これからの「善い企業」の条件

発刊
2026年3月17日
ページ数
359ページ
読了目安
515分
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ステークホルダー経営の進め方
あらゆるステークホルダーへの責任を重視する国際認証「B Corp」の概要を紹介している一冊。
21世紀の「善い企業」とは、ステークホルダー経営を行い、株主だけでなく顧客や従業員、環境などのあらゆるステークホルダーに対して、価値を提供する企業であるとし、その実践のための考え方が書かれています。

「B Corp」認証にのっとって、組織開発を進めることはステークホルダー経営につながるとし、そのために必要な知識が提供されています。

善い会社とは

ステークホルダーとは「会社の活動に影響を受けたり、影響を与えたりする、あらゆる関係者」を指す。株主以外のステークホルダーには、従業員や顧客はもちろん、地域社会の人々や未来世代の人々など、幅広い関係者が含まれ、公益そのものがステークホルダーであると捉えられる。

ステークホルダー資本主義は、シェアホルダー資本主義という概念と対比して語られる。株主へのリターンを最優先するシェアホルダー資本主義に対して、ステークホルダー資本主義においては、会社は株主以外の多様なステークホルダーに対しても十分に配慮する必要があると考える。

 

2019年あたりから、企業の間でも「株主だけではなく、すべてのステークホルダーが重要である」という認識が一気に広まった。21世紀の「善い会社」は、ステークホルダー資本主義を実践する会社であると位置付けられる。もっとも、シェアホルダー資本主義とステークホルダー資本主義は二者択一ということではない。少なくとも、長期に株を保有してくれる株主に持続的なリターンを提供するには、様々なステークホルダーに報いる経営が不可欠である。

 

価値連鎖をシステム思考で考える

ステークホルダー経営では、様々なステークホルダーがトレードオフの関係になりがちである。そのため、トレードオフではなく「価値連鎖」という考え方を軸に据える必要がある。1つのステークホルダーに価値を提供することが、それが他のステークホルダーにも価値を提供することにつながっていくような連鎖を構築していかなければならない。

 

トレードオフではなく価値連鎖で考えていくためには、システム思考の活用が有効である。システム思考とは、個々の事象に注目するのではなく、物事全体をシステムとして捉え、その構成要素の間の相互関係や相互作用に焦点を当てる。システム思考では「ループ図」というツールを用いて、要素同士の因果関係がそれほど明確ではなく、ある事柄が原因でもあり、同時に結果でもあるというような複雑な状況を捉える。

 

ステークホルダー経営の要諦は、各ステークホルダーのウィンを構築することだが、注意しなければならないのは「何が善い行いなのか」の基準はダイナミックに変化していくことである。ある時には善いとされていたことが、少し時間が経つと悪いとみなされるような事例は事欠かない。したがって「善い会社」を目指すのであれば、常に最新かつグローバルな基準で自社を点検することが必要不可欠である。

 

ステークホルダー経営を可視化する「B Corp」認証

ステークホルダー経営を可視化する方法の1つに「BIA(B Impact Assessment)」というアセスメントがある。BIAはアメリカに本部があるB Labという団体が実施しているもので、認証された企業は「B Corp」を名乗ることができる。数あるアセスメントの中で、BIAは国際的にもその有用性や厳格さが認められている。B Corpの「B」は「Benefit for All」を意味し、すべてのステークホルダーに利益をもたらすという、ステークホルダー経営そのものである。

ヨーロッパでは意識の高い消費者が多いこともあり、スーパーの商品陳列棚にB Corp認証企業の専用の棚を設置し、消費者にわかるようにB Corpのロゴを表示されているところがあったりする。2025年9月現在、100カ国以上で9859社がB Corp認証を取得しており、その内63社が日本の会社である。

 

アセスメントは、5つの分野で構成されており、平均200問以上の設問に回答し、点数化していく。B Corpの認証を得るためには、有料の審査が必要である。

 

①従業員

  1. 経済的な保証:すべての従業員に公平な経済的保証を提供すること
  2. 心身の健康と安全:すべての従業員の多様化するライフイベントに備えること
  3. キャリア開発:自発性を核に能力開発機会を提供すること
  4. エンゲージメント:強くて健全な企業風土を醸成すること

 

②コミュニティ

  1. ダイバーシティ:DEIの模範となり社会変革を牽引する
  2. 経済的インパクト:弱い立場の人々に仕事を提供する
  3. サプライチェーン・マネジメント:遠くの人権問題に影響を及ぼす
  4. 企業市民活動:社会奉仕活動を当たり前にする

 

③環境

  1. 環境マネジメント:環境に配慮したマネジメント手法
  2. 大気と気候:脱炭素とエネルギー使用削減
  3. 水資源:水資源の確保
  4. 土地と生態系:循環型経済の追求

 

④顧客

  1. 製品開発:顧客ニーズに即した製品・サービスを開発する
  2. 品質管理:品質の管理・保証を徹底する
  3. 顧客満足:顧客満足度をトラッキングする
  4. アウトカムの把握:アウトカムの把握はポジティブな面もネガティブな面も

 

⑤ガバナンス

  1. 会社のミッションと実効性:使命の明確化と実効性を担保する
  2. 倫理と透明性:正しき行動のための監督機能を充実させる
  3. ミッションロック:ミッションを変えられないようにする