事業のグローバル化と共に人事を変える
人事のグローバル化に求められるのは、日本企業で行われてきた人事施策を「人材の多様化」「人材需給のグローバル化」「人材の流動化」という3つの変化に対応したものにいわばバージョンアップしていく作業であり、何か全く新しいことをゼロからスタートさせるといったことではない。
確かに日本企業は、海外企業と比べて人事のグローバル化に大きな後れがある。しかし、日本企業が持つ強みを生かし、先行して取り組んだ海外企業から学ぶことで、日本企業のグローバル人事は、独自の優れた人事戦略となり得る。
基本的にグローバル人事とは、事業のグローバル化に伴う「人材の変化」に人事のやり方を対応させる目的で行うものである。グローバル化に伴う人材の変化と課題には次の3つがある。
①人材の多様化
②人材需給のグローバル化
③人材の流動化
まずは自社がどのようなやり方で事業のグローバル展開を進めていこうとしているのかを把握し、その方向性や事業戦略に合った人事のやり方を選択し、進めていくことが大切である。
グローバル人事の3段階モデル
海外で事業展開している企業には、組織形態や事業の状況や特性、グローバル展開の方向性などにより、3つのグローバル人事の段階がある。
①セントラル人事
本国、本社の人材を海外でも活躍できるよう育成して海外の支社や現地法人に派遣し、主に現地企業との合弁や協業によってマーケットに食い込み、現地のニーズに応えた製品、サービスを提供していくモデル。
②マルチナショナル人事
現地法人の社員はもちろん、トップにも現地で採用、育成した人材を登用し、必要な権限も委譲し、経営のほとんどを現地に任せる形。
③インターナショナル人事
国をまたいで責任者を異動させるなど、国籍や所属にかかわらず、ポジションの要件に応じて最適な人材を配置する。
必ずしもこの順に展開していくものではない。実際には、これらのモデルの内どれかを当てはめる企業よりも、事業展開のステージや特性に合わせて、事業ごとに使い分けることがほとんどである。
どのモデルを目指すべきかは、その事業の特徴や段階、事業環境や今後の方向性といった、事業の在り方によって自ずと決まる。グローバル人事で何よりも大切なのは、事業戦略との整合性である。
日本の人事が変えるべき3つのポイント
日本企業がグローバル人事に挑戦する際、変えざるを得ない人事の考え方が3つある。
①結果人事→計画人事
目指すべき人材の配置計画に基づいて、必要な価値にあった人材の育成を計画的に行う必要がある。
②主観人事→客観人事
様々な国や地域の多種多様な人材を評価するため、客観的な共通指標に基づいた評価を行う必要がある。
③密室人事→透明人事
評価や処遇の決定プロセスを明らかにするなど、公正なルールに基づいた透明性の高い人事が求められる。
グローバル人事で行うこと
①人材の需給をグローバルで把握すること:経営と人事の一体化重要なのが、事業計画に沿って未来の人材の需要、ニーズが把握できているかどうか。グローバル人事を進めるにあたっては、経営層と情報交換をする機会を頻繁に持つなど、経営との距離を近づけて、人材需要、ニーズを把握することが不可欠である。
②計画的に人材を育成すること:事業戦略のブレを人材戦力で埋める
どれほど優秀な人材でも、経験を積む中で学び育っていく。だからこそ、未来の可能性とリスクに備え、計画的に人材戦力を整える、育成することが求められる。
③グローバルで人材を組織として機能させること:組織開発・組織活性化
最終的には、たった一人のリーダーに依存するのではなく、価値感や理念がしっかりと全社員に共有されていて、ルールで縛る必要もなく、それぞれが組織内で役割を持ち、リーダーシップを持って動いていける、組織を作る。