「なぜ薬が効くのか?」を超わかりやすく説明してみた

発刊
2024年9月18日
ページ数
256ページ
読了目安
378分
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推薦者

薬が効く仕組みの解説書
普段、服用している医薬品がどのように効果を発揮するのか、そのメカニズムをわかりやすく解説している一冊。

「薬理学」として、薬剤師が学ぶ基本的な内容を化学の知識がなくても、理解できるように書かれています。
なぜ頭痛薬が効くのか、なぜ胃腸薬が効くのか、花粉症を抑えるアレルギー薬の仕組みや、抗うつ剤、抗がん剤まで、様々な医薬品の仕組みがわかります。
知っておくと、薬を服用する際に気を付けることなどの理解が深まり、日常においても役に立ちます。

薬は全身の細胞に行き渡る

私たちは薬を飲んだり、注射をされたりすることで、その成分を体内に取り入れている。その後、薬は血流に乗って全身にまわり、患部に届くことで効果を発揮する。薬は、病気に応じて体内の特定のタンパク質に結合する。そして、そのタンパク質のはたらきを強めたり弱めたり、完全に停止させたりして、体に影響を与える。

 

普段、服用している粉末や錠剤、カプセルなどの医薬品で、効き目を持っているのは、その中の「有効成分」である。有効成分の多くは、数種類の原子が数十個くらい結合したものであり、基本的には水などのシンプルな分子よりは大きく、タンパク質よりは小さい。

医薬品には、有効成分以外に、例えば、乳糖やデンプンなどが成分の「賦形剤」が含まれている。これは薬全体の容量を増やすために含まれる。有効成分は微量すぎると、錠剤や粉末などの形を整えにくく、服用もしにくいから、体への影響が少ない成分が加えられている。

 

錠剤を飲むと、まずは食道と胃を通り、小腸に到達する。その頃には錠剤は溶けており、有効成分が放出されている。それらは主に小腸から吸収され血管を通り、肝臓に届けられる。肝臓は体外から入ってきた異物を酵素によって無害なものに変換する「解毒作用」を持つ。有効成分の一部はその過程で構造が変換され、効果が失われ排泄される。一方、酵素による変換を免れて肝臓を通過した有効成分は、血管を通って心臓に入った後、さらに全身に送られる。そして、血管の壁を通り抜け、全身の細胞へと到達する。

作用して欲しい箇所が体のある部分だとしても、薬の有効成分は全身の細胞に行き渡っている。そして、患部に届いた有効成分は標的のタンパク質に作用し、私たちの症状を改善する。薬の有効成分は、どの場にとどまるわけではなく、再び血管に入り、肝臓や腎臓を経て最終的には排泄されていく。

 

薬が効く仕組み

タンパク質はアミノ酸で構成されるが、多くの種類がある。人のタンパク質を構成するアミノ酸は基本的に20種類しかなく、これらが数十〜数百個程度つながって構成される。その組み合わせによって、私たちの体内には、様々な機能を持つタンパク質が10万種類もあると言われている。

 

数あるタンパク質の中でも、薬が効く過程に深く関係しているタンパク質は、主に「酵素」と「受容体」である。

 

・酵素
体内で起こる化学反応を促進する働きを持つタンパク質。酵素は、構造の中に「くぼみ」がある。このくぼみに分子が結合すると、化学反応が引き起こされ、「大きな分子が小さな分子に分解される」「新たな分子に変換される」ということが起こる。

酵素の種類によって、くぼみの形や大きさは違い、それによって化学反応を促進する分子が決まっている。薬の有効成分は、酵素のくぼみに結合する本来の分子に代わって結合することにより、酵素の働きを弱めたり、停止させたりして、症状を抑える。

 

・受容体

受容体は細胞の膜の部分に存在する。酵素の構造内には、くぼみのように分子が結合する場所がある。この場所の形や大きさは受容体の種類によって決まっており、それぞれ特有の分子が結合する。この関係は鍵と鍵穴のような関係に例えられる。

受容体の鍵穴に刺さる分子は、刺激を与えて細胞に情報を伝えたり、遮ったりする役割を担っている。分子を通じて、情報が細胞に伝わったり、制御したりして薬の効果が発揮される。

薬に関係するものには、血管や心臓、気管支に影響を与える「アドレナリン受容体」、アレルギーが起こる仕組みや胃酸の分泌に関わっている「ヒスタミン受容体」、脳のはたらきや血液の凝固、嘔吐に関係する「セロトニン受容体」など、色々な種類がある。

 

なお、薬の有効成分が結合するタンパク質は、酵素と受容体だけではない。タンパク質には特定の物質を細胞外から内へ通すトンネルのようなものもあり、これらも結合する相手になる。