すべては受け入れるところから
監督としての仕事は、最善を尽くした結果だとしても批判の対象になり得るため、それに耐える覚悟がなければ監督はできない。結局、結果で示していくしかない。一番大切なことは、選手たちが日々、チーム内で競争しながら戦う中で、「やりきった」と思える状況をつくること。そのためには選手をよく見て、個性を受け入れ信じる、というシンプルなことを大切にしている。
教えるのではなく気づかせる
選手を成長させる指導者とは、ただ「教える」のではなく、指導を通じて選手にヒントを与え、「気づかせる」ことができる人。指導者が「こうしなさい」と言ってしまえば簡単だが、それでは考える力や本当の判断力は身につかない。
選手が一番成長するのは、自分自身の中で何かが「あ、変わった」と気づいた時である。多くの指導者は、丁寧に教え込んで、言い続けるうちにできるようになるという方法をとる。その方法もやることがあるが、まずは、その選手が自分で気づくようにアプローチしてみる。例えば、最初から正解を示さずに、練習で、強制的にそういう状況になるように仕向ける。
練習中は、いいプレーは積極的に褒め、周りが見えていなければ、プレーを止めて、「ここでは、こういうプレーの選択肢もあるよ」と、別の選択肢や視野を提示する。駆け引きがあまりにも単純なら「そのプレーだと相手にバレてるよ」と、相手に読まれていることを指摘して、そのプレーを「やめる」判断もあることを気づかせる。しかし、選手たちが「気づく」きっかけとして、やはり実戦に勝るものはない。選手は、厳しい試合に勝つと、自分の中の何かが変化して、「あ、変わった」という感覚を自覚できる。真剣勝負が選手を育てる。彼女たちが世界で1つでも多く真剣勝負をする場を増やし、「経験しなければ身につかない勝ち方に気づく」機会をつくることが、監督の重要な役割である。
当たり前を外す
どんなプレーもそつなくできる平均点の高い選手ばかりのチームよりも、凸凹な個性を持った選手たちが、それぞれの良さを引き出し合いながらよりプラスに転化するチームの方が大きく成長する可能性がある。お互いの長所・短所を理解し、「違いを受け入れる」ことは、チームに多様性をもたらすのである。
当たり前のことしか考えていない選手のプレーは、相手にバレてしまう。試合が膠着した理、いざという時に「お? そっちに行くんだ」とか「そんなことするの?」という、意外性のあるプレーが欲しくなる。他の人とは違う発想をして、チャレンジしようとする姿勢は大事にしてあげたい。
何事にも勝者をつくる
常勝チームに共通することの1つに、「勝ち癖」がある。「勝つことが当たり前」というメンタリティである。この勝ち癖を身につけるためには、勝ち続けるしかない。勝ったことのない組織が、そのメンタリティを手に入れるためには、小さな成功体験を重ねていくことが大切である。そのために重要なことは、常日頃からどれだけ負けず嫌いになれるか。負けず嫌いがたくさん揃っているチームは、相乗効果によって確実に強くなる。
練習の中でも、1つ1つ勝ちにこだわる習慣をつけるようにする。そうすることで、小さな成功体験が積み上がっていく。