OKRとは
OKRとは目標(Objectives)と主要な結果(Key Results)の頭文字を取ったものだ。企業やチーム、個人が協力して目標を設定するための手順である。
目標(O)とは「何を」達成すべきかである。目標をきちんと立てて展開すれば、曖昧な思考や業務執行を防ぐワクチンとなる。主要な結果(KR)とは、目標を「どのように」達成しつつあるかをモニタリングする基準だ。有効なKRは具体的で時間軸がはっきりしており、意欲的であると同時に現実的だ。何より重要なこととして、測定可能でなければならない。
指定された期間(通用は四半期)が来たら、KRが達成されたか否かを判断する。目標が1年以上にわたって延長されるような長期的なものであれば、その進捗に合わせてKRも見直していく。
OKRの特徴
①優先事項にフォーカスし、コミットするOKRがうまく機能している組織は重要な事柄に集中する。また重要ではないことも同じように明確にする。OKRはリーダーに厳しい選択をさせる。OKRは、組織に所属する部門、チーム、個人に対して正確なコミュニケーションを行う手段となる。混乱を排し、組織が勝つために必要な優先事項への集中をもたらす。
②アラインメントと連携がチームワークを生む
OKRと言う透明性の高いシステムによって、CEO以下全員の目標がオープンに共有される。個人は自らの目標を会社の戦略と結びつけ、他部門との補完関係を理解し、連携する。トップから現場までのアラインメントによって、すべての組織に貢献する従業員が組織の成功と結びつき、仕事にやりがいが生まれる。ボトムアップのOKRは、従業員の責任感を高め、仕事へのエンゲージメントとイノベーションを促す。
③進捗をトラッキングし、責任を明確にする
OKRはデータに基づくシステムだ。それに生命を吹き込むのが、定期的な確認、客観的評価、そして継続的再評価である。いずれも主観を排し、責任を明確にすることが目的だ。主要な目標の到達が危ぶまれる事態になれば、立て直すためのアクションの作成、あるいは必要に応じて目標を修正・変更する。
④驚異的成果に向けてストレッチする
OKRは不可能に挑戦し、傑出した成果を出すことを促すシステムだ。限界に挑戦させ、失敗を許容することで、誰もが持つ創造力と野心を最大限に解き放つ。
OKRの要諦
アンディ・グローブの時代のインテルにおいて、OKRはその活力源だった。OKRは毎週の個人面談、隔週のスタッフ会議、月次と四半期ごとの部門会議の中心にあった。具体的に何を達成できているのか、何を達成できていないのかをはっきりと示していた。アンディ・グローブから学んだOKRの要諦は以下の通りである。
①絞り込む
一握りの目標を厳選することで、何に「イエス」と言うべきか、何に「ノー」と言うべきかが明確に伝わる。1サイクルあたりの目標を3〜5個に限定すると、企業や組織や個人は重要なものを選ぶようになる。通常、個々の目標に連動する「主要な結果」は5個以下にする。
②目標はボトムアップで
組織や個人の意欲を引き出すには、上司と相談しながらOKRのほぼ半分を自分で決めさせるとよい。すべての目標をトップダウンで設定すると、意欲は削がれてしまう。
③押しつけない
OKRは優先事項を決定し、その進捗をどのように測るかを決めるための協力的な社会契約と言える。会社全体の目標についての議論がまとまっても、それに付随する「主要な結果」についてはまだ議論する必要がある。目標達成を最大限促すには、協力的な合意形成が不可欠だ。
④常に柔軟な姿勢で
事業環境が変化し、現在の目標が現実的ではない、あるいは妥当性を失ったと思われる時には、サイクルの途中でも「主要な結果」を修正したり、場合によっては捨ててもよい。
⑤失敗を恐れない
全員がすぐには手の届かないような目標に向かって努力する時、アウトプットは伸びる傾向がある。自分自身と部下に最大限のパフォーマンスを求めるのであれば、そのような目標設定は極めて重要である。事業目標の中には絶対に達成しなければならないものもあるが、野心的OKRは、困難で達成できない可能性もあるものにすべきだ。「ストレッチ目標」には、組織を新たな高みへと引き上げる力がある。
⑥手段であって、武器ではない
OKRという仕組みは、個人の仕事のペースを管理するためのものだ。自分自身のパフォーマンスを測るために、社員にストップウォッチを握らせるようなものである。勤務評定の根拠になるような正式文書ではない。リスクテイクを促し、力の出し惜しみを防ぐには、OKRとボーナスは切り離す方がいい。
⑦辛抱づよく、決然と
どんなプロセスにも試行錯誤はつきものだ。システムが軌道に乗るまでには、4〜5四半期のサイクルを繰り返す必要があるかもしれない。目標設定のための筋肉を十分身につけるには、さらに多くの時間がかかる。