脳を活性化させる手法「ライフキネティック」
脳内では脳細胞同士がつながり合い、ネットワークをつくって情報をやり取りしている。何かを習得するということは、そのためのネットワークを新たにつくることである。こうした脳が変化する特性を「神経可塑性」と呼び、脳内でドーパミンが放出されると、神経可塑性が促され、運動に関連する学習プロセスが始動する。そして、ドーパミンを放出させるには、「慣れていない動きを練習すること」と「やっと達成できたという気持ち」が最も重要となる。
脳内同士のつながりを増やし続けるためには、常に慣れていない新しい動きを練習していかなければならない。そのため、練習してその動きに慣れてしまったら、他の新しい動きに切り替えていく必要がある。こうした「慣れていないこと」を練習していく方法、脳を活性化させる手法として「ライフキネティック」は開発された。
ライフキネティックでは、簡単なエクササイズによって、脳内でまだ利用されていない領域を活動させていくことを目指している。ライフキネティックのエクササイズには、知覚(特に視覚)の能力と、素早く情報を処理して動きに反映させるための集中力が非常に求められる。
知覚 + 脳トレ + 動き = 能力の向上
ライフキネティックでは、この3つの要素を使って、脳内のネットワークを改善し、それにより脳のあらゆる領域を一層活用させることを目指している。
ライフキネティックのエクササイズ
ライフキネティックでは、歩く、飛ぶ、腕を回すなどの約100の単純な動きを「基本的な動き」と定義している。ただ、「基本的な動き」が単純であればあるほど、知覚と認知の課題は複雑になってくる。なぜなら、ライフキネティックでは、脳に大変な思いをさせることで、脳の能力を高めようとしているからである。
レッスン1:基本的な動き
まずは、縄かひもで、床に直径2m以上の円をつくる。そして、本を開き、中身が読めるように身体の前で、その本を両手でしっかりと持っておく。
次に、円の上を後ろ向きに歩きながら、あるいは後ろ向きに片足で軽くジャンプしながら、本を読む。その時、本の中の名詞を1つおきに大きな声で読み上げる。
レッスン2:動きのチェンジ
レッスン1とは、歩く方向をチェンジする。本の中で、母音で始まる名詞が出てきたら、その名詞を大きな声で読み、その際に歩く方向をチェンジする。しかし、次に母音で始まる名詞が出てきた時は、歩く方向を変えない。これを繰り返していく。
レッスン3:動きの複合化
レッスン1と同じだが、「足が床につくたびに、本を持っていない手で、その床についた方の足の太ももを軽く叩く」というルールを付け加える。また、別のバージョンとして、母音が始まる名詞が出てきたら、その後は、床から上がっている方の足の太ももを手で軽く叩いていき、再び母音で始まる名詞が出てきたら、今度は床についた方の足の太ももを軽く叩いていく。
レッスン4:動きの円滑化
レッスン1と同じだが、本を片手で持ち、本を持っていない方の腕を回し続ける。腕を回す方向はどの方向でも構わない。さらに、母音で始まる名詞が出てきたら、歩く方向を替えたり、ジャンプする足を替えたりもするが、その間も腕を回し続ける。
ライフキネティックでは、4つのエクササイズを順番に行っていたら、進むたびに難易度が上がっていく。このようにして、脳に常に新しい挑戦をさせている。そのため、1つのエクササイズを10分以上続けることはない。
こうしたトレーニングは、1週間に60分間行うので十分だと研究で証明されている。但し、トレーニングは継続して行わなければ、その効果の一部は失われてしまう。