ガイドとタイヤ

ミシュランガイドは1900年、ドライバーのための無料冊子として発刊された。当時は車が普及し始めたころであり、モータリゼーションの到来に伴ってホテルやレストランも発達した。パリの市民たちは、各地方に出かけ、郷土料理を食べ歩くのがブームとなった。
ドライブの普及は、タイヤメーカーであるミシュランの事業を拡大させた。タイヤとガイドと美食は、互いに深く結び付いていた。

ミシュランの関係者は皆「ガイドはタイヤのためにある」と言う。ミシュランガイドなどの出版物の売上は、全体の1%程度に過ぎないという。99%がタイヤの売上である。
人々がタイヤを購入するのはせいぜい2〜3年に一度だけである。その間、消費者とミシュランをつないでいるのがガイドなのである。

 

変貌するガイド

近年、ミシュランガイドの傾向が変化してきている。ミシュランは経営の近代化を目指すと共に、ガイドの近代化も図ろうとしている。従来フランスの枠組みにとどまっていたガイドを国際化し、閉鎖的だったイメージを開かれたものにしようとしている。

最初の目標となったのがニューヨークであった。米国はタイヤメーカーにとって最も重要な市場でもある。しかし、ミシュランにとってネックになったのが和食だったと想像できる。ニューヨークには本格的な和食の店が少なくない。これらを評価するには従来の基準とセンスだけでは難しい。

「星は皿の中にある」、星は料理だけで判断され、サービスなどの快適さを反映しない。よって店の格調や設備は関係しない。

ミシュランはこれまでのフランスのレストラン文化に変わって、皿の中に特化した非フランス文化を評価の指標に据えようとしている。料理人が一人で切り盛りするような小さな店で、三つ星に匹敵する料理が出てくることはフランスではあり得ない。しかし、ニューヨークや日本ではあり得る。

ミシュランは、ガイドを世界展開するために、一枚脱皮する必要があった。ミシュランガイドはネット情報の拡大などに押され、売れ行きが落ちている。このような状況で、逆に外に攻めることで生き残りを図ろうとしているのである。