ネットフリックスの教訓
ネットフリックスで学んだ、今日のビジネスでの成功に関する根本的な教訓は「20世紀に開発された複雑で面倒な人材管理手法では、21世紀の企業が直面する課題に立ち向かえるはずがない」ということだ。
破壊的変化の荒波の中で最も成功できる組織とは、すべてのチームのすべてのメンバーが「この先何が起こるかはわからず、何もかもが変化している」と考え、それに心を躍らせるような組織だ。
そんな会社をつくるために、チームワークと斬新な問題解決を促す文化にこだわった。ネットフリックスの文化は、複雑な人材管理方式を通して形成されたものではない。人材管理の手法や方針を次々と廃止していった。
文化を抜本的に変えようとする時、大切なことは、単に理念や業務方針を示すだけでは不十分だということだ。まず従業員に一貫してとって欲しい行動をはっきりと打ち出し、続いてそれを実行するための規律を定着させる必要がある。
成功に貢献することが最大のモチベーション
優れたチームとは、これからどこに向かおうとしているかをメンバー全員が知っていて、どんなことをしてでもそこに到達しようとするチームのことだ。優れたチームをつくるのは、インセンティブや管理手法や従業員特典などではない。必要なのは、一人前の大人として挑戦に立ち向かうことを切望する有能な人材を採用し、その挑戦が何なのかを、彼らにはっきりと継続的に伝えることだ。
経営陣が従業員のためにできる最善のことは、一緒に働く同僚にハイパフォーマーだけを採用することだ。これは莫大な契約ボーナスやストックオプションを与えたりするよりずっと優れた従業員特典だ。優秀な同僚と、明確な目的意識、達成すべき成果の周知徹底、この組み合わせがパワフルな組織の秘訣である。人員を素早く採用し、なおかつ並外れて高い人材濃度を維持する必要がある。
従業員一人ひとりが事業を理解する
手順や承認プロセスをできる限り廃止すること。そして、やるべき仕事の内容や背景情報を従業員に明瞭かつ継続的に伝えることだ。マネジャーが、やるべき仕事と事業上の課題、幅広い競争環境について伝え、説明し、隠し立てのない姿勢でいることに時間をかければかけるほど、方針や承認、インセンティブの必要性は薄れる。そうすれば、業績のタイムリーな改善を促し、状況に合わせて目標を柔軟に調整することができる。
また質問やアイデアを共有しやすい雰囲気ができ、そこから製品や顧客サービス、事業そのものを改善する方法につながる貴重な発見が生まれることもある。
社内のどの部署、どのチームの問題であっても、従業員がそれを自分のものとして解決するには、経営幹部と同じ視点が欠かせない。この視点があれば、事業のあちこちに潜む問題や機会を発見し、うまく対処することができる。
徹底的に正直になる
相手が知るべきことを正直に伝えなければ、信頼と理解を得ることなどできない。ネットフリックスでの最も重要な約束事の1つは、「問題が起こったら当事者同士でオープンに話し合うこと」だ。これは部下、同僚、上司のすべてに当てはまる。ネットフリックス文化の柱の1つに「同僚や同僚の仕事のやり方に不満がある場合、当人同士で、できれば直接顔を合わせて話をする」というルールがある。
ネットフリックスでは、変化に対応できる体制を整えるうちに、会社全体に信頼感が生まれた。力を合わせれば会社を進むべき方向に進められるという信頼感、必要な変化について誤った情報を与えられないという信頼感だ。
事業に関する問題を率直に話し合う時、大事な点は、率直さは双方向でなくてはならないということだ。経営陣や直属の上司にも遠慮せず質問や意見をぶつけるよう、従業員に徹底すること。