リクルートの すごい構“創”力 アイデアを事業に仕上げる9メソッド

発刊
2017年5月26日
ページ数
256ページ
読了目安
262分
推薦ポイント 10P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

リクルートはなぜ次々と新規事業を生み出せるのか
ボストンコンサルティンググループ代表が、リクルートの新規事業を作るための仕組みを分析し、紹介している一冊。

リクルートの最大の強み

リクルートの最大の強みは「リボンモデル」にある。これは、自社だけでなく産業構造全体を俯瞰した「リボンモデル」を使ってビジネスを設計する手法だ。

リボンモデルは、蝶ネクタイのような形をしている。左側の三角が、個人や一般の消費者、右側の三角が、企業や事業者で、両者をつなげる結び目がリクルートだ。左右両サイドの端では、まず個人や企業を「集め」、何らかの働きかけをすることで両者の行動を変化させて「動かし」、中央のマッチングポイントで「結びつける」ことでリクルートが収益を上げる。この結び目が大きければ大きいほど、マッチングの総量は大きくなる。結び目を最大化するためには、左右両端のリボンの幅を広げることに加え、マッチングのプロセスの途中で脱落する率を下げて、中央の結び目に至る際の減衰を抑えることが必要だ。

リクルートの役割は、左側の個人と右側の企業を両端でより多く集め、より確実に動かしてたくさん結びつける「ベストマッチング」の仕組みを提供することだと定義される。リクルートのビジネスは、採用・求人、住宅、結婚、旅行、飲食、美容など、ジャンルも多岐にわたり、一見何の共通点もないように見えるが、実はすべてリボンモデルで表現できる。

消費者の不満の解消だけではスケールしない

利用者を集めた人気商品・サービスになったのに、売上や利益が伸びずに撤退してしまった新規事業は「リボンの片側しか見ていなかったから」ということが非常に多い。ビジネスの視点が、自社と消費者という2者だけで閉じているのだ。こうした企業では、ビジネスのフォーカスがあくまでも、消費者の「不」の解消だけだ。産業構造全体が持つ「不」、社会が抱える「不」には思いが至らない。すると、ビジネスの設計が、既存の業界構造や固定概念ありきのものとなり、イノベーションを生み出すような新しいものは生まれない。

アイデアを事業に仕上げる9つのメソッド

リクルートのビジネスは、リボンモデルの構築に沿った3つのステージで表すことができ、各ステージで3つのメソッドが使われる。

●ステージ1「0→1」(ビジネスの種を発見する)
①不の発見
・あるべき社会の実現につながる、潜在的な「不」を探す
・「不」を生んでいる産業構造の暗黙のルールを突き止める
・「不」を解決するための、新たなお金の流れを見つけ出す

②テストマーケティング
・本当に人の心を動かす事業アイデアなのかを検証する
・顧客がお金を払ってでも解決したい課題なのかを検証する
・検証を段階的に設計し、規模を拡大しながら次へと進める

③New RING(インキュベーション)
・ボトムアップによる新規事業の起案を称賛する
・アイデアを事業へとブラッシュアップし、軌道に乗せる

●ステージ2「1→10前半」(勝ち筋を見つける)
④マネタイズ設計
・誰が、なぜ、いくらで、どの予算で、買ってくれるかを突き止める
・ユーザーの行動、顧客の売上、自社の活動を方程式でつなぎ込む
・市場を継続的に成長させることができる、お金の流れを作り出す

⑤価値KPI
・事業の価値を上げるカギとなる指標を、顧客の評価から探し出す
・価値KPIへの因果関係の高い、実際の行動を探り出す
・全員での高速なPDSによって、指標と行動の仮説を変更し続ける

⑥ぐるぐる図
・現場からの市場変化を経営へとつなぎ、縦の知恵を回す
・異なる役割の人材が並行して洞察を加え合い、横の知恵を回す
・現場に勝ち筋への兆しがなければ、潔く撤退の決断を下す

●ステージ3「1→10後半」(爆発的な拡大再生産を行う)
⑦価値マネ
・KPIによって目標の優先順位を絞り込み、意識と行動を集中させる
・PDSを日常の活動に組み込み、「なぜ」をマネジメントする

⑧型化とナレッジ共有
・成功事例を生み出した行動を分析し、「型化」して組織へ横展開する

⑨小さなS字を積み重ねる
・現場の情報からいち早く、成長の減速を捉え、次の一手へ進める