方向性をはっきりさせる
体力、気合、根性などの言葉に象徴される旧態依然とした「体育会的な」カルチャーのもとでは、多様な人材が活躍するダイバーシティは実現しにくく、働き方も変えられない。働く環境に魅力がない会社では、優秀な人材を採用することなど難しい。
会社を変える時、何よりも重要なことは、方向性をはっきりさせておくことである。そして、それを社員たちと共有する。どこに連れていくのかをしっかり理解してもらう。そのためにも、なりたい姿をしっかり描いておく必要がある。
「働きがいのある会社」、そして世の中から認められ、「選ばれる会社」になるという方向性を決め、『プロジェクト・プライド』を発足させた。改革にあたって、社員1人1人が持っている「プロフェッショナルとしての誇り」をもう一度定義し直して欲しいという思いがあった。長時間働いて、多くの社員が疲弊しながらお客様に価値を提供することが、本当の誇りなのか。
改革のフレームワーク
『プロジェクト・プライド』の推進にあたっては、組織改革のフレームワークを活用した。これは次の4つの象限に分かれる。
①方向性提示と効果測定(ハード×経営層)
まずはプロジェクトのリーダーが方向性をしっかり定めてメッセージを発信する。なりたい姿を設定し、社員に提示してコミュニケーションを図りながら、何を指標として見ていくのかを確定させ、それをもとに継続的にモニタリングしていく。
・徹底的な数値化を行い、各種KPIを設定、PDCAサイクルを構築
・経営トップがリーダーとなり、専門コンサルタントが参画
・働き方改革を強力に推進するプロジェクト体制の立ち上げ
・ビデオを効果的に用い「なりたい姿」を全社で共有
・浸透状況調査を、全社員へ四半期ごとに実施
・残業時間や有休取得率などをモニタリング
②リーダーのコミットメント(ソフト×経営層)
経営者だけでなく、執行役員や本部長クラスの現場のリーダーたちが責任をもって改革に取り組むよう、コミットメントを引き出す必要がある。そうすることで、課題と解決に向けた障壁を特定して、適切に対処することができる。
・9人の本部長が、各現場のヒアリングや定量調査に基づきプラン発表
・毎月経営会議にて「個人別労働時間の実施・予測レポート」を議論
・各本部長がプロジェクトや個人に対してアクション
③仕組み化・テクノロジー活用(ハード×現場)
色々な仕組みが働き方を邪魔するため、その仕組みを変えていかなければならない。『プロジェクト・プライド』では、1年強で人事制度を中心に約25の制度・仕組みを変え、新しい働き方を実現した。
・ハラスメント抑止に向けたルールの周知徹底、研修の拡充、社外窓口設置
・残業の適用ルールを厳格化、18時以降の会議原則禁止
・短時間勤務制度の導入、在宅勤務制度の全社展開
・生産性の高い社員に、より報いるための給与制度の改定
・プライドを実践している社員/プロジェクトの表彰
・働きやすい環境作りに向けた管理職研修の義務化
・生産性向上につながるツールやコツを提供
④文化・風土の定着化(ソフト×現場)
この段階で、リーダーから指示されなくても、自発的に働き方を変えていく土壌が整ってくる。文化や風土の改革のためには、イベントやキャンペーンなど、それを定着させる様々な取り組みをしなければならない。すなわち、新しい働き方や文化が風土として根付くまで続けることである。
・成功事例や社員の声などを定期的に発信、積極的な挨拶の励行を促進
・オフィスの壁一面を使った啓蒙メッセージの掲示
・部門ごとに働き方改革に関するディスカッションを実施
・定時退社奨励や有給休暇取得推進活動の実施