ファシリテーター型リーダーシップとは
ファシリテーター型のリーダーシップ・スタイルとは、組織に根ざす課題をリーダーひとりだけの力ではなく、メンバーの力を引き出し、事が運ぶように促すことを言う。
ファシリテーター型リーダーシップを発揮するには、人の部位になぞらえて、以下の6つの機能の実践を伴う。
①耳:聴く
メンバーに力を与え、相互作用を生み出すために、話す前に聴く
②目:観る
様々な次元、角度、距離感で観ることで、行き詰まりを突破する
③口:問う/語る
問いかけ、ストーリーを語り理屈を超え感情を揺さぶる
④手:手と手をつなぐ
境界線を越えたつながりの土壌を耕し組織を進化させる
⑤足:踏み込む
踏み込んだフィードバックで、本音が行き交う組織を作る
⑥頭:考える
過去の成功体験を健全に疑い、今ここに立ち止まり、考え抜く
ファシリテーター型リーダーシップの6つの機能
①耳:聴く人には、根源的に自分の考えや価値観、存在を認めて欲しいという欲求がある。リーダーが心を開き、メンバーの話を丁寧に聴くことができれば、メンバーもリーダーに心を開く。双方の心が開かれたチームには活発なコミュニケーションがあり、常にアイデアの生成が起こる。
リーダーは聴く力を高めることでメンバーの承認欲求を満たし、組織への帰属意識や貢献欲求を高めることを忘れてはいけない。良い聴き手になる秘訣は、相手のマイクを奪わない、自分が舞台に上がらないこと。
②目:観る
リーダーは見るのではなく、観る。リーダーは深層に根ざす不変の本質を見抜く眼力を持つことが必要である。そのためには、立場の違いによって生じる視界の差を認識し、偏見を外し、時にメンタルモデルの変換も促す。また、根底にある共通の願いで互いがつながれるような場や、全員で同じビジョンを観る対話の場を創る。そして変化の兆しを見逃さず、先手を打つことを怠らない。
相手とコミュニケーションを図る際には、自分や相手が今、どの視界、どの視座に立っているのかを踏まえた上で働きかけることが肝要である。
③口:問う/語る
状況が刻一刻と変わり、今日の正解が明日には通用しなくなっている現在、リーダーひとりが答えを出すのではなく、優れた問いを立て、周囲に問いかけ、対話し、関係者全員で最適解を作っていくことが求められる。問いかけには4つの方法がある。
1.調査的問いかけ:いつ、どこで、何がの疑問詞を使って情報収集する
2.提案的問いかけ:提案をする
3.探究的問いかけ:時間、空間、立場、目的、感情など多角的に問う
4.共創的問いかけ:主語を私たちに置き換える
④手:手と手をつなぐ
条件反射的に目の前にある事象から問題解決を急ぐのではなく、「つながり」で捉え、真因を発見しようとする。また、変革を進める際に抵抗勢力となる反対者を排除せず、同志としてつながり、変革の実効性を高めたり、自身の人脈を広げる努力を怠らない。
⑤足:踏み込む
リーダーは、事なかれの放任主義でメンバーにすべてを委ねるのではなく、停滞や混乱がある際には、摩擦を恐れずに「ダメ出しフィードバック」を行ったり、よい結果が生まれているのであれば、さらに強化を促すために「ポジティブフィードバック」を行う必要がある。
●ダメ出しフィードバックの黄金則
1.具体的事実・行動を確認する
2.自分の気持ちを伝える
3.望ましい行動・提案を行う
4.改善や克服の結果、得られる価値を伝える
5.目的地を確認し、誠実さを持って関わる
⑥頭:考える
優れたリーダーは、従来の「やり方」「成功体験」を健全に疑い、自身も常に変化し続ける。