組織開発とは
組織開発とは、組織としての健全な成長と発展を目指す戦略的なアプローチを言う。人財開発が「中長期的な視点に立って、組織で働く個人の能力を高めていくための取り組み」を指すとするならば、組織開発とは、短期的な成果に囚われることなく「個の集合体としての組織の力を高めていくための取り組み」と定義することができる。
組織の活性化は、組織の成長や発展にとって欠かせない要素である。組織の隅々にまで「チーム」という意識が浸透し切らなければ、組織としてのアウトプットの質は向上しない。だからこそ、すべてのメンバーがチームの一員としての自覚を十分に持つことが、何よりも重要になる。
そして、組織の風通しのよさは、コミュニケーションの質と量とに比例している。コミュニケーションこそが、組織を改善し、前進させる熱量の源であり、組織開発はコミュニケーションを何よりも重視する。すべてのメンバーが、上司部下などの日々の関係性を一旦リセットし、フラットに想いをぶつけあう機会を大切にする。その際には、組織の問題点など、ネガティブな部分は共有するに留めておき、自分たちの強みや目指すべき未来、あるべき職場の形などといった、ポジティブなテーマについて話し合うことを基本とする。組織に所属する全員がポジティブに問題解決に取り組むことで、組織としてのアウトプットの質は確実に向上する。
組織開発に必要な5つの要素
組織開発の目的である組織の持続的な成長を実現するには、以下の5つの要素が必要不可欠である。
①組織長(オーナー):推進力の源泉
組織開発にはトップのポジティブな関与が欠かせない。組織長自らが積極的に取り組めば、メンバーの中にも追随する気持ちが芽生える。トップの熱量に比例する形で組織改革への機運や期待感が高まる。
②支援者:内省への働きかけ
支援者とは、対象組織のライン外部から参画する利害関係のない第三者である。ファシリテーターやコーチ、アドバイザーとして、組織長に対して建設的なフィードバックを提供する。利害関係がないからこそ、支援者は組織長やメンバーに対しても率直に意見を述べることができる。
③プログラム:心理的安全性と参加主体
組織開発のベースにあるのはポジティブアプローチで、この手法を適用しプログラム化したものが基本の型「推奨プログラム」である。推奨プログラムは心理的安全性を確保し、参加者全員が主体的に関与することを目的とする。
④環境・道具:開放と効果
組織開発には環境づくりや仕掛け=道具が重要である。参加者全員が気兼ねなく発言できるよう、リラックスできる環境を用意したり、ネガティブな気持ちをポジティブな方向へ傾けていくための道具を用意する。具体的には、カフェのような業務環境から離れた非日常的な空間、場の空気に合った音楽や映像などである。
⑤対話の場:共有の思いから内省の習慣づけへ
対話の場は、組織メンバーが組織課題や理想像等を共有し、内省を習慣づけるための重要な機会である。対話を繰り返すことで内省が促進される。
推奨プログラムの原理
職場で実践すべき推奨プログラムには原理があり、以下の3つのSTEPで進む。
STEP1 見える化:「氷山の下」の確認
組織開発の取り組みにおいて最初に行うのは「見える化」である。仕事の側面ではない水面下の世界には「人間同士の側面」が沈み込んでいる。組織に所属するメンバーの想いやコミュニケーションの在り方など、簡単には把握できない=見えにくい話題が存在する。
見える化するためには、心理的安全性の確保が必要になる。心理的安全性を高める方法は大きく2つある。
- トップのメッセージ
- 日頃の取り組みに対する心からの感謝
心理的安全性を確保した後で行うのが「職場力調査」である。これは全社に対して実施する調査で、結果を全員で共有する。その際には、以下の3つを徹底する。
- 犯人探しをしない
- 結果で上司や職場を評価しない
- 目標値の達成を強要するような運用をしない
STEP2 ガチ対話:本音で向き合う「対話の場」づくり
見える化によりメンバー間の本音を共有できたことを確認して、「ガチ対話」に移行する。組織の課題解決に向けて、全員で真摯にポジティブに議論していく場を整える。
組織開発の成功の起点となるのが「人間関係の質」である。関係の質が変われば思考の質が変化し、思考の変化は行動を変え、最終的には結果の質が変化する。この好循環を構築する。
ガチ対話を実践する地ならしとして大切な要素は2つある。
- オーナー自身の言葉でガチ対話の目的を語る
- ルールをつくる(批判禁止/積極的に傾聴する/徹底してポジティブになる/楽しむ)
STEP3 未来づくり:新たなアクションの選択
組織をよくするためにどんな行動を選択するのかを、メンバー全員での対話によって決めていく。できる限り具体的に目標設定するといい。